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2013年12月10日 (火)

バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!

■ 書籍情報

バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!   【バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!】(#2220)

  マーカス・ウォールセン (著), 矢野 真千子 (翻訳)
  価格: ¥1,890 (税込)
  NHK出版(2012/2/21)

 本書は、「大学や起業といった組織に属さないアウトサイダー科学者達が繰り広げる、生命科学の最前線レポート」です。著者は、「バイオテクノロジーが生み出すものにも便益と弊害がある。遺伝子工学を民主化することへの最大の疑問は、そのツールとノウハウをより多くの人の手に渡した時、便益と弊害のバランスがどう傾くかだ」と述べています。
 第2章「アウトサイダーのイノベーション」では、既成組織に属さないバイオ科学者のいる場所について、「バイオテクノロジーの可能性を、厳格な既製組織で大きなイノベーションが生まれるのを待つよりも早く、実用レベルでちょこちょこ広げていくことだ」と述べています。
 第6章「価格を下げてハードルを下げる」では、「DIYのサブカルチャーでは、どんな分野であれ、材料や道具のコスト、作業量をハックすることが、つねに優先順位のトップにある」として、「バイオテクノロジーを自分でやろうとしても、装置や道具が個人で買える範囲をはるかに超えるというのがこれまでの常識だった。だが最近は、イーベイやクレイグズリストで中古品が値引き販売されるようになってきた」と述べています。
 第7章「遺伝子組み換え作物はだれのため?」では、「インドのグジャラート州の貧農達が、突拍子もないバイオハッキングをして、遺伝子組み換え作物を巡る議論を全く新しい方角に導く」として、モンサント社が開発した「禁制品の遺伝子組み換え種子」が州内に広がっていったと述べ、「農民は種子を、企業の支配からも政府の統制からも解放する過程で、遺伝子組み換え作物を巡る議論の両サイドから自分たちを解放した」としています。
 第8章「遺伝子の所有権はだれのもの?」では、組み換えDNAの研究者であるボイヤーが起業したジェネンテック社が株式公開によってボイヤーを大金持ちにしたこと、スタンフォード大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校が組み換えDNA技術の特許を取得し、この特許は25年間に合計2億5500万ドルのライセンス料収入をもたらし、バイオテクノロジー業界の基盤となったことを述べた上で、「バイオパンクたちはこのビジネスモデルに納得がいかない。金儲けの部分はとりあえず別にして――彼らにとって金銭的利益はそれほど関心がない――効果な材料や設備、化学試薬がバイオテクノロジーを大組織だけの独占領域にしている上、その独占対象が知見にまで広がっている点が問題だ」と述べています。
 第11章「生命の言語を読む」では、「先端科学も殺人事件捜査もかつては一般市民が入り込める分野ではなかった。それを、DNAは日常レベルにしてしまった。膨大な費用と10年の歳月をかけたヒトゲノム・プロジェクトは、10年もしないうちに安くて速いシーケンサー(配列決定装置)を生み出し、個人のDNAはやすい中古車1台分くらいの値段で読めるようになった」と述べています。
 第13章「バイオテロ」では、「テロとバイオテクノロジーを結びつける議論のキーワードは『二重用途』だ。有益な用途のために設計されたバイオテクノロジーでも、その気になれば有害な兵器に転用できる」として、「だれもがシンプルで安価なツールと簡素化された技術を使えるということは、悪用しようとする人間にとっても使えるということだ」と述べています。
 一方で、「バイオテロをするのに遺伝子工学は必要ない」上に、「テロリストの手に渡ったら危険なものを合成生物学で作成することは、世界一の天才科学者でさえ(いまのところ)不可能だ」と述べています。
 本書は、バイオテクノロジーの新しい潮流をレポートした一冊です。


■ 個人的な視点から

 巨大な研究設備が必要だった生物科学の分野もコンピュータの高速化と機器の量産化によって個人ベースでも参入できるようになったという話。まさしくクリステンセンのいう「破壊的イノベーション」の一分野ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・バイオ技術は巨大な研究施設だけで起こっていると思う人。


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