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2013年12月20日 (金)

二重らせん

■ 書籍情報

二重らせん   【二重らせん】(#2230)

  ジェームス.D・ワトソン (著), 江上 不二夫, 中村 桂子 (翻訳)
  価格: ¥945 (税込)
  講談社(2012/11/21)

 本書は、DNAの二重らせん構造を発見したワトソンが、その解明までの経緯を自ら著したものです。訳者は、「著者ワトソンの社会観、科学観、人物観、それらはしばしば異様に感じられ、それが彼の文章でなまなましく描かれているとき、ときには反発を感じ、ときには不快にさえも感ずるのであるが、それのもつ不思議な魅力の惹きつけられて、一気に読み終えると、あとには爽快な感激が残る」と述べています。
 二重らせん構造発見に重大な役割を果たした女性科学者、ロザリンド・フランクリンについては、「注意力と冷静さが要求される結晶学の、長年に渡る訓練は、彼女の人となりにはっきり影響を残していた。彼女は、せっかくケンブリッジの厳格な教育を受けたのに、それを誤用するようなばかなマネはしたくなかった。彼女にとって、DNAの構造は、純粋に結晶学的手段で攻める以外、解決する道はないことは、自明の理であった」と述べています。
 また、研究のライバルであるピーター・ポーリングが、とうとうDNAの構造をつかんだというニュースに際しては、当初こそ狼狽したものの、その構造の誤りを見つけるや、「まだ勝負はついていないことがわかった」として「だんだん落ち着きを取り戻した」と語っています。
 そして、同じケンブリッジの物理学者モーリス・ウィルキンスが、助手を使ってひそかにロージィの研究成果であるX線の結果を複写させた写真を見たことでDNAの螺旋構造を確信し、有名な二本鎖を使った模型を着想したと述べています。
 さらに、ワトソンたちのモデルについて、「ロージィがあっさりと受け入れたのには私も最初はびっくりした。実は、私は、自身で作り上げた『反らせん』というワナのとりこになっている彼女のことだから、その鋭く頑固な頭で、二重らせんの正確さに何か不信をいだかせるような結果を、どこかからほじくり出してはきまいかと心配していたのだ。ところが、他の人々と同様、彼女もこの塩基対にはすっかり心を奪われ、これほど美しい構造が本物でないはずはないとすなおに認めたのである」と語っています。
 本書は、科学の発見をめぐる競争に参加している科学者達自身の赤裸々な心理を率直に語った一冊です。


■ 個人的な視点から

 DNAの二重らせん構造発見の貢献者でありながら、実験にともなって大量のX線を浴びたために若くして亡くなったと言われているロザリンド・フランクリン。本書では性格の悪い「悪役」的な扱われ方をしていますが、まさに「死人に口無し」といったところです。後には彼女を擁護した『ロザリンド・フランクリンとDNA―ぬすまれた栄光』で反論がぶつけられています。


■ どんな人にオススメ?

・科学の最前線の生々しい人間関係に触れてみたい人。


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