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2013年12月19日 (木)

大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか

■ 書籍情報

大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか   【大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか】(#2229)

  ガブリエル ウォーカー (著), 渡会 圭子 (翻訳)
  価格: ¥2100 (税込)
  早川書房(2008/01)

 本書は、「大気にまつわる偉大な発見についての解説と、それを成し遂げた偉人たちの人間ドラマが組み合わされた」ものです。
 プロローグでは、「私たちは大気を当たり前のものと考えがちだ」が、「私達の周りの空気は、宇宙でも稀有な、驚くべき物質なのである。その青く薄い層一つのおかげで、私達の地球は不毛な岩の塊から、生命に満ちた世界へと変貌した。それは死をもたらす宇宙の環境から、地球のか弱い人間を守ってくれる唯一の層なのだ」と述べています。
 第1章「頭上に広がる海」では、ガリレオが空気の重さを量っていたことについて、「ガリレオは大気に押す力がないと信じていた。これは偉大なる人間が間違えた、数少ない例の一つである」と述べた上で、ガリレオの説が間違っていると考えたトリチェリが大気の重さを実証したが、「ガリレオの率直さが招いた結果を見ていたトリチェリは慎重な姿勢を貫き、実験結果を発表することはなかった」と述べ、親しい友人に当てた手紙の中で、「私たちは大気の海の底に沈んでいるのだ」という「壮麗なイメージ」で表しているとしています。
 第2章「生命の霊薬」では、ラボアジェが「呼吸とは燃焼のプロセスであり、とても長い時間がかかるとはいえ、炭素の燃焼と類似している」と確信したことについて、「炎は酸素を使ってろうそくや材木からエネルギーを生じさせている。それと同じように、人が呼吸をするときは、食物を燃やしているという彼の考えは正しかった」と述べています。
 第3章「食物とぬくもりと」では、19世紀のロンドン王立研究所教授だったティンダルが、「大気は地球を包む毛布であり、その中の成分の比率の変化により、地球が冷たくなったり暖かくなったりすると推論した」ことについて、そのきっかけは、フランスの科学者のフーリエの数十年前の発見だったと述べています。
 そして、「二酸化炭素はつまり、重要であると同時に危険な空気中の元素なのだ。食物とぬくもりのために、私達はどうしてもそれを必要としている。しかし使うときは危険を覚悟しなければならない。酸素、窒素、そして空気の濃度とともに、二酸化炭素も、私達の地球を単なる岩のかたまりから、生物が棲む息づく世界へと変えることに手を貸した」と述べています。
 第4章「風に吹かれて」では、コロンブスが発見した「常に吹き続けている東風」について、「そのおかげで到達した新大陸に、勝るとも劣らぬ重要な発見である」、「とても安定していて止むことがなく、貿易船が安全に公開できるため、のちに“貿易風”と呼ばれることになる」と述べたうえで、「コロンブスの時代には、彼が遭遇した風がどれほど重要なものかを、誰も理解してはいなかった。それが地球を包むように存在していることに船乗りたちが気づくのも、まだしばらく先の話であり、それが存在する理由について、不確かながらも議論が出てくるのは、さらに先のこととなる」と述べています。
 そして、「海から水を吸収するとき、空気はエネルギーを使って水の分子を壊してバラバラの気体にする。分子が再び結合して、雨粒になる時に放出されたエネルギーが風の源となる。熱と水は密接に結びついていて、地球を回る風が、そのどちらも配分している」ことについて、「地球の巨大な風系では、この離れ業が何十億年も続き、様々に違った気候パターンを生み出している。風は温度や、使える水の量の僅かな変化に合わせて姿を変えながら世界を作ってきた」と述べています。
 第5章「すべて(ホール)の物語」では、19世紀末のダブリンの科学者であるハートリーが、「地表から30キロメートルほど上空から、オゾンが保護層を作っている。それは宇宙の攻撃から地上の生物すべてを守る、3つある救いの層の第一」であることについて、その実験結果の論文の中で、
(1)オゾンは高高度の大気においては通常の成分である。
(2)高いところの大気には、地表近くの大気よりも多くのオゾンが含まれる。
(3)大気中には大量のオゾンが含まれているので、太陽光線スペクトルの紫外線の到達を制限することは可能である。
の3点を説明していると述べています。
 そして、1920年代のアメリカで、ゼネラル・モーターズの研究者だったミジリーが、「とても便利で、大きな力を持つ材料だったが、最終的にはとても危険なものになった」発明をしているとして、冷蔵庫のための、「燃えにくく毒性のない冷却材」として発明したフロンが、「容器で喜びに満ちた彼は、世界を進歩させるためのたゆまぬ努力の中で、これまで地上に存在したどんな生物より、大きな損害を地球の大気に与えることになるものを、たまたま生み出してしまったのだ」と述べています。
 第6章「空の鏡』では、「電離層はオゾン層の兄であり、きわめて危険な光線を吸収する。この層がなければ、地球に生物は存在しないだろう。電離層の存在を最初に指摘した人物は、もともとそんなところに、そんなものがあるとはまったく考えていなかった。ただ心の底から、それが自分を助けてくれることを願っていた」と述べています。
 第7章「最後のフロンティア」では、物理学者として教育を受け、戦時中は海軍士官だったヴァン・アレンが、
「戦争で獲得したドイツのV2ロケットで実験を行う機会を得たことで、空へと目が無くようになった。それ以降、彼の関心はもっぱら地球の大気の一番外側に向けられた。彼はその濃度の薄い層に何があるのを知りたかった」と述べています。
 そして、1917年に亡くなったノルウェーの科学者、ビルケランドの死後、「何十年も、彼の理論は忘れられ」、「電離層が発見され、これこそビルケランドが発見した、上空を疾走する電流の通り道であることが明らかになった時でさえ、彼の主張を受け入れる人はほとんどいなかった。ようやく立証されたのは、1960年代に入ってからである。そのときはすでに宇宙時代に突入し、ビルケランドがモデを作り、観察したが、決して触れることができない世界を、衛星が突き抜けた。衛星によって、宇宙には放射線があることが判明した。そしてやがてビルケけランドが常に正しかったこと判明するのだ」と述べています。
 また、1958年に、ヴァン・アレンが、「自分たちが発見した放射線はドーナツ型の巨大な雲状にまとまっていて、その中心の穴に地球が嵌めこまれたようになっている。それは粒子放射線――つまり帯電した電子――であり、それが地球をぐるりと取り巻いている」ことについて、これを「帯』に例えたことで、“ヴァン・アレン帯”という言葉が生まれたと述べています。
 本書は、大気をめぐる様々な先人の発見を物語にした一冊です。


■ 個人的な視点から

 ガリレオの弟子であるトリチェリの言葉「私たちは大気の海の底に沈んでいるのだ」というイメージが本書のタイトルになっているわけですが、中世のイタリアの町並みが深い海の底に沈んでいるようなイメージが浮かびました。


■ どんな人にオススメ?

・体を包み込んでいる毛布の存在に気づかない人。


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