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2014年12月22日 (月)

女性の曲線美はなぜ生まれたか―進化論で読む女性の体

■ 書籍情報

女性の曲線美はなぜ生まれたか―進化論で読む女性の体   【女性の曲線美はなぜ生まれたか―進化論で読む女性の体】(#2344)

  D.P. バラシュ, J.E. リプトン
  価格: ¥3,024 (税込)
  白揚社(2013/6/15)

 本書は、「なぜ女性は現在の姿になったのか」、すなわち、「なぜ女性に月経があるのか、なぜ授乳中でなくても乳房があるのか、なぜ女性は排卵を隠し、オーガズムがあり、閉経があるのか」について、「なぜそうなのか」を解こうとするものです。
 第1章「科学における謎と『なぜなに物語』」では、本書において、「『思慮深く想像力豊かに説明を探し求める』という大切なことが、『非科学的な』作り話にまみれていると思われている状態から、救い出したい」と述べています。
 そして、「研究が直接的な因果関係による『至近メカニズム』に集中してしまう」ことについて、「もう一つの、やや遠回りだけれども同様に有効な方法」である、「遠因あるいは究極要因による『究極メカニズム』を探る方法」に注目するとして、「進化生物学者が『適応的な意味』と呼ぶもの」にも「『どうやって(how)』ではなく『なぜ(why)』を問う」と述べています。
 第2章「なぜ月経があるのだろう」では、「月経は人間独自のものとまでは言えないが、ほぼそれに近い」とした上で、1990年代はじめにマージー・プロフェットによって出された、「性交中に入りこむ病原菌を殺すために自然に備わった一種の消毒法で、そのおかげで女性は毎月『まっさらな状態で始められる』」とする「洗浄」仮説について、「『洗浄』仮説にのっとって考えれば、人類は他の種より、性交によって運ばれる病原体が多いか、感染しやすいということになりそうだ」と述べています。
 第3章「隠された排卵」では、「男女の利害は完全には一致しない。そのために興味深い可能性が生じる。排卵を隠すように進化してきた女性と、隠蔽を見抜いて実際に排卵する時期を見定めるよう強力な淘汰圧がかかっている男性との間で、共進化上の『軍拡競争』が生じるという可能性だ」と述べた上で、ハーディによる説明として、「自分の子供が子殺しに遭わない保険をかけようと、余分に別の雄達と性交しておく」ことで、「もし統治者が交代しても(実際によくあることだ)、新しいハーレムの主は昔の恋人の子どもを、情からではなく遺伝的自己中心主義から見逃してくれるかもしれない」と述べています。
 また、「望ましい遺伝子(と同時に、おそらく他の資源も)を密通相手の男性から手に入れながら、社会的パートナーと認められている男性から親としての援助も手に入れたのかもしれない」として、「それに成功しているなら、自分の生殖に対する支配権を手中に収めたことになるだろう」としています。
 第4章「女性にはなぜ乳房や曲線があるのか?」では、「ヒトの乳房は生物学上、正真正銘の謎」だとして、「乳を出さない大きな乳房が生物学的に実在している事自体が謎である。ヒト以外で授乳中でない雌に発達した乳房がある動物など聞いたことがない」と述べています。
 そして、「男性は全身に体脂肪が付いていることを示す寸胴の腰よりも、砂時計型に腰のくびれた女性の姿に興奮するのが常である」として、「男性は0.70というウェスト対ヒップの比率(WHR)を好み、それがバングラディシュでもブラジルでもブルックリンでも同じ、『文化を超えて世界的』な好みだった」と述べ、「妊娠していないときでも、おおむねエストロゲン濃度が高いと(正確には、テストステロンに対するエストロゲンの濃度比が高いと)臀部と胸が豊かになり、太鼓腹は妨げられる。したがって、WHRの値の低さは妊娠する可能性の高いホルモンバランス(アンドロゲンに対しエストロゲンの濃度比が高い)、つまり潜在的な生殖能力の高さを正直に示している」としています。
 さらに、「乳房はおそらく女性の『残存生殖価(RRV)』を正確に男性に知らせる信号である」とする「ゴルディロックス仮説」について、「未発達な乳房は明らかに性的に未熟なことを示しているし、垂れ下がった乳房は年齢を示している。もしそうなら、男性は比較的膨らんだ乳房、つまり性的成熟度に関してかなり正直な情報を与える乳房を好むだろう」と述べています。
 第5章「謎めいたオーガズム」では、「オーガズムのある女性がより多くの、あるいはよりよい赤ん坊を産むという証拠が何もない」にもかかわらず「なぜオーガズムは存在する」のかという問題について、「子殺しに対抗する保険という戦略」に関連して、「女性のオーガズムと、それを得るためには刺激し続けなければならないことが直接の引き金になって、複数の雄とのセックスが促され、結果的に最終的な見返りがもたらされるようになったのかもしれない」と述べ、「女性のオーガズムが捉えどころがないのは、それが痕跡的な副産物で気まぐれであてにならないからでは」なく、「もともと少なからず得難いものに設計されていて、簡単に起きないからこそ、起きた時に意味があるのだ。そしてその点が、紛れも無く適応的なのだろう」としています。
 第6章「閉経の不思議」では、「ヒトの女性は繁殖しなくなったあとも長生きする点で異例で、おそらく唯一の存在だろう」とした上で、「単なる偶然かもしれないが、女性が閉経を迎えるちょうどその時期に、末っ子自身が親になり始める」として、「この仮説によれば、女性が現在の時期に繁殖をやめるのは、そうすることで心置きなく愛情深いおばあさんになれるからで、高齢になるほど出産のマイナス面が増えるとすると、もう一度母親になろうとするより祖母の役を果たすほうが見返りが大きいのだ」と述べています。
 本書は、女性に関する謎を進化論の観点から読み解こうとする一冊です。


■ 個人的な視点から

 人間が他の動物にはない「特別」な特徴を持っているように見えても、生物である以上、同じメカニズムで進化してきたことには違いないということがよくわかります。


■ どんな人にオススメ?

・人間は他の動物とは違うと思う人。


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