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2014年2月10日 (月)

Basic 地方財政論

■ 書籍情報

Basic 地方財政論   【Basic 地方財政論】(#2275)

  重森 暁, 植田 和弘
  価格: ¥2520 (税込)
  有斐閣(2013/4/13)

 本書は、「わが国における地方財政の歴史・制度・課題について、できるかぎりわかりやすくその基礎から解明しようとするもの」です。
 第1章「現代地方自治と地方財政」では、「歴史上三度に渡る大規模な合併推進の結果、わが国の町村は自然村(共同体としての町村)から、行政村(行政体としての市町村)へと変貌を遂げた」と述べています。
 また、わが国の国と地方の関係について、「わが国は明らかに集権・融合型である」とした上で、「地方の担当する事務は多いけれども権限は国に集中している集権的分散システムという特徴を持ってきた」と述べています。
 第2章「日本における地方自治と地方財政の歩み」では、明治地方自治制度の基本的性格について
(1)中央集権的で、かつ天皇制国家の官僚による支配という意味で官治的性格の強い地方制度が作られたこと。
(2)地方政治に参加できるのは有力者=地主であり、地主を地域支配の担い手とする地方制度であったということ。
(3)市制町村制による行政上の業務を担える規模の行政組織を編成するために、大規模な町村合併が行われたこと。
(4)市町村は国の機関委任事務の担い手としての義務を持つが、市町村の財源は独自に調達することとされ、国の末端行政機関として自生的に制度化されたこと。
の4点を挙げています。
 また、1949年、50年の二度にわたって行われたシャウプ勧告の要点について、
(1)地方、特に市町村の独自財源の強化
(2)国による地方財政に関する一方的決定の排除
(3)市町村優先の事務配分
(4)補助金の整理と一般的な地方財政調整制度の導入
の4点を挙げています。
 第3章「地方自治体の役割と経費」では、経費の効率性がしばしば問われてきた背景として、「1970年代の地方財政危機の際に提起された『都市経営論』や80年代に進められた『行政改革』の一環としての、外注化・民間委託など」を挙げた上で、その後も、PFIやNPM、「指定管理者制度」などの「次々と新な手法が導入されてきた」として、「それらにおおむね共通する考え方は、自治体の経費支出に『コスト感覚』を反映させるために民間企業的手法を導入する、サービスの受け手である住民を『顧客』とみなすなどである」と述べています。
 第4章「地方経済と地方財政」では、「地方圏では、政府部門による雇用が地域経済にとって重要な役割を演じている」とした上で、「地方圏では政府サービスとは別に、建設業についても大都市圏よりも比重が大きいことも特徴である」と述べています。
 第9章「地方自治の財政基盤」では、「三位一体改革」を主導した理念として、地方分権改革推進会議「事務・事業の在り方に関する中間報告」(2002年6月)で打ち出された「当会議は、我が国はすでに多くに分野でいわゆるナショナル・ミニマムを達成しているという前提に立ち。地方公共団体は、それぞれ地域住民のニーズに応えて、地域ごとに最適の施策の組み合わせを探求し、その実現に努力すべきであると考える」とした「ローカル・オプティマム」論を挙げています。 
 第11章「地方交付税と国庫支出金」では、シャウプ勧告を受けて実施された地方財政改革のポイントとして、
(1)従来からの国庫補助負担金を分類した上で、国が奨励的に用いるものなど一部を除いて、廃止しようとしたこと。
(2)地方配布税を廃止して、新に財政需要と課税力の両方これに対して国が財源保証するという建前を取るとともに、その妥当性を審議し、政府や国会に意見提出などを行う組織として、地方財政委員会を新に設けたこと。地方財政平衡交付金では基準財政需要額と基準財政収入額の差額についてすべての地方自治体分を積み上げ、を考慮した、地方財政平衡交付金を創設したこと。
(3)
の3点を挙げています。
 第12章「地方債と地域金融」では、「かつては公的資金からの借入が地方債の過半を占めていた」が、「2000年ころより個々の地方自治体が金融市場から直接的に資金を調達する割合が増加している。とくに市場公募債の急増傾向が目立つ」と述べています。
 そして、「地方債はあくまで投資家の自発的な意思を前提にして発行されるものである。それゆえ地方自治体には、投資家の運用ニーズを汲み取り、それに応える姿勢が求められる。とくに市場公募債の発行に際しては、銀行等引受債と違って不特定多数の匿名の投資家を相手に発行される点を踏まえ、より積極的な取り組みが必要となろう」と述べています。
 第14章「予算制度と住民自治」では、「日本の地方予算制度は従来、本来の地方自治体が果たすべき地域社会のニーズを充足するための政策的機能よりも、国の提示する開発計画を地域で下請的に実施するための行政管理的機能が重視されてきた。この結果、財源や資金の管理は厳密ではあるが議会や住民によるコントロール機能が十分働かず、現実の変化や住民のニーズに答えることができず、自治体独自の計画機能も弱かった」と指摘しています。
 本書は、日本の地方財政制度に関する諸問題を指摘した一冊です。

■ 個人的な視点から

 日本の地方財政の制度が持っている複雑さを理解する上で、戦前、戦中の地方財政制度と、それを終戦後どのように改革しようとした結果、今の制度になっているか、という歴史的経緯の理解が不可欠です。


■ どんな人にオススメ?

・地方財政が現在の姿になるまでを理解したい人。


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