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2013年8月

2013年8月 9日 (金)

それでも、読書をやめない理由

■ 書籍情報

それでも、読書をやめない理由   【それでも、読書をやめない理由】(#2197)

  デヴィッド・L. ユーリン (著), 井上 里 (翻訳)
  価格: ¥1680 (税込)
  柏書房(2012/02)

 本書は、「携帯電話、Eメール、ブログ、ツイッターなどの絶え間ないざわめき。現代的んで何重にもつながった過剰ネットワーク生活にひしめく、あらゆる注意散漫の元」という「テクノロジーがもたらすノイズ」によって、「本の虫以外の何物でもなかった」著者が、「突然本に集中することが難しくなった」として、「この問題を特定し、言葉にすることによって、注意散漫の悪循環から何とか抜け出すこと」を目的に書かれたものです。
 第1章「物語の中の真実」では、数年前から「腰を落ち着けて本を読むのが難しくなってきたことに気づいた」と述べ、それまでは、「別の土地、別の人生へ私たちを運んでくれる、魔法の力」によって、本に引きつけられてきたとして、「重要なのは、読書を発見への旅ととらえ、自分の内面世界の発掘ととらえることだ」と述べています。
 そして、本離れの原因として、「私の集中力はこま切れになり、カルチャーに関する世間の騒ぎや、だれかれのブログの更新や、新しいニュースや、とにかく、ネット上のあらゆる叫び声がつい気になってしまうようになった」と述べています。
 第2章「この騒々しい世界で」では、「本の再読とは微妙な作業だ。良かれ悪しかれ、現在と過去に向かい合うことになる。初めて読む場合と違って、より複雑で、より陰影に富み、自分がどれくらい変わったのかをそれとなく教えられるのだ」と述べています。
 第3章「もうひとつの時間、そして記憶」では、「今までとの重要な相違」として、「絶え間なく情報が流れる世界(ハイパーコネクティヴィティでも、24時間体制のニュース・ストリームでも、呼び方はなんでもいい)において、わたしたちは絶え間ない強迫観念にとりつかれている」と述べています。
 そして、「忘れることができない、したがって、覚えておくこともできない」というここにこそ、「記憶とテクノロジーと事故が交わる地点がある」としています。
 さらに、「たいていの人々は、黙読を、ありふれた行為として当たり前のものだと思っている」が、「黙読は学習によって身につく行為であり、習得するには意志力や持続的な集中が必要とされる。それは実のところ、本能の誘いかけに抗うものだ」と述べています。
 また、「読書は最も本質的な意味で自己主張が強く、読み手と強く結びついている」として、フィクションを読む人々が、「物語のなかで新たな状況に出くわすたびに、それらを脳内で擬似的に体験する。登場人物たちの行動や感情を細かな点まで行間からすくい上げ、自分が過去の体験から得た個人的な知識と融合させる」として、「そのとき活性化する脳領域は、『現実世界で似たようなことをしたり、想像したり、見たりするときに活性化する脳領域と同じである』」と述べ、「読者は本と一体化する」と指摘しています。
 第4章「文学という鏡」では、「文学の授業における誤った考え方」として、「そこでは、小説の読み方には正しい方法と間違った方法があるとか、本というものは長い暗号のようなもので、だから解読可能だとかいう考え方が浸透している」と指摘しています。
 本書は、本と向きあうとはどういうことかを考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 歳を取ると、だんだん自分の「残り時間」がもったいなくなってくるもので、テレビやネットなどの「ノイズ」から離れて本に没入する時間を持てるかどうかというのは人生の豊かさに大きく影響してくるものではないかと思います。「本を読む時間がない」「本なんか暇人しか読めない」と思っている人は、まずはその両手に持っているテレビのリモコンとスマホの電源を切ってみてはいかがでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・本なんて読んでる時間がないと思っている人。


2013年8月 8日 (木)

映像の著作権

■ 書籍情報

映像の著作権   【映像の著作権】(#2196)

  二瓶和紀, 宮田ただし
  価格: ¥2940 (税込)
  太田出版(2012/6/30)

 本書は、「現在の映像をめぐる諸問題」への関心をもってもらうとともに、「現在の法制の基礎となった事情」を解説したものです。
 第3章「映画の著作権の基本のQ&A」では、「過去においては多くの脚本家が映画製作者との関係で、専属契約者として映画会社に従属して仕事をしていたために、脚本家はその地位を高め、権利の確立といった観点から、著作権法改正時には、映画とは独立した著作者として扱われることを強く望んで」いたが、我が国においては、「小説の著作者のように映画の原著作物の著作者として取り扱われること」となったと述べています。
 また、「映画の原著作物である脚本や原作の著作者、映画に複製されている音楽等の著作者」を「クラシカルオーサー」と呼び、「映画の監督や著作権法でいう映画の著作者と目される著作者」を「モダンオーサー」と呼ぶと述べています。
 さらに、「著作者人格権の不行使特約」について、「著作者人格権は譲渡や放棄することができない個々の人格に属するもので、このような契約は無効であるという説がある一方で、現代の著作物の商品的流通を円滑ならしめる社会的要請から、必ずしもこの契約条項は無効ではないとする説」もあるとした上で、「意に反した改変になるかもしれないが、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」と客観的に判断可能な場合においては「人格権に基づく意義を申し立てないという」限度で、その有効性を認めてはどうかと述べています。
 そして、「ワンチャンス主義」について、「テレビ放送用映画に出演した実演家(俳優等)に対して、当該映画が本来の使用目的である放送終了後、多方面、例えば、DVDに複製され販売されても映画出演を承諾した以上は報酬、あるいは実演に対する対価を支払わなくてよいかという意味」であると述べています。
 本書は、映像の著作権処理において問題となるテーマについて解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 写真以上に権利関係が複雑な映画の世界。著作権関係の法制はあくまでも複数の権利の間の調整をとるものであって、一部の権利を神聖視した結果、誰も幸せにならない、という事態は避けたいものです。


■ どんな人にオススメ?

・映像の世界の権利の仕組みを知りたい人。


2013年8月 7日 (水)

写真著作権

■ 書籍情報

写真著作権   【写真著作権】(#2195)

  公益社団法人 日本写真家協会著作権委員会
  価格: ¥2310 (税込)
  太田出版(2012/4/24)

 本書は、「写真著作権の基本的考え方、クライアントとの契約に際しての注意事項、写真家自身が著作権を守るために気をつけておくことなど、写真を撮る人間が押さえておくべき知識を集約」したものです。
 第1章「写真著作権概論」では、写真の著作権が、19996年の著作権法の改正で、「保護期間が公表後起算から、映画を除く他の著作物と同様、原則として死語起算の取り扱いとなった」ことについて、「これでやっと写真が一人前の著作物となった」と述べています。
 第2章「Q&Aに学ぶ写真著作権」では、「職業写真家に単に日当を支払ったというだけでは、当該著作物は、職務著作とは」言えないとして、「雇い主の当該業務において著作物が発生し雇い主の名で発表されることが想定される場合に、そこに雇用その他の関係でその業務に従事している者の作成した著作物は、職務著作として雇い主が著作者になるという規定」だと述べています。
 そして、広告写真の著作権について、
(1)広告実務上は、「法的に問題ないか」よりも「トラブルにならないか」が優先される。
(2)広告制作への関与者が多く、権利関係が曖昧になりやすい。
(3)広告には著作権以外の様々な権利が複合的に関わっている。
の3点をポイントとして挙げています。
 また、お祭りの写真の肖像権について、「見物人を含めた大勢の人々については、肖像権を放棄している、あるいは肖像を撮影され、公表されても仕方がない、と思っているでしょうし」、「普通のやり方で撮った写真であれば、問題はなく、新聞雑誌等での掲載やネットに掲載してもいいでしょう」とした上で、特にクローズアップされるなど、「社会生活上受忍の限度を超える」と判断されるような場合には「訴えられれば敗訴」すると述べています。
 本書は、撮影した写真を公表したいという人には必読の一冊です。


■ 個人的な視点から

 写真の著作権については、著作権など考えないかのようなずさんな取り扱いがされることもある一方で、羹に懲りて膾を吹くかのように過剰に気を使う人もいて難しいものです。


■ どんな人にオススメ?

・写真の仕事をしたい人。


2013年8月 6日 (火)

昭和後期の家族問題―1945~88年、混乱・新生・動揺のなかで

■ 書籍情報

昭和後期の家族問題―1945~88年、混乱・新生・動揺のなかで   【昭和後期の家族問題―1945~88年、混乱・新生・動揺のなかで】(#2194)

  湯沢 雍彦
  価格: ¥3675 (税込)
  ミネルヴァ書房(2012/09)

 本書は、「戦後の昭和を家族・家庭の面から再検討したもの」です。著者は、戦前の家族問題を暗くする大きな現況であった「家庭生活の貧しさ」と「個人を縛る家制度」がほぼ克服された昭和の後期においては「家族問題は減少するはず」と考えていたが、離婚率の上昇や、家庭裁判所の紛争事件も親の保護に恵まれない子も増加するなど新しい時代の家族問題が始まったと述べています。
 第1章「混乱と窮乏のなかで」では、配線で戦いは終わったが、「庶民の生活の苦しみはそこから始まった」として、「大中の都市に住んでいた市民たちは、衣・食・住のすべてを失って死の危険に瀕するものが続出した」と述べています。
 第2章「夫婦は同権、親子は平等」ではGHQの五大改革指令のトップに指定されたのが、「女性の地位の向上、男性との平等化」であったと述べています。
 そして、「明治民法特有な概念であった『家』『廃嫡』『親族会』『家督相続』『隠居』といった用語のほか、慣習上の言葉にすぎなかった『勘当』『婿養子』といった用語も世間ではかなり使われていた」と述べています。
 第3章「家族関係の現実」では、「都市へ出ていった子どもたちは、何年たっても以前のように生家に戻ることをしなくなった」理由として、農家の生活は、
(1)重くてきつい重労働の連続
(2)時間の切れ目がない
(3)休日が少ない
(4)舅姑の圧迫による家族関係の暗さ
(5)夫婦愛の乏しさ
(6)家計が自由にならない
(7)世間の厳しい目
(8)非合理な古いしきたり
(9)娯楽が乏しい
などが重なって、「若い者から都会生活に比べると苦しい一方だとする不満が吐き出されるようになってきた」からだと述べています。
 また、農業家族の安定を、「あとつぎが結婚できなくて、将来の見通しが見えなくなってしまった」ことが揺るがしたとして、農家では「嫁をとることは、労働を買うこと」だと考えられ、「嫁はツノのない牛」と見られていたと述べています。
 そして、「昭和20年代・30年代は、少年非行のなかで『凶悪犯罪』が戦前・戦後を通して最も多く起こっていた」と述べてます。
 さらに、「日本は15年にわたる日支・太平洋戦争で300万人以上の同胞を失ったが、数の上からだけ言えば、数年で取り返して人口増加の体制となった」と述べています。
 第5章「昭和30年代の明るさとうしろ側」では、「台所とつながった『お茶の間』が家の中心となり、そこにラジオ・扇風機・ストーブなどが置かれ、ちゃぶ台を中心に団らんが持たれた」と述べています。
 そして、一部の面を見れば、「昭和30年代は戦後の中では最もよくバランスがとれた良い時代であったと言えそう」だが、「国の生産量は非常に発展したが、家庭の生活水準は全体としてみればとても貧しいものだった」と述べています。
 第6章「近代家族は生まれたか」では、「民法改正から8年経った昭和31(1956)年という時点においても、昔の家族制度を支持する人々はかなりいて、新民法の家族のあり方を支持する人は未だ少ない」と述べています。
 第7章「揺らぐ伝統的な結婚観」では、「全体として見た場合、少なくとも昭和30年代まで日本社会においては、『配偶者難』いわゆる『結婚難』の問題は、ほとんど存在しなかった」が、「昭和50年代に入ると、結婚しない女性、結婚したくともできない男性が急に増えてきた」と述べ、「ベビーブームが大人になった団塊の世代の男性は、団塊の世代の男性は、数が少ない年下の女性から厳しい目で選択されることになり、少しでも好ましくない条件があると、結婚戦線に残れない状況となった」と述べています。
 第9章「国際婦人の11年と家族」では、「男性側が伝統的な『男が偉い』という男本位の考え、いわばひとりよがりのぬるま湯に浸っているうちに、女性側は、女性だけが知る楽しい境地を発見して、男の世界を笑い飛ばすような時代になってきたようである」と述べています。
 第11章「戦後昭和で家族はどう変わったか」では、「昭和後期の家庭生活での最大の特色は、なんといっても長い期間にわたって戦争の災害がなく、しかも高度の経済成長に恵まれたことにある」と述べています。そして、ごく大雑把に見て、「貧しい家族が4分の3いた国」が「暮らしに困らない家族が4分の3いる国」にかわったということが「家計基盤の最大の転換であった」と述べています。
 本書は、まだそれほど遠くない過去である「昭和」が家庭生活に与えたインパクトを考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 多くの人が「昔の日本の家庭は~」という話をする場合、自分の親かその一つ上の世代くらいしかリアルには想像できないもので、「昔から日本の女性は結婚したら専業主婦になっていた」とか「最近になって子供の凶悪犯罪が増えた」とかの思い出補正の入った根拠のない妄言を吐いてしまったりしてしまいがちです。
 自分が生きている時代のことさえ客観的には見ることが難しいのだから、まして自分が幼かったり生まれていなかった時代を語るには、客観的な資料に当たるのが一番ではないかと思うのです。


■ どんな人にオススメ?

・昭和のことはよくわかっているつもりの人。


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