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2014年6月 2日 (月)

[図解]鉄道の技術

■ 書籍情報

[図解]鉄道の技術   【[図解]鉄道の技術】(#2325)

  秋山 芳弘
  価格: ¥1,058 (税込)
  PHP研究所(2013/3/20)

 本書は、「大量・高速輸送が可能で、環境負荷とエネルギー消費が少ない」という特性から、世界中で再び脚光を浴びている鉄道技術について解説しているものです。
 第1章「国内外の高速鉄道最新事情」では、「営業運転におけるスピードアップの成否は、『ハイスピードが出せるか』ではなく、『スピードアップしても問題が生じないか』で決まる」と述べています。
 そして、「日本の新幹線の成功は、モータリゼーションが進むなか世界的に斜陽化の流れにあった鉄道に復権のきっかけをつくり、その鍵が高速化にあることを示してくれた」と述べています。
 第2章「高速走行を実現する技術」では、「東海道新幹線の建設にあたっては、それまでの路線とは完全に独立した新しいものをつくることになったっため、在来の鉄道で適用されてきた様々な条件にとらわれずに、高速運転に最適なシステムを目指して規格が決められていった」として、「鉄道の大枠に関わる企画は、一度決めるとなかなか変更が難しく、それでも変える場合は多大な労力と費用を要する」と述べています。
 そして、「結果として在来線とはまったく別の路線とすることで、それまでの企画を採用したために生じる制約の影響が少なくすみ、思い切ったシステム設計が可能になったのが今日の新幹線の進化につながっている」と述べています。
 そして、「半導体技術の急速な進化は、直流電動機に比べてブラシなどの消耗品がなくメンテナンスが容易、高出力でも小型化でき、製造コストや消費電力も少ないといった利点がある交流電動機を鉄道車両に用いる道を開いた。交流電動機の回転数や出力を連続的に制御するためには周波数を変換する必要があり、従来はその方法がなかったために使えなかったが、高速で大容量の半導体素子が実用化されたことにより電圧と周波数を連続的に変化させる『VVVF(Variable Vaoltage Varriable Frequency :可変電圧可変周波数』ができるようになった」と述べています。
 また、新幹線の先頭形状の開発に、「かつて海軍で戦闘機の設計をしていた技術者も加わっていたが、複数の車両を連結した状態で設置しながら高速走行するという、航空機と異なる条件下での最適な形状を求めて試行錯誤が続いた」と述べた上で、「日本の新幹線の先頭車両が複雑な形状をしているのは、『速度を上げるために空気抵抗を少なくする』のが主目的なのではなく、『速度を上げることで増大する微気圧波の影響を最小限に抑え、なおかつその長さをできるだけ短くする』ためのものだ」と述べています。
 さらに、「車両自体を傾けること」で「カント不足分を補い、発生する遠心力を打ち消して曲線通過速度の制限を緩和する」技術である「振り子式車両」について、N700系で採用された「車体傾斜システム」では、「遠心力で斜体を傾けるのではなく、空気バネを調節して走行中の車両を強制的に約1度傾斜させるもの」だと述べています。
 第3章「安全性を支える技術」では、斜面災害について、
(1)鉄道管理用地外にある自然斜面などからの土砂流入や土石流、落石、岩盤崩壊などによる被害
(2)鉄道の施設自体が災害発生源となる盛土や切土の崩壊、線路流出による被害
に大別して解説しています。
 そして、1951年に起きた京浜東北線桜木町駅構内の列車火災事故において、「伝記の通じなくなった乗降部の自動扉は手動で開けることができず、側窓は中断が固定された3団窓で人が抜け出る隙間はなかった。連結面の扉は内開きで施錠されていて混乱した状況下では開けられず、乗客の多くは閉じ込められたままとなり、その結果106人もの死者を出す大惨事となった」反省から、「電車の側窓の2段窓化、非常用ドアコックの場所の明示、脱出路としての貫通路の整備、パンタグラフや屋根部分の絶縁強化、全金属製斜体や不燃材料の採用、防火塗料の塗布などの対策が講じられるようになった」と述べています。
 第5章「快適性を求める技術」では、「運転距離、走行時間が長くなるほど列車トイレの必要性は増していったが、その一方で当時のトイレは和式便器で、汚物は列車から垂れ流す『開放式』となっており、沿線に『黄害』を撒き散らす不衛生なものだった。かつての列車トイレに表示されていた『停車中は使用しないでください』との注意書きは、ホーム下に汚物がそのままの形で残るのを避けるためで、走行中に汚物が宙に舞い、沿線に降り注ぐのは許容していたという、現代ではにわかに信じがたい状況が、戦前、戦後を通じて長く続いていた」と述べています。
 本書は、安全で高速な鉄道を支える技術を教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 一時は日本全土をカバーしていた鉄道網もローカル線が大きく衰退し、鉄道はもはや時代遅れの技術になっているのかと思いきや、特に高速鉄道の分野では今も技術革新が進んでいるというのは、ある意味で「選択と集中」が進んだ結果なのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・鉄道は過去の技術だと思っている人。


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