« 図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで | トップページ | 世界は分けてもわからない »

2012年4月12日 (木)

図書館は本をどう選ぶか

■ 書籍情報

図書館は本をどう選ぶか   【図書館は本をどう選ぶか】(#2103)

  安井 一徳
  価格: ¥2205 (税込)
  勁草書房(2006/9/8)

 本書は、公共図書館の図書選択について論じられる際の基本的な前提となっている、
(1)価値論:本の価値に基準を置く
(2)要求論:利用者の要求に基準を置く
について、「価値論/要求論」図式にとどまらない図書選択の議論はどのようにして可能なのか、という問題意識から書かれたものです。
 第1章「図書選択の正当性とは」では、「ある図書を蔵書に含め、別の図書を含めないという点で、収集も廃棄も究極的には同じ行為であり、両者は『図書選択』として一元的に把握することが可能である」と述べています。
 第2章「アメリカの図書選択論」では、世界の「公共」図書館の期限を、1854年のボストン公共図書館設立に求め、「図書選択論の源流も、ボストン公共図書館に求めることができる」としています。
 第3章「日本の図書選択論」では、「現場」の理論の代表者として、伊藤昭治と山本昭和の2名を挙げ、「彼らの理論に見られる最大の特徴は、要求の全面的肯定である」と述べ、その主張として、「『価値論』的姿勢の徹底的排除」を挙げ、そのかわりの優先順位として、彼らが「貸出冊数」を重視したことを指摘し、その立場上、「複本はリクエストと並んで貸出冊数を増加させるための不可欠の手段である」と述べています。
 そして、「現代日本における図書選択論の出発点の一つは『価値論/要求論』という図式をどう扱うかということであった」と述べています。
 第4章「選書ツアー論争」では、選書ツアーが「要求論的、価値捨象的図書選択論における図書館員の存在の自明性に疑問を発したと言える。そしてそれに(少なくとも無意識的に)気づいたからこそ、多くの図書館員は、一見自らの信奉する理想と融和的なこの試みに対して容赦ない批判を浴びせたのではないか」と述べています。
 本書は、普段何気なく利用している図書館の蔵書をめぐる熱い議論を教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 戦後日本で独自に発展したっぽい「ヒューマニズム」あふれる図書館理論に、「それってやっぱりおかしいでしょ」ってツッコミを入れている本書は、独自の奇天烈な理論が展開される労働組合のアジビラを読んでいてツッコミを入れたくなる気持ちに似ているような気がしました。Amazonのレビュー欄をみると先輩の「ライブラリアン」が顔を赤くして書いているようなコメントも見られたりして面白いです。


■ どんな人にオススメ?

・図書館の本がどのように選ばれているかを知りたい人。


« 図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで | トップページ | 世界は分けてもわからない »

読書」カテゴリの記事

コメント

インターネット上で読める次の卒論とほぼ同じ内容の本でしょうか。

公共図書館における図書選択の理論的検討
http://plng.p.u-tokyo.ac.jp/text/yasui/yasui-yoshi.html

著者は国立国会図書館職員の方なのかな。
http://www.ndl.go.jp/jp/employ/message/01/1192107_846.html

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/44806489

この記事へのトラックバック一覧です: 図書館は本をどう選ぶか:

« 図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで | トップページ | 世界は分けてもわからない »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ