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2014年1月10日 (金)

人種は存在しない -人種問題と遺伝学

a■ 書籍情報

人種は存在しない -人種問題と遺伝学   【人種は存在しない -人種問題と遺伝学】(#2247)

  ベルトラン・ジョルダン (著), 山本 敏充 (監修), 林 昌宏 (翻訳)
  価格: ¥2310 (税込)
  中央公論新社(2013/3/22)

 本書は、「今日の科学の貢献をできる限り広く一般に周知」させるために、「明らかになった事実を詳細に紹介しつつ、あらゆるタブーを排除し、これらの問題を解説」したものです。
 第1章「人種および人種差別に関する小史」では、「アメリカでは、人種的な帰属が重要な意味を持つ。アメリカは、国の調査によって人種の情報を集める、今日では珍しい国だ。このことに歴史的な背景があるのは間違いない」と述べています。
 また、「かなり長い間基本文献として認められていた」ものとして、ゴノビー伯爵による『諸人種の不平等に関する試論』について、「ゴノビーは、歴史的、哲学的、科学的なアプローチを用いながら、人種間に序列を打ち立てようとした。彼の論証をじっくり読むと、彼が依拠していた前提を垣間見ることができると同時に、彼の論証が時代遅れであることを感じさせられる。彼の論証は明らかに破綻しているのだ」と述べています。
 第2章「人種は明白なものか」では、「人種という考えは極めて曖昧で、つかみどころのないものだ。人種が何を意味するのであれ、また人種が根拠薄弱な考えであることがきちんと証明されても、それは無意識のうちに、われわれの社会共同体に深く染み込んでいる」と述べています。
 そして、「人種という言葉は、19世紀から20世紀前半まで頻繁に用いられたが、その後は疑わしい言葉になり、フランスでは現在、ほとんど使われなくなった。だが今日でも、その言葉はわれわれの脳裏に焼き付いている」と述べています。
 第3章「科学は人種を否定する」では、複数の人々の間でのDNAの均質性について、
(1)人類の誕生は比較的最近であること。
(2)これまでに人類は、大陸から大陸へと渡り歩いてきたこと。
の2つの説明を紹介しています。
 第5章「ヒト集団の多様性――最初の目印」では、最先端のDNA分析によって、「人類の均質性がきわめて高い一方で、人類を区別できる祖先グループの存在も明らかになった」と述べています。
 そして、「明確に定義したヒト集団について、ミトコンドリアDNAとY染色体の遺伝的多型マーカー(ミニサテライト、マイクロサテライトなど)をきちんと調査した後に、ある人物のDNAを分析すれば、母方と父方の祖先に関する情報を得ることができる」と述べています。
 第6章「スニップスがヒト集団を定義する」では、「DNAに最も頻繁な遺伝的多型性は、局所的な変化であり、これがスニップスである。ほとんどの場合、あるスニップ(SNP)にアレルが存在したとしても、その性質は、人の外観あるいは整理に、何の影響も及ぼさない」と述べた上で、「あるヒト集団に特有のスニップスの形式はほとんど存在しない」としています。
 また、「スニップスの形式を分析すれば、祖先にたとえ様々な地域の出身者がいたとしても、その人物の祖先を示すことができる」としています。
 第7章「さらに詳しく解説するなら……」では、「スニップスはお互いに独立しているのではない。ヒトのDNAには、祖先に存在したアレルの組み合わせの名残がある」とした上で、「洗練された分析を行えば、曖昧である人類全体の身元を突き止め、あるヒトがどのヒト集団に属するのかを見つけ出すことは可能だ」が、「集団内における多様性が集団間の多様性よりも高いのは明らかである」と述べています。
 第9章「人種ビジネス」では、「個人を対象に分析しても、そのヒトの出身地域を明らかにできる」ことから、「そのような検査ビジネスがかなり繁盛している」と述べています。
 第10章「犬とヒト」では、「移住、征服、ヒト集団間の交わりは、われわれにとってありきたりの出来事だった」ため、「人数が多いにもかかわらず、われわれは哺乳類の中でも、最も互いに均質な種の一つなのである」と述べています。
 第14章「旅の終わり」では、考古学並びに最先端のDNAマーカーを利用した研究から導き出される結論として、
(1)厳密な意味において「人種」は生物学的な意味を持たない。
(2)そうはいってもDNAの分析によって、人類という種の祖先集団は明確にすることができる。
(3)病気によっては、これらの集団間で発生率が著しく異なる。
(4)ある種の「先天的な能力」が祖先集団によって異なることはありうる。だが、そのような遺伝に基づく差異は、今日まで証明された試しがない。
の4点を挙げています。
 本書は、「人種」という曖昧な観念を最先端の研究の成果で切り込んだ一冊です。


■ 個人的な視点から

 現在の人類が5万年前にアフリカを旅だったごく僅かな人々の子孫であることを考えれば、「人種」と言われていたものは、人類が居住することに成功した各環境に対する豊かな「適応」の成果と考えたほうがいいのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・外国人と自分がぜんぜん違う人間だと思っている人。


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