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2013年12月17日 (火)

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

■ 書籍情報

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか   【動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか】(#2227)

  福岡 伸一
  価格: ¥1600 (税込)
  木楽舎(2009/2/17)

 本書は、「生命、自然、環境――そこで生起する、すべての現象の核心を解くキーワード」である「動的平衡」(dynamic equilibtium)をキーワードに生命に関する諸問題を解説したものです。
 「プロローグ――生命現象とは何か」では、「なぜ、バイオテクノロジーはうまくいかないのか」という問題について、「端的に言えば、バイオつまり生命現象が、本来的にテクノロジーの対象となりがたいものだからである。工学的な操作、産業上の企画、効率よい再現性。そのようなものになじまないものとして、生命があるからだ」と述べています。
 第1章「脳にかけられた『バイアス』」では、「生命現象が絶え間ない分子の交換の上に成り立っていること、つまり動的な分子の平衡状態の上に生物が存在しうること」を20年ほど前にシェーンハイマーという科学者が明らかにしたとして、「シェーンハイマーは食べ物に含まれる分子が瞬く間に身体の構成成分となり、また次の瞬間にはそれは身体の外へ抜け出していくことを見出し、そのような分子の流れこそが生きていることだと明らかにした」と述べています。
 また、「タンパク質の代謝回転が遅くなり、その結果、一年の感じ方は徐々に長くなっていく。にもかかわらず、実際の物理的な時間はいつでも同じスピードで過ぎていく」ため、「実際の時間の経過に、自分の姓名の回転速度がついていけていない」ことが、「年をとると一年が早く過ぎる」原因だと述べています。
 第2章「汝とは『汝の食べた物』である」では、「私たちの身体は、たとえどんな細部であっても、それを構成するものは元をたどると食べ物に由来する元素なのだ」として、「合成と分解との平衡状態を保つことによってのみ、生命は環境に適応するよう自分自身の状態を調節することができる」と述べ、「食べ物とはエネルギー源と言うよりはむしろ情報源なのである」としています。
 第5章「生命は時計仕掛けか?」では、「すべての細胞は同じ設計図をもつことになり、この時点で、それぞれの細胞はどんな細胞にもなりうる万能性(多機能性)を持って」おり、「それぞれの細胞は将来、何になるかを知っているわけではなく、また知らないままにあらかじめ運命づけられているわけでもない」と述べた上で、「各細胞は周囲の『空気を読んで』、そのうえで何になるべきか分化の道を選んでいる」と述べています。
 第6章「ヒトと病原体の戦い」では、「カニバリズム(人肉食)がほとんどの民族でタブーとされてきたのは、私たちを病原体から守る働きのある『種の壁』を無視する行為だからであるという視点から見ることができる」と述べています。
 第8章「生命は分子の『淀み』」では、「生命とは何か?」という問に対して、「生命は動的な平衡状態にあるシステムである」とした上で、「可変的でサスティナブルを特徴とする生命というシステムは、その物質的構造基盤、つまり構成分子そのものに依存しているのではなく、その流れがもたらす『効果』である」と指摘しています。
 そして、「『生きている』とは『動的な平衡』によって『エントロピー増大の法則』と折り合いをつけているということである。換言すれば、時間の流れにいたずらに抗するのではなく、それを受け入れながら、共存する方法を採用している」と述べています。
 本書は、生命があくまでも流れの中にのみ存在する「淀み」であることをわかり易く解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 藤子・F・不二雄の短編で「宇宙からのおとし玉」というのがあるのですが、その中で、幼なじみの女の子が変わってしまったことを嘆く主人公に、人間の細胞なんて数ヶ月で入れ替わってしまうんだってツッコミを入れる宇宙人のことを思い出しました。
 そう言えば同じ短編シリーズの「光陰」では、歳を取ると月日の流れが速く感じられるっていう話もありましたが、これもタンパク質の代謝速度で説明できるのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・最近、月日が経つのが速く感じられる人。


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