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2014年3月26日 (水)

人類が消えた世界

■ 書籍情報

人類が消えた世界   【人類が消えた世界】(#2312)

  アラン・ワイズマン (著), 鬼澤忍 (翻訳)
  価格: ¥2100 (税込)
  早川書房(2008/5/9)

 本書は、私たち人類が突如として消えてしまったら地球はどうなってしまうのかを想像したものです。
 第2章「崩壊する家」では、「人類が姿を消した翌日になると、自然が支配権を握り、ただちに家を片付けはじめる――それも、多くの家々を」と述べ、「かつては、最も耐久性があるとわかっていた物質、たとえば花崗岩の塊だけで建物を作っていた。その結果、花崗岩の建物は今なお人々の賞賛を得ている」が、「こんにちでは、粘土、砂、古代の貝殻のカルシウムで出来たペーストの3つを合わせたその混合物が固まって、人口の岩石になる。これがますます、都市型人類(ホモ・サピエンス・アーバヌス)にとって一番手頃な選択肢となっているのだ」としています。
 第3章「人類が消えた街」では、街から人間が消えれば、降水量が50ミリを超えると、「水浸しになった駅から駅へ駆けまわり、ある時はホースを階段の上まで引きずり上げて通り沿いの下水溝に排水し、ある時は地下トンネルをゴムボートで漕ぎ進むものはもういないのだ。人がいなくなれば、電気も来なくなる。ポンプは止まり、二度と動かない」と述べています。
 また、舗装道路についても、マンハッタンでは、「毎年3月、気温は摂氏零度前後を40回くらい行ったり来たりするのが普通」であるため、「凍結と融解が繰り返され、アスファルトやコンクリートにヒビが入る。雪が溶けると、出来たばかりの割れ目に水が染み込む。その水が凍って膨張すると、割れ目が拡がる」として、「あの壮大な都市景観の下に閉じ込められていた水の報復といったところだろう」と述べています。
 そして、「水位の上昇、潮の干満、塩による腐食のせいで、ニューヨークの5つの行政区を取り巻く人工の海岸線は、入江と小さな浜に姿を変えている。セントラル・パークの池や貯水場は、浚渫されないため湿地に生まれ変わった」と述べ、「500年後には、たとえ気候の温暖化が進んでいても、オークやブナのほか、トネリコのような湿気を好む種が繁茂しているはずだ」と述べています。
 第5章「消えた珍獣たち」では、北米大陸において、「約1万3000年前に始まる時間枠に爆発的な絶滅が起こっていた」ことについて、「約4万8000年前のオーストラリアを皮切りに、人間がそれぞれの新大陸に足を踏み入れたとき、遭遇する動物にとって、このチビで二本足の生き物が特に恐ろしい存在だと考える理由はどこにもなかった。考え直した時には手遅れだった」と述べています。
 第6章「アフリカのパラドクス」では、「人類の発祥の地がアフリカだとすれば、ゾウ、キリン、サイ、カバは、いったいなぜアフリカで生き残っているのだろうか」という疑問について、「アフリカでは人間と巨大動物類が歩調を合わせて進化したというところにある。アメリカ、オーストラリア、ポリネシア、カリブの疑うことを知らない草食動物は、人間が不意に現れたとき、それがいかに危険な存在かにまったく気づかなかった。一方アフリカの動物は、人間の姿が増えるのに合わせて適応する機会があった」と述べています。
 第9章「プラスチックは永遠なり」では、「海中のプラスチックは量が増えただけでなく、ますます小さくなり、地球をめぐる海流に乗れるほどの細片になっていた」として、「岸にぶつかる波や潮流によって岩が砂になるような緩慢で機会的な作用が、今やプラスチックにも働いている」と同時に、「どのプラスチックも生分解しそうな兆候は全くなかった。たとえ、どんなに小さな破片になっても」と述べています。
 第11章「農地が消えた世界」では、「未来の植物は、人類のまき散らした金属」とPOP(残留性有機汚染物質)を「今後数千年にわたって循環させ続ける。そのため、そうした物質に耐性のある植物はそれとわかるだろうし、土壌中の金属の味に慣れる植物もあるだろう」が、「それ以外は、鉛、セレン、水銀などに中毒して、人間と同じように命を落とすだろう」と述べています。
 第15章「放射能を帯びた遺産」では、「原子核から放出されるガンマ線に比べれば、きわめて低エネルギーの電磁波」である紫外線が、「突如として、地球に生命が誕生して以来前例がないレベルで存在するようになった。そのレベルはいまだに上昇をつづけている。向こう半世紀で修正できる望みはあるものの、人間が折悪しく消えてしまえば、紫外線が増大した状態ははるかに長くつづくかもしれない」と述べています。
 また、「地球上のあらゆる人間が消えれば、複数の原子炉を有する数カ所の発電所も含め、441ヶ所の原子力発電所はしばらく自動運転するものの、次々とオーバーヒートするだろう。一つの原子炉が停止してもほかの原子炉は運転を続けられるよう、燃料補給のスケジュールは通常ずらされているため、おそらく半分が燃焼し、残り半分が溶融する。どちらにしても、大気中や近隣の水域に膨大な量の放射線が拡散して長期間残存することになる。残存期間は濃縮ウランの場合、地質年代的な長さに及ぶ」と述べています。
 最終章「私たちの地球、私たちの魂」では、「目下まだこの地球で暮らしている私たちにとってもっと重大なのは、科学者の言う一番最近の大絶滅を私たち人類が生き残れるか、いや生き残るだけでなく他の生物も死滅させることなく共存させられるかどうかだ」と述べています。
 本書は、人類が地球に与えている負荷の大きさを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 人類がいきなり全部いなくなることは考えにくいですが、戦争や疫病で半分になったり10分の1になったりすることは十分ありえることです。
 そんななかでこれまでと同じ社会を維持できるのか、原発を始めとするテクノロジーを管理できるのかということはちゃんとしたシミュレーションを見てみたいものです。北斗の拳とかマッドマックスとかありますが。


■ どんな人にオススメ?

・私たちの社会がこれからも続くと思っている人。


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