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2014年3月17日 (月)

あくびはどうして伝染するのか 人間のおかしな行動を科学する

■ 書籍情報

あくびはどうして伝染するのか 人間のおかしな行動を科学する   【あくびはどうして伝染するのか 人間のおかしな行動を科学する】(#2305)

  ロバート・R・プロヴァイン
  価格: ¥2520 (税込)
  青土社(2013/10/24)

 本書は、「これまで過小評価されていたが、実は有益な情報に富み、時に恥ずべき人間の行動を分析し、さらに賞賛するもの」です。
 著者は、「生き物は生物学的に見て決まり文句のコレクションのようなものだ。だから私たちは一つの生物を理解するために別の生物を用いることができる。このことが比較分析の理論的な基礎になっている」と述べています。
 そして、本書が扱う「スモール・サイエンス」について、「途方も無い道具や莫大な予算を必要としないから『スモール』なのであって、とるに足らないからではない」としています。
 第1章「あくび」では、「あくびは非常に影響力が強いため、それを考えるだけでもあくびが引き起こされる」としたうえで、「あくびは人から人への行動の連鎖として拡がる。この何も考えないつながりにはもっとも原始的な種類の社会的行動が関係している」と述べ、「神経科学者たちは模倣、直感、共感、言語、心の理論(他の人々も自分と同じような心を持つという認識)などを含む多くの行動にミラーニューロンの役割を置き、『壊れたミラー』が自閉症の社会的欠陥に関与する可能性を示唆する」としています。
 そして、「血液中あるいは脳において二酸化炭素濃度が高くなる、あるいは酸素が欠乏するとあくびが出るという伝統的だが裏付けのない議事事実は頻繁に繰り返されているうちにやがて一人歩きするようになり、今でも一般メディアや医科大学の講義で取り上げられている」が、「呼吸とあくびにはどちらも呼吸活動が関係して神経的運動プログラムによって生じるが、そのプログラムはそれぞれ別のもので、別々の調節が可能だ」と述べています。
 著者は、「あくびとそれに関連する伸びは私たちの生理機能を刺激してこれらの移行を促進する大規模な神経と筋肉の、そして呼吸の動作だ。人間では、これらの変化が伝染して集団に及ぶ」と述べています。
 第2章「笑うこと」では、「笑い(不随意的行為)に要する反応時間が『ハハハ』と発生する(自発的行為)よりも長いことは、笑いが話すのではないこと、そして異なる神経行動的メカニズムが関係していることを表す」としたうえで、「人間の笑いの進化における最初のステップは身体的な遊びに伴うハアハアというあえぎ声だ。次にこの音の儀式化が起こり、その中でそれを生み出した動作の音声のシンボルとしてあえぎ声が出現した。それに続いてもとのあえぎ声の人間的抽象化であるハハハが生じる。儀式化された遊びの音声は『私は遊んでいるのであって、あなたを攻撃しているのではない』という信号だ」と述べています。
 第4章「感情的に流す涙」では「感情的な涙は人間独自の比較的新しい進化的革新で、その期限に関する新しい生物学的足跡を残してきた可能性がある」として、「人間の涙器系を涙を流さない類人猿の親戚たちのものと比較すること」により、「NGF(神経成長因子)」が関係した、「感情的な涙を流すようになった道筋が解明されるかもしれない」と述べたうえで、「NGFは涙に含まれる治癒物質であると共に、発達や進化する間に感情的涙に必要な神経回路の形成に中心的な役割を果たすニューロトロフィン神経栄養因子である可能性も考えられる」としています。
 第5章「白目」では、「美しさの基準は文化や歴史によって異なるが、若さと健康は必ずと言ってよいほど人気がある」として、「澄んで輝く瞳は健康と美を表す普遍的でごまかしにくいしるしになっている」と指摘しています。
 第7章「くしゃみ」では、成人の約4分の1が、「明るい光に反応してくしゃみをする傾向で、遺伝する」反射である「光くしゃみ反射」を起こすと述べています。
 第8章「しゃっくり」では、「しゃっくりは一生におけるどの時期よりも誕生前に頻繁に起こる」と述べたうえで、「しゃっくりは誕生後の人間の生命において、特に明らかな機能は持たない。しゃっくりの機能は一般的に発達的なものあるいは進化の痕跡と考えられており、出生前あるいは系統発生的太古の機能であろうことが推測される」と述べています。
 第10章「くすぐり」では、「自分をくすぐることはできない」という基本的な観察は、「社会的遊びの神経学的プログラム、自己と他者の神経学的計算、自閉症に考えられる欠陥、ロボットに人間性をプログラムして性能を向上させる方法に関する洞察へとつながる」と述べています。
 本書は、人間の体に起こる諸現象をまじめに考察した一冊です。


■ 個人的な視点から

 人間はあくびをしている人を見ている時だけでなく、あくびについて考えるだけでもあくびが出るらしいと書かれていたために、読んでいる間に何度となくあくびが出ました。決してつまらない本だということではありません。


■ どんな人にオススメ?

・人間が何で意味のない行動をするのかを知りたい人。


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