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2014年5月29日 (木)

OL誕生物語 タイピストたちの憂愁

■ 書籍情報

OL誕生物語 タイピストたちの憂愁   【OL誕生物語 タイピストたちの憂愁】(#2323)

  原 克
  価格: ¥2,052 (税込)
  講談社(2014/2/27)

 本書は、「『台所から、街頭へ!』を合言葉に、オフィスに登場した働く女性たち」の誕生と日常をたどったものです。
 著者は、「今日OLが直面している問題の多くは、実は1920年代すでにして、そのほとんどが発生している。雑務ばかり割り振られる、重要な仕事を任せられない、なかなか昇進させてもらえない、仕事への無理解から無理難題をしつけられる、オフィスの花でいるように求められる、美人ばかりがもてはやされる、同僚のファッションと比べられる、結婚を機に早期退職を迫られる、課長からセクハラを受けるなどなど。挙げてゆけば切りがない」と述べています。
 第1章「ラッシュアワーにも慣れました」では、「都市においては、それまであった村の伝統的な作法が通用しなくなり、代わって、これまでになかった都市の作法が生まれてきた」が、「こうした変化は、なるほど、社会の構造に関わる大がかりな話である。しかし、こうした『大いなる物語』は、人びとにとって見れば、日々の暮らしのあらゆる局面において生じる、ささやかな具体的できごととして体験されることになる」と述べています。
 そして、「和洋論争のなかでしばしば守旧派から持ちだされた根拠、すなわち『着物は日本の伝統である』という物言いは、正確性を欠いている」として、「正確にいえば、着物というのは、たとえば封建制度下などで、働く必要のなかった社会集団に固有の衣服だった。これである。したがって、着物に固執する論客が伝統と言挙げするとき、それは日本の歴史総体のことを指すのではなく、わけても近世以降の封建制度を構成していた世界観のことを懐古的に想念しているにすぎないのだ」と指摘した上で、「男性サラリーマンの場合には、仕事のもつ機能性からの要請に応じて、早くから、和装を捨て洋装に切り替えるという変化は遂行された。それに対して、女性の場合には、機能性の要請という点では男性と大差ないはずなのに、和装であり続けることが固陋に墨守されてきた。極端にいえば、多少働きにくかろうが、様相によって手に入れられる機能性などに比べれば、和装のままでいることのほうが、はるかに大切なものが得られ、守られる。あたかも、こういう判断がなされたかのようだ」と述べています。
 また、「働く女性が増えるにつれ、男たちは職業婦人を恐れた。なぜなら、家庭がお留守になることにより、中流階級の家族制度が崩壊するのをよしとしなかったからである。と同時に、専門技術を修養して男子に伍することにより、それまであった『男女間の職業上の区別も亦破壊せらるゝ』(「婦人の職業教育」『国民新聞』大正5年9月18日号)ことを恐怖したからである」と述べています。
 さらに、「社会通念あるいは市場原理としては、タイピストというのは同じ職業婦人のなかでも、一般の事務員などより高く評価されていたもののようだ」と述べています。
 第3章「課長、それは無理というものです」では、「タイプライターへの無理解の根底には、明治維新以来の近代日本における職業婦人そのものへの無理解が、かたくなに共鳴している」と述べています。
 第4章「残業デス、がんばるしかないわ」では、「女性の労働市場が再編成された」状況下で起こったこととして、
(1)労働市場の再編成にもかかわらず、それまでと同じように働き続ける女性たちが存在する。
(2)労働市場の再編成のおかげで、これまで働くことがなかった女性たちが、新たに職場を得て働き出す。いわゆる職業婦人たち。
(3)労働市場の再編成を目の当たりにして、それまでも働いていた女性及びその予備軍が、これまでであれば働くことになったであろう旧来の職場を捨てて、新しい職場に転身していく。
の3つのパターンを挙げ、「働く女性というのは古来から存在したが、職業婦人(ビジネスガール)というのは、1920年代あたらしく誕生した」と述べた上で、「少なくとも1920年代中葉、職業婦人という場合、労働者階級出身の働く女性は含まれない。労働者階級あるいは無産階級の子女たちは、昔も今も変わらずに働き続けているのだ。それに対して、中流階級の子女というのは、今でこそ職業婦人と称して労働するようになったが、かつてはその必要性に迫られることが基本的になかった人びとの謂である」と述べています。
 そして、「職業婦人を語る際に欠かせないポイント」として、
(1)職業婦人とは中流階級出身の者のことをいう。
(2)職業婦人とは何がしかの知識・技能を修養した者のことをいう。
(3)職業婦人とは男性社員のライバルと目されうる者のことをいう。
の3点を挙げ、「こうした一切合切を一身にまとって登場したのが、1920年代の職業婦人だった」と述べています。
 また、「1920年代以前、職に就こうとする女性は『何処かに欠点がある人』とみなされていた。これが当時の社会通念であった。なぜなら、女性というのは就職するまでもなく、家庭にとどまり、一家を運営してゆくのが社会的責務だと考えられていたからだ」と述べています。
 本書は、20世紀型女性知的労働者の苦悩の始まりを追った一冊です。


■ 個人的な視点から

 小学生の時に日本語タイプライターを見たことがありますが、文字がずらっと並んでいてかなり大きかったような気がします。当時は学校のプリントは「ガリ版」と呼ばれる謄写版で作っていました。その後、コピー機が普及する前にはリソグラフが使われていた気がします。事前に紙をよくさばいておかないとうまく印刷できなかったのを思い出します。


■ どんな人にオススメ?

・いつの時代もOLがは大変だと思う人。


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