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2014年3月 4日 (火)

ウナギの博物誌: 謎多き生物の生態から文化まで

■ 書籍情報

ウナギの博物誌: 謎多き生物の生態から文化まで   【ウナギの博物誌: 謎多き生物の生態から文化まで】(#2295)

  黒木 真理
  価格: ¥1,890 (税込)
  化学同人(2012/11/2)

 本書は、「私たちがウナギとどのようにつきあってきたか、今日までのウナギと人の長く深いつながりについて、さまざまな切り口から見て」いるものです。
 序章「ウナギ博物学のすすめ」では、「日本国内において、ひとつの魚種のみを取り扱って営んでいる料理屋がこれほど多く、かつ伝統的に引き継がれているのは、おそらくこのウナギの蒲焼屋だけ」だと述べています。
 第1章「ウナギの故郷を求めて」では、2009年5月22日、新月の2日前の未明に、西マリアナ海嶺南端部の海山域でニホンウナギの受精卵を31個採取することに成功したことについて、「親ウナギが産卵海域に形成される塩分フロントを目安に産卵地点を決めるというフロント仮説を立証する発見」になったと述べています。
 そして、ウナギの産卵場調査の歴史を、「より小さいレプトセファルスを探し求めて、ついに卵にたどり着いた100年」だと述べています。
 第2章「大回遊の立役者、レプトセファルス」では、「小さな頭(=大きな体)と前傾する牙状歯を持つレプトセファルスの特異な形態について、
・鰓は未発達だから頭は小さくてよい
・平たくて大きな体は沈みにくくするためと体表からの酸素摂取を有利にするためで、皮膚呼吸は鰓でのガス交換より低コスト
・未分化な血球しか持たないので循環系コストも低い
・生きた組織は体表面に薄く分布しているので体の中心部に酸素を送る必要がない
・体中心部のゼラチン様物質(ムコ多糖類)は体の比重を軽くしている
と述べています。
 第4章「汽水域に生息するウナギと人」では、「ウナギは塩分の吸収・排出機能を調節することによって、淡水にも、汽水にも、海水にも生息することが可能であり、沿岸域から河川の上流域まで、幅広い範囲を生息域として利用」していると述べています。
 そして、「ウナギは一度に一種類の餌のみを食べる傾向が強い」としたうえで、淡水域の頭の幅の広い「カニクイ」と、汽水域の頭の小さい「クチボソ」と形が異なり理由として、「カニクイよりもクチボソのほうが美味しいという認識は、江戸時代以降、現代にまで引き継がれている」と述べ、「ウナギは頭の長さに対して、頭の幅のほうが早く成長し、年齢を重ねるに従って、頭の幅が太くなって」いき、「淡水域のウナギは高齢で頭が大きく、汽水域のウナギは若齢で頭が小さい」と述べています。
 第5章「ウナギ もうひとつの旅路」では、「世界と日本のウナギの消費量は、1980年代初めから90年代後半にかけての15年ほどの間に、ほぼ2倍に増加して」いる理由として、「台湾で日本向のウナギの養殖事業が本格化し、輸入物の活鰻や加工品が急増したこと」や、「中国の業者が、日本で試みられてうまくいかなかったヨーロッパウナギやアメリカウナギの養殖技術の確立に成功し、大量の外来種のウナギが日本の市場に流入してきた」を挙げています。
 そして、「厳密な資源管理と持続可能な利用が求められる時代に突入した以上、ウナギ消費の姿も大きな変更を迫られること」になったとして、「『薄利多売』を基礎としたウナギビジネスモデルの転換が業界にとっても、私たち一般の消費者にとっても喫緊の課題」だと述べています。
 第7章「カムバック・イール:鰻川計画」では、冬しか接岸しないと言われてきたシラスウナギが6月に接岸していることについて、「もしかしたら、漁期の後で接岸した群が河川で成長して産卵することで、ニホンウナギの個体群は支えられているのかもしれません」と述べています。
 第8章「江戸の文化に息づく鰻」では、江戸時代には「江戸前」という言葉は、「江戸の前面の海川で採れた魚」という意味であり、その代表格は鰻だったとして、なかでも、神田川や深川で取れる鰻は上質とされていたと述べています。
 第9章「蒲焼き誕生の秘密」では、元々の鰻の蒲焼きは、ぶつ切りの鰻を駆使に刺して焼いたものでそのかたちが「蒲の穂」に似ていることから「蒲焼き」と名付けられたという説を紹介したうえで、割いて開く蒲焼きが江戸に広まったのは江戸中期以降ではないかと述べています。
 本書は、日本人に愛されるウナギを様々な面から見た一冊です。


■ 個人的な視点から

 いっときスーパーで安いうなぎが出回った時にはウナトロそうめんにして食べたりしましたが、最近はスーパーでもそれなりのお値段がするようになりました。このくらいの値段で十分なんじゃないかとも思います。


■ どんな人にオススメ?

・鰻ってやっぱり贅沢だよなと思う人。


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