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2014年3月24日 (月)

虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

■ 書籍情報

虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか   【虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか】(#2310)

  リチャード ドーキンス (著), 福岡 伸一 (翻訳)
  価格: ¥2520 (税込)
  早川書房(2001/03)

 本書は、詩人キーツが、「虹を物理学的に解体し、光のスペクトルとして説明してしまったことによって、虹の詩的側面を残ってしまった」としてニュートンを嫌っていたことに対し、「虹を解体したことによって得られた新しい世界観によってこそ、この地球、この宇宙に対する“センス・オブ・ワンダー”が換気されるのであり、それが本当の『詩性』の源となるべきもの」だと主張しているものです。
 序文では、「超自然現象を信じる心性というのは、詩的な畏敬の念(センス・オブ・ワンダー)が本来内包する感覚を踏みにじるものだといえるだろう。本当の科学がもたらすべきものはこの詩的な畏敬の念(センス・オブ・ワンダー)である」と述べています。
 第1章「日常性に埋没した感性」では、「しばしば狭量な評論家が質問する――科学の役割とはいったい何か」という質問について、同じ質問を受けたマイケル・ファラデーが、「では、生まれたばかりの赤ん坊はいったい何に役だっていますか」と質問し返したという「誰が書いたのかはっきりしない」逸話を紹介しています。
 第2章「客間にさまよいいった場違いな人間」では、「詩人は科学がもたらすインスピレーションにもっと耳を傾けるべきであり、同時に科学者は、詩的なものにより近づくべきである」と述べ、「科学は詩の的であり、無味乾燥、温かみがなく、そこには若き詩人が求めるべきものは何もないとされた」ことが「本当はまったく正反対である」ことを主張することが本書の目的だと述べています。
 第5章「法の世界のバーコード」では、「アメリカの弁護士たちが陪審員候補者を忌避する」理由が、「その人物が十分な科学的教育を受けているから、あるいは、遺伝学の知識を有する、もしくは、確率の考え方を知っているから」であることについて、「正義が行われることよりも、自分が勝利することだけが目的の弁護士」だと批判しています。
 第6章「夢のような空想に ひたすら心を奪われ」では、「占星術は美に対する侮辱である。そのコペルニクス以前に逆行したようなお遊びは天文学を貶めてしまう。まるでベートーヴェンをやかましいCMに使うようなものだ。また占星術は心理学の知見や、人間の性格を踏みにじる」と指摘しています。
 第7章「神秘の解体」では、「本来偶然にすぎないのに、なにか関係があるように見える事象の集合(Population of Events That Would Have Appeared Coincidental)」を意味する「ペトワック(PETWHAC)」という造語を作り、「私たちは、事実はどうであれ、偶然の一致にはなんらかの意味があり、ある種のパターンにそってそれが起こると思いがちである」と述べ、「今日、特に新聞やラジオ、その他の大量報道手段のおかげで私たちの情報収集範囲は広い」にもかかわらず、「人間の脳は自然淘汰によって、小集落の状況下で適応したままである。私たちは脳の設定値がまちがっているので、大したことではない偶然の一致にでも驚いてしまうのである」と述べています。
 第8章「ロマンに満ちた巨大な空虚」では、「量子の不確実性理論やカオス理論が大衆文化に嘆かわしい影響力を振るっている昨今、真にそれらを追求している者はとても苦々しく思っているのが現状である。量子やカオスを持ち出すのは決まって、科学を乱用したり科学の不思議を挑発したりしたがる人たちだ。それは、プロのいかさま師から、気違いじみたニューエイジ信仰者までさまざまである」と嘆いています。
 また、「カンブリア紀の大爆発」という印象的な言い回しが、
(1)カンブリア紀以前、5億年より少し前まではほとんど化石が出ないという事実に基づいた推察について述べているのだと考えられる。
(2)すべての門がたった1000万年の短い期間であるカンブリア紀の間に分岐・発生したという理論である。
の2つの意味で使われるとしたうえで、「たしかにカンブリア紀以前には、多くの門でその化石はまったく見つかっていない」が、「化石化しなかった祖先が存在したに違いなく、化石がないからといって、その動物に祖先がいないということにはならないのである」と述べています。
 第9章「利己的な協力者」では、「『ガイア』という夢のような空想の中では、全世界はひとつの生命体であり、それぞれの種は全体の利益のためにわずかながらの貢献を行っていて、たとえば最近はすべての生命のためを思って大気中の気体の含有量を改善するために働いているらしい」と述べたうえで、その提唱者であるジェームズ・ラブロック自身も、「自説のあまりに極端な受け取り方をしている人々」に当惑しており、「ガイアは既にカルトとなり、ひとつの宗教にもなりそうな勢いだ」と述べています。
 第10章「遺伝子版死者の書」では、「一つの種というのはいわば、経験を蓄積する一つのコンピュータである。それは、何世代にもわたって、種の祖先が生活し繁殖を繰り返してきた世界の統計学的記録からなる。その記録は、DNAの言葉で書かれるが、どれか一つの個体のDNA中にあるというのではなく、全体としての種のDNA中にある。これが私のいう“利己的な協力者”としてのDNAである」と述べています。
 第12章「脳のなかの風船」では、「人間の脳の進化を考えるとき、われわれはなにか爆発的なものを必要とする。それは、クモを擬態するハエではなくむしろ、原子爆弾の連鎖反応やフウチョウの尾の進化に似た、自己増殖的なものである」としたうえで、この考え方が、「チンパンジーと同じ大きさの脳を持ったアフリカの類人猿仲間たちの中でなぜある者が、明らかな理由もないのに、突然他のものを出し抜いて先頭に立ったのか」という謎を説明してくれそうだからだと述べています。
 本書は、科学が世界を解き明かしていく先にあるものを考えようとする一冊です。


■ 個人的な視点から

 センス・オブ・ワンダーこそ人類にとって一番大事なものなのかもしれないですが、いつの頃からか理系と文系に分かれてお互いに無関心になったのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・自分は理系or文系と決めつけてしまっている人。


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