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2011年12月18日 (日)

似せてだます擬態の不思議な世界

■ 書籍情報

似せてだます擬態の不思議な世界   【似せてだます擬態の不思議な世界】(#2081)

  藤原 晴彦
  価格: ¥1,575 (税込)
  化学同人(2007/1/20)

 本書は、「その不思議な世界を分子生物学的な手法により解き明かしてみたい」という思いから擬態の研究を始めた著者が、「擬態をつくりだすしくみ」を解説したものです。
 第1章「だまし・だまされる生きものたち」では、「虎の威を借るように、『毒チョウのように自分も毒をもっていますよ』という偽の信号を発信して、まんまと鳥から逃れる作戦」のタイプの擬態である「ベイツ型擬態」について、
(1)モデルが強いキャラクターを持っている
(2)そのモデルが外から見て一目でわかるような、何らかの特徴を持っている
(3)そのモデルに似せてあやかろうとするものがいる
の3点を成立条件として挙げています。
 次に、「同じ毒チョウの仲間なのに、似たような文様をしている別種が複数いる」というように、「お互いに似ることによって、食べられるリスクを減らしている」という「ミューラー型擬態」を取り上げています。
 著者は、擬態の種類を、
(1)標識型擬態
(2)隠蔽型擬態
の2つに大別した上で、「標識型擬態には、赤や黄色の警戒色が含まれる。いろいろな動物の体表にある目玉模様は、相手を威嚇するためなどにも使われる。また、擬頭の擬態、鳥の糞の擬態なども捕食者に錯覚を起こさせるものであるから、偽情報をはっきりと受信者に伝えなくてはならない」と述べています。
 さらに、隠蔽型擬態と標識型擬態が、いずれも「捕食者から逃れるテクニック」であるのに対し、「捕食するための手口としても、この2つの擬態は使われる」として、「何かに似せて相手をおびき寄せて食べてしまおう」という擬態である「ペッカム型擬態」もしくは「攻撃型擬態」を取り上げています。
 第3章「紋様をつくりだすしくみ」では、「紋様がどのようにできるのかというメカニズム」として、
(1)豹柄の模様をつくるしくみ――数理生物学的アプローチ
(2)チョウの翅に紋様をつくるしくみ――分子生物学からのアプローチ
の2つのアプローチを取り上げています。
 第5章「アゲハに見る擬態の不思議」では、「アゲハチョウ科の成虫の特徴は、大型の翅に尾状突起という尾がついていることである」とした上で、「可能性の一つは突起を触覚に見せかけ、あたかも後方に頭部があるようなカムフラージュかもしれない」と述べ、「このような『尻を頭にする戦略』は多くの昆虫に見られる」と述べています。
 また、アゲハの幼虫が、「四齢(3回脱皮した)幼虫までは鳥の糞の姿をしているが、4回目の脱皮をする際に、まわりの柑橘類の葉の色に似た全身緑色の幼虫に変身する」ことについて、「脱皮のプロセスで全身の紋様をこれほど大胆に切り替える幼虫は珍しい」と述べたうえで、「幼虫紋様は、体表になる一層の表皮細胞の外側の皮(クチクラ)に描かれて」おり、「紋様を描くのは新しいクチクラをつくる脱皮の時期と考えられる」ため、「紋様の描き方を知るためには、皮の作られ方を知らねばならない」と述べています。
 第7章「視覚以外の五感でだます」では、「人間界での擬態戦略は、何を目的として、どのような情報操作によって、誰を騙すかは、きわめて多様であり、『五感』のすべてを駆使しうる点で、自然界での論理を超越している部分がある」と述べています。
 第8章「分子も擬態する」では、「免疫システムの根幹となっているのは、『自己と非自己』の識別」であり、「微生物やウイルスが侵入した宿主の中で増えるためには、この識別システムをできる限り、くぐり抜ける必要がある」として、「人間にとって最も厄介なのはこのような輩であり、おそらく現在難病と思われる感染症の大半は、巧妙な『だまし』のテクニックを使っているに違いない」と述べています。
 本書は、動物に限らず、人間にとっても重要なテクニックである「擬態」の仕組みを解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 昆虫の擬態から人間の詐欺まで一冊でつなげてしまう展開はやや強引ではあるのですが、そうすることで、昆虫の世界の「戦略」を身近に感じて欲しいのだと思います。


■ どんな人にオススメ?

・虫の世界も大変だと思う人。


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コメント

内閣府の勉強会でお会いした峰岸です。
 ご無沙汰しております。
 戸崎さんの行政経営百夜百冊楽しく拝読させていただいておりました。
 当方、みどりとくらさい研究所の閉鎖等で、住所やTEL、メールアドレス等が変更しました。
 パソコンのトラブルもあり、戸崎さんへお知らせができませんでした。
 お手数ですが、従来どおり「行政経営百夜百冊」メールにて配信ただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 携帯電話は080-6783-7072です。

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