« 日本人と宇宙 | トップページ | 社会のなかに潜む毒物 »

2014年1月24日 (金)

新しいウイルス入門

■ 書籍情報

新しいウイルス入門   【新しいウイルス入門】(#2261)

  武村 政春
  価格: ¥924 (税込)
  講談社(2013/1/18)

 本書は、「ウイルスとはどんな形をし、どんな種類があり、どんな“悪さ”をしているのか、そうした視点で深く解説することを目的と」しつつ、「最近のウイルスの研究の最前線の様子を含めて、ウイルスの『生物学的な側面』を強調し、わかりやすく読者諸賢に伝えること」を目的としたものです。
 第1章「生物に限りなく近い物質」では、「ウイルスは生物ではないとみなされている」理由として、「あるものが生物であるためには、最低限『細胞』の形をしていなければならないと、学者が勝手にそう決めているからだ」と述べています。
 そして、ウイルスについては、「タンパク質で出来たカプセルの中に核酸が入っている」ことが「ウイルスがウイルスであるための『必要最低限の形』である」と述べています。
 第2章「ウイルスの生活環」では、ウイルスの増殖のステップとして、
(1)吸着:感染する宿主の細胞の表面に、ウイルスがピッタリとくっつく
(2)侵入:感染する宿主の細胞の内部へのウイルス、もしくはウイルスのDNAやRNAが入り込む
(3)脱殻:タンパク質の殻を壊し、ウイルス自体の核酸を細胞質内に解き放す
(4)合成:DNAにある遺伝子の情報を元に、ウイルスのタンパク質を作るとともに、DNAをもまた複製し、たくさんの“子“ウイルスを作り出す
(5)成熟:「合成」過程で作られた核酸とタンパク質を、分子レベルで構築された筋書きに沿って、“子“ウイルスへと組み立てていく。
(6)放出:宿主の細胞内で成熟したウイルスが細胞の外に飛び出す。細胞を殺して出て行く「細胞崩壊」と殺さずに出ていく「出芽」がある。
の6点について解説をしています。
 また、細胞の中でタンパク質が作られる過程について、
(1)転写
(2)翻訳
の2つの段階を説明した上で、「この転写・翻訳の過程は、バクテリアからヒトまですべての生物に共通しているために、『セントラルドグマ(中心定理)』と呼ばれる」と述べ、「ウイルスは生物とはみなされていないが、生物共通の原則であるセントラルドグマの仕組みを用いて自らを増やすという意味では、ウイルスもまた『生物的』なのである」としています。
 第3章「ウイルスはどう病気を起こすのか」では、「ブタに、トリインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスが同時に感染すると、ひとつの細胞の中に2種類のインフルエンザウイスルのRNAがそれぞれ放出されるという事態が引き起こされる。インフルエンザウイルスのRNAは8本に分節化しているから、8本プラス8本、すなわち16本(16種類)のRNAが、同じ一つ屋根(細胞)の下で添い寝をするというわけだ」、「すると、その細胞の中で、16本の分節化RNAの間で”交換”が生じ、新しい分節の組み合わせをもった、新しいインフルエンザウイルスが生まれるのである」と述べています。
 そして、「生物は、ウイルスとともに生活し、世代交代し、種を維持し続けてきたし時には大きな変化を伴って、進化へと続く階段を登ってきた」として、「本来ウイルスは、生物と共存共栄してきた。ウイルスは、宿主に対して病気を引き起こすことが第一の目的ではなかったはずである。そうでなければ、宿主が死に絶えるとともに、ウイルス自身も死に絶えてしまっただろう」と述べています。
 第4章「ウイルスは生物進化に関わったのか」では、「私たちヒト・ゲノムのゆうに半分が、何らかのウイルスに由来する塩基配列らしいことがわかった」として、「かつてレトロウイルスが感染し、そのRNAから逆転写されたDNAが私たちのゲノムに組み入れられて残った塩基配列と、かつてDNAがウイルスが感染し、それが私たちのゲノムの中に残った塩基配列(そのメカニズムはよくわかっていない)が、私たちヒト・ゲノムの半分弱を占めているらしい」と述べ、前者を「レトロトランスポゾン」、後者を「DNAがトランスポゾン」と呼ぶとしています。
 そして、「今からおよそ2500万年前、まだ人がこの世に生まれていなかったはるか昔のこと。哺乳類のとあるグループに、あるレトロウイルスが感染した。しかも、体細胞ではなく、生殖細胞に!」として、「このレトロウイルスが哺乳類のあるグループ『有胎盤類』(の祖先)に感染した『証』が、じつは現在の私たちのDNAにきちんと残っている」と述べ、「その「内在性レトロウイルス配列」について、「かつてレトロウイルスが私たちの祖先の細胞に感染してできた、プロウイルスの成れの果て」だとしています。
 第5章「ウイルスの起源」では、ウイルスの誕生について、
(1)もともとは細胞だった:何らかのきっかけで、他の細胞の代謝メカニズムや複製メカニズムを利用して、自分の子孫を作るという働きのみを残し、残りのすべての機能や細胞小器官を失った。
(2)細胞内の自己複製分子がウイルスになった:「プラスミド」と呼ばれる環状DNAや「ウイロイド」などの小さな自己複製分子が細胞の中の遺伝子を取り込み、やがてウイルスへと「進化」していった。
(3)細胞とは別個に誕生した
の3つの仮説を紹介しています。
 第7章「ウイルスによる核形成仮説」では、「細胞核の形成、すなわち真核生物の誕生にDNAウイルスが深く関わっており、むしろDNAウイルスそのものが細胞核の起源になったのではないか」とする説を紹介しています。
 本書は、人間に最も身近に存在するにもかかわらずよく理解されていないウイルスについて、わかりやすく解説した一冊です。

■ 個人的な視点から

 インフルエンザや胃腸炎などで「ウイルス」という言葉は身近になっていますが、目に見えるものでもないので、どんなものかはなかなかイメージしにくいんじゃないかと思います。とりあえず「細菌」とか「カビ」とかの仲間くらいに思われているのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・「ウイルスは怖い」って思っている人。


« 日本人と宇宙 | トップページ | 社会のなかに潜む毒物 »

その他科学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/54671043

この記事へのトラックバック一覧です: 新しいウイルス入門:

« 日本人と宇宙 | トップページ | 社会のなかに潜む毒物 »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ