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2013年12月 5日 (木)

がんばれカミナリ竜〈下〉進化生物学と去りゆく生きものたち

■ 書籍情報

がんばれカミナリ竜〈下〉進化生物学と去りゆく生きものたち   【がんばれカミナリ竜〈下〉進化生物学と去りゆく生きものたち】(#2215)

  スティーヴン・ジェイ グールド (著), 広野 喜幸, 松本 文雄, 石橋 百枝 (翻訳)
  価格: ¥ (税込)
  早川書房(1995/11)

 第17章「光れ、大きなヒカリムシ」では、「幼虫」と「成虫」という言葉について、「リンネのつけた名には、語源からして既に、人間の一生を昆虫の成長に当てはめる伝統的な解釈が含まれている」として、「昆虫の幼虫は、さまざまな先入観にじゃまされて、軽く見られる運命にあるようだ。つけられた名の語源に含まれる先入観、考え方に潜む先入観、さらには視野の狭さのゆえに」と述べています。
 そして、「われわれが通常抱いている偏見を捨てて、幼虫と成虫をそれぞれ摂食と生殖のための対等で独立した装置と考えるような別の見方に到達できれば、多くの難問がただちに解決される」と述べ、「不当にも人間の発達と同一視して(これは社会的に好まれているけれども)、幼虫を準備的な段階だの、未発達だの、あるいは不完全だのと言ってないがしろにしてはならないということである」としています。
 第18章「カモノハシであるとは」では、「カモノハシは、人間がうぬぼれという弱さゆえに抱きがちな誤った予想に常にさらされてきた」とした上で、「カモノハシの前哺乳類的な特徴は、劣っているとか非効率であることの烙印ではなく、むしろ興味深い別のメッセージを伝えている。前哺乳類的な特徴は、単項目の祖先が胎盤を持つ哺乳類へとつながる系統から早い段階で枝分かれしたことを示している。この系統は爬虫類的特徴を一挙には失わず、進化の趨勢に特有の、ゆっくり少しずつといった具合にそうした特徴をなくしていった」と述べ、「原始性神話とは反対に、カモノハシの真の姿は、独自の風変わりな生活様式にきわめて巧妙に適合した生き物なのである」としています。
 第24章「アントワーヌ・ラヴォアジェの受難(パッション)」では、「ガリレオとラヴォアジェの共通点は両者の明晰さだけにあるのではない、二人は知識人の生涯にいかにも結びつきそうな伝説を、つまり、国家権力と摩擦を引き起こす孤独な革命的天才という伝説をまさに地で行った人物であり、その双璧をなしているのである」と述べた上で、ラヴォアジェの功績として、「元素と化合物の本性のちがいをはっきりと区別した点にあった」としています。
 第28章「ウィリアム・ジェニングズ・ブライアン最後の戦い」では、法廷での「創造科学」をめぐる闘争をアメリカ史にもたらしたウィリアム・ジェニングズ・ブライアンについて、「なぜ、あのアメリカ人民党の最も偉大な改革者だった彼が、晩年、大保守反動家となったのか」というパラドックスを解きたくなったと述べた上で、ブライアンの進化論へのアプローチについて、
(1)進化の事実とその機構に関するダーウィンの説明を混同するというよくある間違い。
(2)自然淘汰説を、闘争し敵を殲滅することで生き残ろうとする好戦的な理論というふうに誤って解釈した。
(3)ダーウィニズムはこのような残忍な闘争に道徳上の高い価値を置いていると議論し、論理的な誤りをおかした。
の3点を誤りと指摘しています。
 そして、第一次世界大戦時の「二つの出来事が熱狂的な行動へと駆り立てることになった」として、
(1)ドイツの知識人と軍事指導者の大半が、闘争に関するダーウィンの考え方を援用して、戦争と支配を正当化してきた事実をブライアンが知ったこと。
(2)ドイツの軍国主義に直面した時にモラルの低下をきたす原因となる可能性がある国内の懐疑主義の成長を恐れるようになったこと。
の2点を挙げる一方で、「ダーウィニズムは人々から、戦争や支配、国内の搾取を擁護する存在として思い描かれていると述べた点は正しかった」として、「ブライアンの解決法は間違っていたが、彼は現況はつきとめていたのだ!」と述べています。
 本書は、進化をモチーフに展開された上質のエッセーが詰まった一冊です。


■ 個人的な視点から

 学術的な争点をわかり易い言葉で門外漢に説明できる能力は、科学者が本来持っているべき能力だと思うのですが、現実にはなかなか難しいようです。


■ どんな人にオススメ?

・現在当たり前と思われている科学を疑うことが出来る人。


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