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2014年1月19日 (日)

気候変動を理学する―― 古気候学が変える地球環境観

a■ 書籍情報

気候変動を理学する―― 古気候学が変える地球環境観   【気候変動を理学する―― 古気候学が変える地球環境観】(#2256)

  多田 隆治 (著), 日立環境財団(協力)
  価格: ¥2520 (税込)
  みすず書房(2013/4/2)

 本書は、2012年2月から10月にかけて5回にわたって開催された「環境サイエンス・カフェ」の講義を書籍化したものです。
 第1回「地球の気候はどのように制御されてきたか」では、カール・セーガンが提唱した「暗い太陽のパラドックス」について、「太陽の明るさが今の7割しかなかったら、地球の表面は凍りつき、凍ったら現在に至るまで絶対にそこから抜け出せないはずだ」というものだとした上で、「強い温室効果をもつガスで地球が覆われていたから、全球凍結を免れた」と述べています。
 また、地球の大気について、「太陽の光はほとんど通すけれど、地球が出す長い波長の電磁波はあまり通さない」ため、「地表が出す長波放射を大気が吸収し、それにより大気が温められてまた放射をすることによって地表を暖めるのに使われていた」ことが温室効果だとしています。
 さらに、全球凍結からの脱出メカニズムについて、カーシュビングが提唱した、
(1)何らかの理由でCO2が減少
(2)全球凍結
(3)化学風化停止
(4)CO2濃度上昇
(5)全球凍結解除
というメカニズムについて紹介しています。
 第2回「地球は回り、気候は変わる」では、「ミランコビッチ・サイクルと氷期―間氷期」について、「地球の公転軌道の離心率、地軸の傾き、公転軌道に対する地軸の歳差運動の変化による日射量分布の変化」であるミランコビッチ・サイクルが、氷期―間氷期サイクルを生み出すという仮説について紹介した上で、ミランコビッチ・サイクルに関する要素として、
(1)公転軌道の離心率変化:地球が太陽の周りを回る軌道が丸くなったり楕円になったりと変化すること
(2)地軸の傾斜角変動:地球が太陽の周りを回る公転軌道面に対して地球回転軸(地軸)が傾いている角度が変化すること
(3)地軸歳差:地軸のごますり運動
の3点を挙げています。
 第3回「CO2濃度はどのように制御されてきたか」では、「自然界が生み出しうるCO2の変化速度としては、多分氷期から間氷期にかけての上昇が一番速いと思われる」が、「それと比べても人為的なCO2の放出の速度は3桁大きい、そのぐらい人間はすごいスピードでCO2を出している」と述べています。
 また、CO2を海に押し込めるプロセスである「ポンプ」について、
(1)生物ポンプ:CO2を有機物の形にして深層水に送り込み、そこで酸化分解することによりCO2を一時的に深海に押し込めるプロセス。
(2)アルカリポンプ:生物ポンプで一時的に送り込んだCO2を、深層水中でCaCO3を溶かすことにより大気に戻らないようにするプロセス。
(3)溶解ポンプ:海洋の温度を下げることによってCO2を余計に溶かしこみ、より多くのCO2を海洋に蓄えるプロセス。
の3つについて解説しています。
 第4章「急激な気候変動とそのメカニズム」では、
(1)最終氷期にグリーンランドで急激な気候変動が繰り返したことがわかってきた。
(2)それは北米のローレンタイド氷床をはじめとする氷床の崩壊にともなって氷山が北大西洋に流出し、一時的に北大西洋での深層水形成を止めた、もしくは弱めたことによって引き起こされたものだった。
(3)北大西洋の深層水循環には複数の安定モードがあって、小さな撹乱によってモードジャンプが起こる。その撹乱の程度によって、深層水循環が弱まるか、止まるところまで行ってしまうかという違いが生じる。そして最後に、氷床は独自のリズムで自ら成長・崩壊を繰り返していた。
の3点について言及した上で、「地球にはさまざまなサブシステムが存在していて、条件が整うと与えられた信号を増幅する機能を発揮する場合がある」と述べています。
 第5章「太陽活動と気象変動」では、「黒点が多い時に太陽がより明るいのは、実は『黒点が多い時には白斑も多く、それが黒点の暗さを埋め合わせても余りあるぐらい明るいから』なの」だと述べています。
 そして、「古気候記録や観測記録を総合的に見ると、太陽活動に連動して高緯度地域では北極振動に似たパターンが生まれている。低井戸地域では、エルニーニョ、ラニーニョに似たパターンの変動が起こっている赤道域から中緯度域ではハドレー循環が強まったり弱まったりしているらしい」と述べています。
 本書は、気候変動に関する議論の前提となる地球の気候制御システムを理解するための一冊です。


■ 個人的な視点から

 地球温暖化も心配ですが、もっと怖いのは氷河期です。氷河期まで行かなくても太陽の活動の変化や火山の噴火で気温が下がることの方が近い将来の心配としては深刻な気がします。


■ どんな人にオススメ?

・地球温暖化問題に意識の高い人。


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