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2013年12月 2日 (月)

八匹の子豚―種の絶滅と進化をめぐる省察 (上)

■ 書籍情報

八匹の子豚―種の絶滅と進化をめぐる省察 (上)   【八匹の子豚―種の絶滅と進化をめぐる省察 (上)】(#2212)

  スティーヴン・ジェイ・グールド (著), 渡辺 政隆 (翻訳)
  価格: ¥ (税込)
  早川書房(1996/09)

 本書は、「35億年間に及ぶ生命進化の歴史との対決」を扱った著者の6冊目のエッセイ集です。著者は、本書のエッセイを、「瑣末な事例や出来事から説き起こして一般的な大問題に説き至るというやり方、一見無関係な物事を奇抜な方法で結びつけるというやり方」という著者独特のエッセイ構築法に従っているとしています。
 第2章「黄金率――環境危機を考える適切な尺度」では、「今日の絶滅に何らかの意味があるにしたところで、地質学的な時間尺度での回復力とそれとは無関係である。われわれがグレアムアカリスを守るのは、おそらくわれわれ人類は生息していない遠い将来の地球の安定性を危惧するからではない。現在の生活の見栄えと居心地の良さ、そしてこの地球を共有している種の生活がそうした安定性に依存しているからこそ、われわれは生物集団や環境を保存しようとしているのである」と述べた上で、「全ての種は(地質学的な尺度でいえば)いずれ死滅するのだから、アカリスは(われわれの目の届く尺度で)死ぬにまかせようという主張は、人間にとって死は避けがたいことなのだから、たやすく治療できる子供の病気でも治療せずにほうっておこうと主張するに等しいことなのである」としています。
 第4章「八匹の子豚」では、「四足類の原型において一番なじみ深い特徴は、なんといっても五指性だろう」として、本書のタイトルの由来となっているマザーグースの「五匹の子豚」について触れた上で、シャビンとアルベルチが、「四足類の足の複雑な発生を、3つの基本的な過程の相互作用の結果として記述しようとした。分岐(一つの系列が二つに別れる)と分節(単一の系列の要素の数を増やす)と圧縮(要素と要素の結合)という3つの過程である」と述べ、このモデルこそが、「さまざまな数の指を生じさせた初期の不安定状態が、やがて5本という安定状態に落ち着いた単純明快なしくみを与えてくれる」としています。
 第6章「顎にまつわる耳寄りな話」では、「個々の器官はただ一つの機能を有する(しかもそれを完璧にこなす)だけだったとしたら、進化が複雑で精巧な構造を生み出すことはなかっただろうし、世界はバクテリアによって支配されていたことだろう。複雑な構造を持つ生物は、ずさんさ、多様と、重複のおかげで存在するのである。それまで鰓のつっかえ棒だった舌顎軟骨は、次に、顎と神経頭蓋を支えるための進化を遂げた。ところがその骨は、たまたま内耳の耳殻の真横に位置している。そして骨は、骨が進化したそもそもの理由との関連で、相当の効率で音を伝達する。つまり舌顎軟骨は、つっかえ棒が主たる機能ではあるものの、それ以外の用途も獲得していたのである」と述べています。
 そして、「耳をめぐる物語は、古生物学と機能的な証拠と発生学のデータという、3つの基盤でガッチリと固められている。裏付けの確かさと内容の見事さという点でも、この物語は、脊椎動物の進化で起こったあらゆる変化のうちで最高位に押し上げられる」と述べています。
 第11章「エドモンド・ハリー再読」では、ハリーが、「地球の年齢は従来の解釈よりも古いと主張し、聖書が課していた制限枠を拡大した」ことについて、「自分には除去できないバイアスが、地球の年齢を実際よりも古く見せる」という、「自分の仮説には有利だが、回避しなければならないバイアス」を記述していると述べています。
 そして、「ハリーが実際に追求したことをきちんと理解すると、彼が失敗した理由もはっきりと理解できる。彼は、歴史を合理的に研究する化学を確立しようとしていたのだ」として、「ハリーは、聖書直解主義の束縛を断ち切ったかもしれない」が、「彼は時間が実際には厖大であることを、露とも予想していなかった」と述べています。
 著者は、「人を評価するときは、その人たちには知りようがなかったり評価のしようがなかった後世の基準ではなく、その人たち自身の判断基準を知ってほしい」と述べています。


■ 個人的な視点から

 進化論や遺伝子の話は比較的色々なバックグラウンドを持った人がコラムを書くことが多い分野のようですが、ガチガチの古生物学者がきちんと書いてくれるコラムは貴重なのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・進化に関して思いを巡らせたい人。


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