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2014年1月17日 (金)

「つながり」の進化生物学

a■ 書籍情報

「つながり」の進化生物学   【「つながり」の進化生物学】(#2254)

  岡ノ谷 一夫
  価格: ¥1575 (税込)
  朝日出版社(2013/1/25)

 本書は、こころとコミュニケーションの進化の研究を高校生向けに話した講義録です。
 第1章「鳥も、『媚び』をうる?」では、「コミュニケーションは、僕たちの心のはじまりと深く関わっている」として、「コミュニケーションについて考えることは、僕たちの心のひみつに近づくこと」だと述べたうえで、コミュニケーションについて、「送り手から受け手へ信号の伝達がなされ、受け手の反応によって、長期的には送り手が利益を得るような相互作用」とする進化生物学での定義を述べています。
 また、ハダカデバネズミが17種類もの鳴き声でコミュニケーションしているとした上で、女王を守るためにヘビに食べられる「兵隊ネズミ」など、「死ぬ役」が出てくる理由として、「生物の使命は、遺伝子セットを安全に長期間保存することになる」ため、「自分の遺伝子セットと似たものを持っている他の個体がいれば、その個体をできるだけ助けてあげるような行動をとるほうが、遺伝子セットにとって有利」であるとして、「自分の親や兄弟、子供たちには、損得抜きに親切にできる」とする「血縁淘汰」について解説し、「ある個体がどれだけ子どもを残すかではなく、その個体と遺伝子を共有する他の個体までひっくるめて、その個体を構成する遺伝子全体がどれだけ広がるかという見方で、動物の行動を理解する」考え方である「包括適応度」を解説しています。
 そして、「コミュニケーションを『わかり合い』のための行動と考えず、自分を構成する遺伝子を最大限に拡散するための方略と考えると、より生物学的な理解」ができるとしています。
 第2章「はじまりは、『歌』だった」では、ニコラス・ティンバーゲンという動物行動学者が作った動物行動学の研究の枠組みである「メカニズム・発達・機能・進化」の4つの質問について、
・至近要因:「HOW」メカニズム・発達
・究極要因:「WHY」機能・進化
の2つのカテゴリーに分けることができるとしています。
 そして、「われわれは言葉をもつ過程で、論理的には間違った推論をしてしまう能力が必要だった」として、「誤った推論をするという能力が人間にあるので、シンボルと意味の対応関係が両方つくられる。これが自動的に出来てしまうことが、人間の不思議なところ」だと述べています。
 また、「動物は、情動の状態に応じて発声がなされ、そこから発声が続けて行われたり、異なる発声が組み合わされたりして、歌ができていったのではないか」と述べています。
 さらに、「言葉をもつ前の人間の祖先の歌は、多分絶対音感に基づくものだった」だろうが、「絶対音感を隠蔽して、音の高さの比率関係に頼ることで、相手の体の大きさ、声の高さにかかわらず、発した音を、同じ音として認識できる」と述べています。
 第3章「隠したいのに、伝わってしまうのはなぜ?」では、「扁桃体に損傷がある方は、すぐに結婚し、すぐ離婚してしまうことが多い。なぜかというと、対人恐怖がないからです。人と人は、どれほど仲がよくても他人なので、ある程度の距離を保つようになっているのですが、対人恐怖がなくなると、どこまでも近づいてしまいます」と述べ、「人間以外の動物でも、扁桃体と前頭前野内側部の相互調整機能によって、情動によって調整される社会的な行動が維持されていると考えられます」としています。
 また、「目の周りの筋肉が意図的に動かせない」ことについて、「もし、表情を完全にコントロールすることができれば、僕たちは表情を信じることができなくなる。だから、表情をつくる顔の中に、どうしても意思では制御できない部分が残っていないと、コミュニケーションの信号として機能が成り立たないということに」なると述べています。
 第4章「つながるために、思考するために」では、「他人に心があると仮定して行動するという性質」である「心の理論(セオリー・オブ・マインド)」について、「心の理論」には適応価があるだろうとした上で、「他者の行動と自分の行動をマッチングさせることで、他者の意図を理解できるかもしれないし、他者がやった行動で有益な行動を、そのまま真似できる」ことから、ミラーニューロンにも適応価があると考えられるとしています。
 著者は、「人間の心は、宇宙全体を飲み込んでしまうような複雑さ」があるとして、「みなさんがどんな進路に進むのであれ、皆さんが人間に興味を持って生きてゆく限り、それは人間の心の理解を、ほんの数ミリだけ進めることにつながるのだと思います」と述べています。
 本書は、人間の心の成り立ちをコミュニケーションから考えた一冊です。


■ 個人的な視点から

 一昨年くらいに千葉大の理学部でハダカデバネズミの巣を展示していたのを見たことがあります。写真のアップで見るとギョッとしますが土の中で動き回っている彼らはとてもキュートでした。


■ どんな人にオススメ?

・こころの話は難しいと思っている人。


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