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2014年6月13日 (金)

ヒッグス 宇宙の最果ての粒子

■ 書籍情報

ヒッグス 宇宙の最果ての粒子   【ヒッグス 宇宙の最果ての粒子】(#2332)

  ショーン・キャロル (著), 谷本 真幸 (翻訳)
  価格: ¥3,024 (税込)
  講談社(2013/10/2)

 本書は、「ヒッグスが決定的に重要な役割を果たす自然の究極の性質」を明らかにすることに人生を捧げた人々の物語です。
 ヒッグス粒子とは、「自然界の存在する基本粒子の一つだが、数多く存在しないうえに、非常に特別な種類の粒子」であり、現代素粒子物理学で知られている3つの粒子、
(1)電子やクォークなどの物質粒子。
(2)重力や電磁気力、核力といった自然界に存在する基本的な力を運ぶ粒子。
(3)それ自体が固有のカテゴリーをなし、空間を満たしている「ヒッグス場」と呼ばれる場から生まれ、普通の物質の力学で積極的な役割を果たすわけではないが、背景にそれが存在するということが決定的に重要な粒子。
の3番目のタイプのものだと述べられています。
 第1章「素粒子を探求する理由」では、「素粒子物理学は、われわれの住む世界について知りたいという人間の好奇心が最も純真な形で現れた活動」であるとした上で、「人類がいまだかつて到達したことのない高エネルギーで粒子同士を衝突させる装置、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」の登場により、「理論によって予言されているがいまだ発見されていない新しい粒子の発見が期待されるだけでなく、予想されていない発見、サプライズも期待されている」と述べています。
 そして、ヒッグス粒子について、「この粒子がなければ、標準模型が記述する世界は非常に違った姿に見え、現実とは似ても似つかなかった」として、「ヒッグス粒子があってこそ、理論と現実が完全に一致する」と述べています。
 第2章「敬神に次ぐ」では、「われわれが空間内を運動するときは周囲をヒッグス場に囲まれ、ヒッグス場の中を運動している。魚が水に気付かないように、われわれもヒッグス場に気付かないが、ヒッグス場こそが標準模型にあるすべての奇妙な性質の原因なのである」と述べています。
 第3章「原子と素粒子」では、ヒッグスが持つ「重い粒子とほど強く相互作用する」という性質が、「LHCでヒッグスを研究する際に絶対的に重要となる」として、「ヒッグスはそれ自身重い粒子で、たとえ生成されてもすぐに別の粒子に崩壊し、直接見ることができない。しかし実験で生成されるヒッグスは、ある割合で例えばW粒子に崩壊し、別の割合でボトムクォークに崩壊し、また別の割合でタウ粒子に崩壊するなど、崩壊の仕方があらかじめわかって」おり、「すべての崩壊の仕方について、それぞれの発生頻度を正確に算出できる」と述べています。
 第4章「加速器の発展」では、「粒子加速器のアイデアは単純で、単に、粒子を非常に高速になるまで加速し、互いに衝突させ、何が起きるか詳細に観察する、というものだ」と述べた上で、「加速器は電磁気学の基本原理を応用して、電子や陽子などの荷電粒子を操っている。すなわち、電場を使って粒子の速度を増加させ、地場を使って、粒子の運動方向を正しく――例えばべバトロンやLHCなら円形チューブに沿う形に――保っている。電場と地場を使って粒子を精密にコントロールすることで、そうする以外には地上で決して実現し得なかった極端な常態を作り出しているのである」と述べています。
 第5章「史上最大の装置」では、「生成するのに莫大なエネルギーを要するヒッグス粒子のような粒子を探求することが価値のある研究だと信じるなら、それを行うにはビッグサイエンスしか選択肢はない」とした上で、「現在、選択の予知はLHC以外になく、その性能は、人類の英知と根気がどれほどのものなのかを証明している」としています。
 第6章「粒子をぶつけて何が分かるか?」では、「LHCで見つけようとしているのは、ヒッグス粒子が存在する『証拠』なのだ。その証拠というのは、『ヒッグス粒子が崩壊してできた別の粒子』によって与えられる。言わば、化石である」と述べています。
 第7章「波の中の粒子」では、「量子世界と古典世界の最大の違いは、実際に存在するものと実際に観測できるものの関係にある」として、「量子世界では、実際に見たり測定したりできるものは、実際にあるもののごく一部にすぎない」と述べた上で、「クォークでもレプトンでもない中性の非常に重い粒子であるヒッグス粒子は、極めて短時間で崩壊する。実際、あまりに早く崩壊するので、決して検出器で直接観測することはできない。これが発見が難しい理由の一つで、今回の成功が非常に素晴らしい理由でもある」としています。
 第8章「壊れた鏡に映して見た世界」では、「ヒッグス場は空気のようなもので、または、海の魚にとって水のようなものである。つまり、普段気づかないが、周囲のいたるところにあり、なければ生きていけない」と述べています。
 そして、「2012年現在、ヒッグスも発見されたと考えられている、しかし話はそれで終わりではない。むしろ、ヒッグスの発見は始まりに過ぎない。ヒッグスに関する理論はたしかにデータと合うが、さまざまな面でとってつけたような不自然さを感じる」として、「今や、単にモデルを提唱するだけでなく、モデルをデータと突き合わせることができるようになった。純粋に思考のみの力で作られた理論より優れた理論が考えだされてもおかしくないはずだ」と述べています。
 第9章「割れんばかりの拍手と喝采」では、「長年待望されていたヒッグス粒子の発見は、結局、誰の予想よりも早く成し遂げられた」とした上で、「ヒッグス粒子の存在を示す証拠」の発見に必要なステップについて、
(1)ヒッグス粒子を生成する。
(2)それが崩壊してできた粒子を検出する。
(3)検出された粒子が(別の粒子由来でなく)ヒッグス由来であることを確認する。
の3つのステップを挙げています。
 第12章「この地平線を超えて」では、「受け入れがたいことではあるが、銀河には観測できる物質よりはるかに多くの物質が存在し、しかも、観測できる星とは違って、観測できない物質は中心から離れた領域に多く分布している」というルービンとフォードが発見したこの驚くべき現象について、「今日、宇宙論の中心的問題の一つとして知られている。そう、暗黒物質である」と述べています。
 そして、暗黒物質の性質を明らかにする一つの有望な方法として、「原子核合成でやったのと同じ解析法を適用すること」を挙げ、「弱く相互作用する重い粒子(Weakly Interacting Massive Paraticles、WIMP)」を想定し、「このWIMPの存在量を計算し、それを実際の暗黒物質の量と比較すると、驚くべきことに両者は見事に一致する」として、「弱く相互作用する安定な粒子が消滅せずに現在の宇宙に残った量は、いとも簡単に、現在の暗黒物質を正しく説明するのだ」と述べています。
 さらに、「微視的世界にはまだ発見されていないことがたくさんあり、標準模型を超えた素粒子物理学には、多くの側面がある」として、「ヒッグスの発見は素粒子物理学の終わりではない。ヒッグスは標準模型の最後のピースだが、標準模型の先にある物理を見せてくれる窓でもある」と述べています。
 第13章「守る価値のある社会を作る」では、「本質的に、科学というのは驚異的(awesome)なものを探求する活動だ。文字通り、何か深遠な事実を初めて発見したときに感じる畏怖(awe)の念を追い求めている。そのような感情を人間は生まれつき持っている。ただ、成長し、日常の関心事が生活のほとんどを占めるようになると、往々にして失われてしまう。しかしヒッグス粒子の発見のような大きな出来事があると、誰の心にもあるこの子供のような好奇心が再び顔を出す」と述べてます。
 本書は、まだ見つかっていない世界の秘密への好奇心をかきたててくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 いつも新しい科学的発見があるたびに、残された未知の分野はもうわずかしかないんじゃないかという気持ちにさせられるのですが、まるで片付ければ片付けるほど終わらなくなる大掃除のように、新しい発見はさらに多くの謎を引き連れてくるようです。どうやら我々にとって「未知」が不足することは永遠にありそうにありません。


■ どんな人にオススメ?

・科学的発見に慣れっこになってしまっている人。


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