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2014年2月 6日 (木)

地方財政のヒミツ

■ 書籍情報

地方財政のヒミツ   【地方財政のヒミツ】(#2272)

  小西 砂千夫
  価格: ¥2200 (税込)
  ぎょうせい(2012/10/30)

 本書は、「地方財政の相対としての地方財政計画の内容や、地方交付税の財源不足への手当などの運営に注目し、マクロの動きが個々の自治体の財政運営にどのように影響するかを表そう」としているものです。
 著者は、本書が、「国が必要とみなす総額をどのような考え方で積み上げているのか、自治体に配分するときに何を重視しているのか」といった「交付する側の国の担当者にとって、仕事をする上で特に重要」な論理を重視した視点で書かれていると述べています。
 第1講「自治体はさまざま、財政調整は不可欠」では、「自治体の財政は、国から一定の行政任務を委任されているところから始まる」ため、「任された自治体からすれば、そのような行政任務を担う上で、それに必要な財源が調達できるような地方税財政制度を、国の責任として設けることを求める」と述べています。
 そして、「戦前は、義務教育経費に対する国の補助金である国庫支出金による支弁を、地方が根気よく求めて、長い時間をかけて実現していった」とした上で、「その過程で、義務教育に関する国庫負担を求めて、三重県の1人の町長の発案を契機として、地方6団体の1つである全国町村会が結成されている」と述べています。
 また、「わが国の地方財政制度に関わる政策課題の大半は、地方財政計画の歳出の見積もりが妥当なものか、個々の自治体に適切に配分されているのか、その結果として、団体間の税収格差をどの程度是正し、残る格差をどの行政分野でどの程度許容するかなのである」としています。
 さらに、地方交付税の機能として、
(1)財源調整機能:地方公共団体間の財源の不均衡を調整する。
(2)財源保障機能:どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保証する。
の2点を挙げた上で、「2つの機能を切り離すのではなく、均てん化すべき財政需要の範囲をどこまでと考えると、財政調整制度の本質に迫ることができる」と述べています。
 第3講「地方交付税における需要算定の考え方」では、特に注意すべき点として、「基準財政需要額の算定は、配分のためにルールであるので、算定が簡素か複雑であるかは、個別自治体への配分には影響するが、地方交付税の総額決定には影響しないこと」だと述べ、「普通交付税算定の簡素化を求める声」の動機が総額の抑制にあるとすれば「あまり意味がない」と指摘しています。
 また、「基準財政収入額に含まれない地方税収(25%相当分)」である「留保財源」について、「財政需要として存在するものの、普通交付税の算定式で客観的に補足しきれない部分など、財政需要のうち基準財政需要額に算入されない部分である。また、それがあることで地方税収が増えると標準財政規模が増えることを通じて、税源涵養努力を促すなどの効果が期待されている」と述べています。
 第4講「地方交付税における収入算定の考え方」では、「軽減税率や超過税率を採用する場合、その部分を基準財政収入額の算定から除外しているのは、自治体の自主性や独立性を保証し、自主財源である地方税の税源涵養に対するインセンティブを地方交付税が削がないようにする意味がある」としています。
 また、「税源偏在を是正することは、地方税を中心とする地方財政制度の確立のために必要な条件となるが、富裕な団体からは自らの財源を圧縮されたとして強い反発が起きる。とりわけ、不況期には法人関係税収のウェイトが相対的に高い富裕な団体ほど税収の落ち込みが大きく、その一方で、地方交付税による税源保障効果が働かない不交付団体は、税収減のショックが交付団体のように緩和されない」と指摘しています。
 第6講「地方財政計画の歳出の内容」では、地方財政計画の役割として、
(1)国家財政・国民経済等との整合性の確保
(2)自治体が標準的な行政水準を確保できるよう地方財源を保障
(3)自治体の毎年度の財政運営の指針
の3点を挙げた上で、「地方財政計画は、国会の議決対象ではないが、閣議決定を受けている。かつ、その内容を反映して地方交付税の算定が行われ、毎年度の地方交付税の改正の中で、単位費用や補正係数の種類について議決を得て成立している」と述べています。
 また、予算編成時期に、「地方交付税など地方財源の確保をめぐって、財政当局である財務省と総務省との間で予算折衝が行われる」ことについて、「最終的に生じた財源不足を国と地方が折半して、国は地方交付税財源を加算(臨時財政加算)し、地方は臨時財政対債で埋めることから、折半ルールとも呼ばれる」と述べています。
 第8講「地方財政計画と地方交付税の関係」では2点を指摘しています。、地方財政計画と地方交付税の関係について、
(1)地方財政計画の歳出サイドではなく、歳入サイドで基準財政需要額が決定される。
(2)策基準財政需要額の総額を、地方財政計画の歳出の各項目に一定の考え方にそっては配分するのが、基準財政需要額の算定である。
の2つの考え方を挙げています。
 そして、「かつて、地方財政計画の規模が十分でなく、地方財源が十分に確保できなかった時代には、単独事業の規模は小さく、交際費の事業費補正等もごく限定的であった。そこでは、地方交付税は給与関係経費と補助事業の補助裏をかろうじて手当できたに過ぎなかった」と述べています。
 第10講「地方交付税の決定過程と算定の見直し」では、「交付税算定上、昼間流入人口等が補正に十分反映されていないなど、東京都の膨大な財政需要の実態を捉えきれているとは言えません」という東京都のコメントには、「注意が必要」だとして、「基準財政需要額の算定は、実際の財政需要にできるだけ近づけることが望ましいとはいえない」、「東京都特有の財政需要は、東京都特有の財源のなかでカバーすべきであり、基準財政需要額で補足すべき財政需要は他団体に共通する部分にとどめて問題がない。そこでも、留保財源分も含めて財政需要に対応するという考え方がキーとなる」と指摘しています。
 第12章「自治体がデフォルトしない理由」では、地方債の安全性を担保する柱として、
(1)地方債の元利償還に要する財源の確保
(2)早期是正措置としての起債許可制度
(3)自治体財政健全化法の施行(財政の早期健全化や財政の再生等の適用)
の3点を挙げ、「この3つの条件は、いずれも地方債の償還を可能とする枠組みを示している。しかし、デフォルトしそうになった時に国が肩代わりするなどの表現はない。そこで地方債には、いざとなれば、国が自治体に変わって肩代わりするというイメージを想起させるのか、『暗黙の政府保証』があるといわれることがある」が、「国が肩代わりするしくみはなく、暗黙の保証という表現も制度に忠実な解釈ではない」と述べています。
 第14章「地方財政へのよくある誤解」では、「地方税収が伸張して不交付団体が増えるなど、格差が拡大する状況になると、どちらかといえば交付団体は不利になる。不交付団体を増やすことを目指す際に、不交付団体水準超経費を除く地方財政計画を据え置いて地方税を拡充すれば、交付団体は影響を受けない。しかし、不交付団体が潤うことで、一種の『財源のロス』が生じるとみられることもある」と述べています。
 本書は、法令に全て書かれているにもかかわらず、何か「ヒミツ」であるかのように扱われている地方財政制度のしくみを解説した一冊です。

■ 個人的な視点から

 国が集めて地方が使うという日本の財政の仕組み上、国の財政と地方の財政は密接に関連しているわけで、地方が独立したりなどということは難しいわけですが、そのあたりのからくりを一番知っていそうな先生の本です。


■ どんな人にオススメ?

・国と地方の財政のからくりを知りたい人。


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