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2014年2月14日 (金)

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

■ 書籍情報

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか   【日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか】(#2279)

  山田 奨治
  価格: ¥2520 (税込)
  人文書院(2011/9/15)

 本書は、「著作権とはそれによって利益を得たい権利者や権利の管理者、法律家や文化庁の官僚だけが制定や改正にかかわることで、著作物のユーザーである大部分の国民は、彼らが決めたことにしたがうだけの存在だと思われている」ことに疑義を唱え、法律改正のプロセスに市民が積極的にかかわることの必要性を訴えるものです。
 第1章「パクリはミカエルの天秤を傾けるか?」では、日本の著作権業界を支配する傾向として、
(1)被害の過大な見積もり
(2)強い保護だけ横並び
の2点を指摘しています。
 第2章「それは権利の侵害です!?」では、日本の映画盗撮防止法の罰則が、海外の同種の法律と比べて際立って厳格であるとして、アメリカでは「初犯で最高3年、再販で最高6年の懲役刑」、香港では「諸藩で最高5000香港ドル(約5万円)の罰金、再販で5万香港ドルの罰金または3ヶ月以下の禁錮刑」であるのに対し、日本では初犯でいきなり「十年以下の懲役もしくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」となっていることを指摘しています。
 また、著作権法の目的は、「文化の発展に寄与すること」であるにもかかわらず、「必ずしもこの目的にそぐわないような使い道」もあるとして、
(1)権利者の意に反する言論をけん制するため
(2)他の法律では対応できない犯罪的な行為を取り締まるため
の2点を指摘しています。
 第3章「法律を変えるひとびと」では、文化庁の文化審議会著作権分科会について、
(1)著作権分科会の委員が特定の団体の「充て職」でよいのか。
(2)おなじ人間が長期にわたって委員の座を占めていることは公正か。
の2点を問題視しています。
 第4章「ダウンロード違法化はどのようにして決まったのか」では、私的録音録画補償金に関して、「記憶にとどめておいていただきたいこと」として、
(1)「私的使用のための複製」は利用者の権利であって、利用者は権利者の「お目こぼし」にあずかっているのではない。
(2)補償金制度はデジタル時代に対応するために、現行著作権法が施行されたから31年後に追加された制度であって、「私的使用のための複製」と補償金は一対のものではない。
(3)「私的使用のための複製」からはずされたことは、家庭内での行為であっても違法になる。もちろん、「私的使用のための複製」に当たらない違法行為は、補償金の対象にはらなない。
の3点を挙げています。
 そして、「私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しが、利害関係者の対立によって潰されてゆく中で、ダウンロード違法化が『鬼子』として産み落とされた経緯」を述べたうえで、「ここからみえてくることは、著作権法改正の方向性は、公平中立な委員たちによって決められているのでも、各界からバランスよく委員が選ばれた委員会で議論されているのでもないということだ」と指摘しています。
 第5章「海外の海賊版ソフトを考える」では、「海賊版VCDやDVDによって日本の大衆文化に触れる機会は、2000年代なかばには明らかに減少に転じていた」として、
(1)日本政府からの働きかけによる取り締まりが強くなったこと。
(2)アジアの市民が日本の映像文化に触れる手段が、インターネットからのファイル・ダウンロードへと代わったこと。
の2点を理由として挙げています。
 また、海賊版の判断基準として、
・ディスク上のコードが故意に消されているもの
・発行元の記載がないもの
・テレビからの録画や映画館での盗撮とわかるもの
のいずれかかに引っかかるものであると述べています。
 そして、「海賊版の流通がディスクからネットへと代わったことにより、より多くの映像がより早く広がり、過去の作品もよりかんたんに入手できるようになった」ことで、「海賊版の世界でも日本のコンテンツが他国との競争にさらされるようになっている」と述べ、権利者側も「ファン活動を違法なものとして抑えこむのではなく、逆にその流通力を宣伝の一形態として活用する工夫」が必要だと述べています。
 第6章「著作権秩序はどう構築されるべきか」では、この本の論点として、
(1)じゅうぶんな議論を経ないで法律が作られたり変えられたりすることに、わたしたちはもっと注意を払うべきだ。
(2)海賊版は権利者に経済的な損失を与えるだけのものではなく、文化を異国に伝える強力なインフラとして作用し、時にはその市場創造力によって長期的には権利者に利益をもたらすことも否定しきれない。
(3)知財保護の推進者達は秘密の外交交渉に議論の場を移す戦略を取り始めている。
の3点を挙げています。
 本書は、著作権法が「著作権業界」の関係者のみで決められている実態を鋭く衝いた一冊です。

■ 個人的な視点から

 著作権に関するルールを決めているのが、著作権者側の人間と官僚だというのはなんとも寂しいものです。


■ どんな人にオススメ?

・著作権に関するルールの決め方を知らない人。


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