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2014年1月20日 (月)

人類とカビの歴史 闘いと共生と

■ 書籍情報

人類とカビの歴史 闘いと共生と   【人類とカビの歴史 闘いと共生と】(#2257)

  浜田信夫
  価格: ¥1,470 (税込)
  朝日新聞出版(2013/6/11)

 本書は、「現代人の生活と深く結びついて生きているカビについて考察した」ものです。
 第1章「カビとは何か」では、「カビは微生物の中では大きい方だ」として、「一方、細菌はどんどん細胞分裂して増殖しても細かい透明の水滴のような塊にしかならず、食品に生えていても肉眼ではなかなか見つけることができない」と述べています。
 そして、「カビは、樹木の戦意であるセルロースも栄養にすることができる。また、他の微生物が利用できない防腐剤のクレオソートを栄養にして生育するカビまでいる。分解可能なのは植物由来の物質だけではない。動物の毛や固い爪なども分解して栄養にしている。その他、プラスチックやレンズ、ジェット機のアルミ合金製の燃料タンクまで栄養にすることができる」と述べています。
 第2章「食品とカビ」では、生鮮食品にカビが生えない理由として、「生鮮食品では、カビは常に細菌との生存競争にさらされている。湿っていて栄養分がたっぷりの食品では、カビは生長の速い細菌にほとんど負けると言ってよい。」あるいは、細菌がカビより先に繁殖して、鮮魚など多くの生鮮食品は悪臭を放つ。人はその段階で腐った生鮮食品を捨ててしまうのだろう」と述べています。
 また、「餅を保存する方法として、今日では乾燥、冷凍、冷蔵、脱酸素剤の使用などが挙げられる。それに対して、保存するためにかき餅などとして完走させる場合以外は、水餅にするのが日本における伝統的な保存法であった」と述べています。
 第3章「住居とカビ」では、「全自動洗濯機には一般に半年ぐらいの使用で、カビ汚染が見られるようになる。新しいからといって安心していられない。また、カビ数は1年ほどで、増殖が緩やかになっている。ただし、胞子の増加が収まったからといっても、それ以降にカビの菌体が増えないということではない」と述べた上で、洗濯機に多いカビは、空気中に多いクロカワカビではなく、一般の室内空気中には稀にしか見つからないエキソフィアラ、スコレコバシディウムなどの暗色のカビが多く見られたと述べています。
 また、「日本で浴室にカビの多い原因は、ウサギ小屋と言われた小さな住宅と同様に、浴室が狭いこと、そこに設置した浴槽に長時間お湯を張ったままにしていることにある。また、欧米に比して浴室の換気システムが発達していなかったこともあると思われる」と述べた上で、ユニットバスの繋ぎ目に使うシリコンに生えるカビの原因が、フォーマというカビであり、「フォーマは塩素系カビ取り剤使用の申し子といえよう。浴室に多い界面活性剤を好むカビの中で、フォーマは塩素系カビ取り剤の作用を受けにくい構造の子実体を持ったカビである。最強のカビ取り剤もシリコンに潜んだフォーマだけは退治できない。まさに、フォーマはユニットバスに適応したカビであり、新しい生存領域を見つけたカビがまた1種出現したのだ」と述べています。
 さらに、「住宅のカビ被害が、居住者の住まい方より、立地条件に影響されていることは案外知られていない。だから、住宅のカビは主婦の不始末と言う人が今でも多い。しかし、どんなに掃除しても、湿った住宅ではカビ被害から逃れることはできない」と述べています。
 第4章「カビと健康」では、「カビ汚染した食品を食べた場合や胞子を吸引した場合の健康被害、さらにはカビが体内に生えた場合の真菌症や、体表に生える水虫の実態について明らかにしたい」としてます。
 また、ペニシリンを発見したフレミングについて、「フレミングの偉大さは、誰も興味を示さなかった現象に目をつけたことと、微生物は発育阻害物質または殺菌物質を作ると考えたことだ。そして、それらは培養液中に分泌される物質であり、物質単独でも作用すると考えたことだった」と述べています
 「おわりに」では、「カビの撃退法について決め手が絶対ないと思っていた時代は、人は少しでも減らす工夫をしたのである。カビとうまく共存するのが生活の知恵だった。そして、ほどほどに予防すれば、カビは大発生することはない。少しばかりカビが生えても、健康上恐れるには足りない。カビを毛嫌いする必要はない。人の生活に依存して生きるカビに対して、昔の人はやさしく我慢強く対応したことだろう」と述べています。
 本書は、カビとうまく共存する策を語った一冊です。


■ 個人的な視点から

 「水餅」って見たことないのですが、昔はこれが餅の保存方法だったようです。今でも地方によってはお盆に水餅を食べる習慣があるみたいです。


■ どんな人にオススメ?

・とにかくカビが嫌いな人。


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