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2014年3月15日 (土)

男はなぜ暴力をふるうのか―進化から見たレイプ・殺人・戦争

■ 書籍情報

男はなぜ暴力をふるうのか―進化から見たレイプ・殺人・戦争   【男はなぜ暴力をふるうのか―進化から見たレイプ・殺人・戦争】(#2304)

  マイケル・P. ギグリエリ (著), 松浦 俊輔 (翻訳)
  価格: ¥ (税込)
  朝日新聞社(2002/10)

 本書は、「類人猿学者でヴェトナム戦争にも参加した兵士の経験もある著者による、男が(女に比べて圧倒的に)かくも暴力的であるという現実の進化論的起源を探る、野心的な試みの本」です。
 「はじめに」では、本書の目的は、「男の暴力の誘因が男の心にどれほど深く根付いているものか――そしてなぜその誘因がそこにあるのか――を、性格に解き明かすこと」だとしています。
 第1章「生まれつき悪いのか」では、「本書の基本的前提は、人間は、生物学的な視点、置かれた環境、双方によって理解可能」だと述べたうえで、「政治的に正当とはとうてい言えないが、性淘汰は、たとえどんな手段を使ってでも多くの子を残す雄の遺伝子に、有利に働く」として、
(1)色男戦略:雌に対する雄の魅力を増強する。
(2)マッチョ戦略:きわだった大きさ、強さ、早さ、武器、闘う気力、知性、ずるさ、戦略的判断力、さらには雄の親類と協力して共に闘う傾向までも強化していく。
の2つの戦略を取り上げています。
 そして、「男と女は生まれながらに、生物学的性(セックス)も社会的性(ジェンダー)――人間の心とアイデンティティの最も基本的な決定要素――も違うようにできているし、親の養育を通じて、あらゆる形態の繁殖競争で他の同性に勝てるように適応して、適切で競争力のある性別役割分担を文化から学ぶよう、本能ができてもいる。男の暴力は、この過程のなかで、氏、生物学的性、育ち、社会的性などによって形成される繁殖戦略として現れてくるのである」と述べています。
 第2章「人形遣い」では、「われわれがいくら自分たちは知性をもった生物であると思っていても、みな、やはり本能や感情、熱くなったり冷めたりする情熱、愛と憎しみ、恐れと友愛をもった生物――ジャングルの掟に従う生物である」と述べたうえで、「性的指向や性的な感情も含むセクシュアリティ(性的特質)が、視床下部の形態という明確に測定できる性差によって定められているらしい」と述べています。
 第3章「われわれはどんな生き物か」では、「人間であるためには、生き延び、資源を利用し、交尾し、他人に意思伝達するために行動を形成する重要な戦略としての文化――社会的に伝達される考え方――に依存した、自己認識のできる個体でなければならない」と述べています。
 そして、「大きな脳、暴力的ではあるが協力的な男の社会組織、DNAによる繁殖戦略の組み合わせが、人類の人類らしいところを必然的にしたのだ」と述べています。
 第4章「レイプ」では、「レイプ犯が自分の身が傷つくのを避けたがる願望の背景を見ると、彼らが本当に求めているものがよく理解できる」として、「犯人に直面した時、殺されたり、けがをさせられたりすることを第一に心配した被害者は、レイプを成功させてしまった」のに対し、「まずレイプされたくないと考えた場合はレイプを免れた」と述べ、「レイプ犯は普通、脅かしたり押さえつけたり、女性とセックスするために必要なだけの武器や暴力を使い、傷を負わせることよりも、セックスすることを強く求めている」と述べています。
 第5章「殺人」では、「ほとんどの殺人犯が、入手できる最高の武器を使い、さらに、その多くが殺人を意図してこうした武器を使用する。面白いことに、大半の殺人犯は、犠牲者となるはずの相手がこれと同じ武器を持っていることを恐れてもいる」と述べ、「殺人犯はしばしば、自分が負傷したり殺されたりする危険が高くなる場合は、殺人をやめるだけの合理性や冷静さを備えている(すなわち、非合理的に『かっとなって』殺人を犯すことはないのがふつうである)」としています。
 そして、「なぜ男が女よりもはるかに殺人を犯すことが多いのか」について、殺人は、
(1)繁殖に有利になる個人的利益を拡大するため
(2)すでに獲得した大きな利益を保持するため
に、「男を殺しへ駆り立てるように設計されて、性淘汰によって男の心根の中にコード化されて備わっている本能である」と述べています。
 第6章「戦争」では、「戦争は、まさに、男たちの繁殖のための、のるかそるかの賭けである戦争という生命を左右する危険に見合う、一番価値のある目的は、女たちであり、あるいは、より多くの女たちとその子孫を惹きつけたり、支えたりできる資源である」と述べています。
 第7章「誰? 俺のことか?」では、アメリカにおける男の暴力を防止する方法として、「圧倒的大多数のアメリカ市民一人ひとりが、まとまって強調すると決め、現在は取られていない2つの対策を取ること」だとして、
(1)大人自らが攻撃的な暴力は間違いだと示しながら、すべての子供達に1歳の頃から、自分を抑え、規律を守り、自分で責任を取ることを教えること。
(2)凶悪な暴力――レイプ、殺人、侵略戦争、大量虐殺、テロ行為――を行っても「割にあわない」ばかりでなく、辛い刑が待つだけだという状況を、協力して作り出すこと。
の2点を挙げています。
 本書は、男の暴力の根源を求めた「意欲的」な一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書に流れている何とも同調しづらいマッチョ感には抵抗はあるのですが、これはこれで一つの世界の見方なのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・暴力を「悪」という言葉でそれ以上考えない人。


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