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2015年2月

2015年2月 9日 (月)

ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント

■ 書籍情報

ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント   【ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント】(#2354)

  小島 卓弥
  価格: ¥3,024 (税込)
  学陽書房(2014/11/5)

 本書は、平成24年10月に出版された『公共施設が劇的に変わる ファシリティマネジメント』の続編として、「前作の後に着実に進んでいるファシリティマネジメントや公共施設快核に観する新たな取組について、事例を中心に構成している」ものです。
 著者は、「公共施設改革は政府・自治体における数多の行財政改革のなかでも最難関の一つである。実際に公共施設マネジメント白書の作成自治体数は着実に増加しているにもかかわらず、具体的な公共施設改革、特に統廃合などに寄る公共施設数の圧縮にはなかなか結びついていないことがそれを如実に示している」としながらも、「本書で紹介した多くの公共施設改革・ファシリティマネジメントの先進事例は、前作で紹介した事例とともに、まだまだ様々な可能性が秘められていることを示している」と述べています。
 序章「なぜ公共施設改革・ファシリティマネジメントが必要か」では、「住民の安全を確保するために、公共施設の安全性を高める取り組みを加速しなければならない」ことと、「大人口減少時代の到来を見込み、公共施設数の適正化を図らなければならない」ことという、「二律背反的な要素を公共施設改革に組み込むことが強く求められている」と述べています。
 第1章「公共施設白書の現状と課題」では、「いわゆるPDCAサイクルを回すことがFMの考え方の基本にある。FMとは、目標に則った管理を行うための、根拠に基づく科学的な手法である」とした上で、「FMを進める自治体にとってまず公共施設の現状を正確に知ることが、その出発点となる」として、「保有施設の現状を把握し、課題を明らかにし、市民に公開すること」を目的とする「公共施設白書」の作成が必要となると述べています。
 そして、「白書作成は目標ではなく、FMを進めるための家庭である。そこで止まってしまい、対策を行わなければ意味を成さないのである」と強調しています。
 第2章「公共施設マネジメント白書の概要と活用」では、「この『当然』の作業である『現況と将来の見通し』の作成には、膨大なエネルギーを割くことになる」として、「条例で管理運営の部署が決められ、縦割りの組織ごとに整備・維持管理されてきている」公共施設について、「全体像を把握することからはじめなければならない」と述べています。
 そして、白書が作成され、多くの関係者が、「この白書をもとに、地域住民や議会、町内各部局が、公共施設マネジメント、特に、施設数の削減と機能の強化について具体的な議論を始めることができる」と考えても、「なかなかその動きは始まらなかった」要因として、
(1)一つひとつの公共施設は、行政財産として「設置条例」による設置形態をとり、縦割り組織ごとの「財産」という位置づけが「法令」として確定してしまうこと。さらに、国の省庁ごとの補助金によって、その用途や施設形態までも決められてしまうこと。
(2)それぞれの施設には特定の利用者が存在し、その利便性を主張すること。
(3)機能統合に関する具体的なアイデアが共有されていないこと。
の3点を挙げ、それ以上に大きな要因として、「公共施設マネジメントは、財政問題であるという明確な認識が共有できていない点」を挙げています。
 第3章「白書作成・計画策定からまちづくりの本質へ」(習志野市)では、行政改革的視点を中心に進められてきた公共施設再生の取り組みにとって、「大きな気づきとなった市民の声」として、「対策として考えられている内容は理論としてはわかるが、実際に市民生活にどのような影響があるのか。将来のまちの姿、まちづくりの方向性と合わせて提示してほしい」という声を挙げています。
 そして、「公共施設再生の取り組みは、それぞれの自治体が取り組んできた、まちづくりの努力が花開く機会であり、先送りにしてきた課題が噴出する契機でもある」と述べています。
 第4章「兵庫県豊岡市の新庁舎建設」では、「ファシリティマネジメントを実施するには、まず現状を把握し、正しく評価することが重要である。その対象が建築であれ、オフィス環境であれ、現状把握によって最終的な目標を明確にし、そこに向けた最適解を探ることによって、施設はよりよいものとなるだろう」と述べています。
 第5章「オガールプロジェクトと新庁舎建設(岩手県紫波町)」では、「オガールプロジェクトは、手法や仕組みとしての公民連携が耳目を集めてきたが、このプロジェクトが目指しているのは、エリア全体を魅力的にしてその土地の価値を高めることである」と述べています。
 第6章「複合型庁舎・施設による建設コスト圧縮の可能性」では、複合型庁舎建設のメリットとして、
(1)土地の有効利用
(2)共有スペース/設備の共同利用による建設コストの圧縮
(3)地域の利便性や賑わいの創出
の3点を挙げています。
 第11章「『直営vs民間』の不毛な対立を超えて」では、「図書館の運営主体として『直営が望ましい』との主張が多いのは、いささか課題の検証が不足した観念的判断といえる」として、「公立図書館の使命は『知る自由の保障』(日本図書館協会による『図書館の自由に関する宣言』の主旨)としつつも、『無料貸本屋』とも揶揄されるような現在の運営実態をふまえて、時代の変化に対応した公立図書館の使命を、現実に即して徹底的に議論することが必要である。そして、その使命を実現するための最適解を見出す過程において、行政と民間との役割分担を検討しなければならない」と述べ、「直営か民間かという議論よりも、どのような質のサービスを効率的・効果的に提供するかという最適な組み合わせを考えればよい」としています。
 そして、武雄市立図書館について、「従来型の図書館運営を進めてきた『専門家、図書館職員、市民団体など』からは、この武雄市立図書館に対して、これまでの図書館のよさを壊した、図書館ではなく書店だ、などの様々な指摘がある。その一方で、これまで公立図書館をそれほど利用してこなかった市民や、『公共空間』の演出に注目した関係者からは、カフェを併設した快適な空間だ、図書館の概念を変えた、というような『賞賛』も相次いでいる」と述べています。
 そして、「本来、活発な議論は『溝を埋めるための作業』として有効であるが、武雄市図書館をめぐる議論は、溝を認識することに価値があると考えられる。なぜならば、我が国における公共図書館の一般的イメージは、半世紀もの間、ほとんど変わらずに『あり方』に関しての幅広い議論がなされなかったからである」と述べています。
 第12章「駐車場空き空間の『再生』」では、「市営住宅の空き駐車場は、そのままではいかなる価値も生み出さないどころか、不正駐車などの温床になり、管理者に大きな負担を強いる。しかし、この遊休地を民間事業者に貸し付け、コインパーキングやカーシェアリングを導入することにより、自治体にとっては収入増となり、入居者や住宅来訪者などにとっては利便性が向上し、事業者にとっては新たなビジネスチャンスとなる」と述べています。
 本書は、公共施設とは相性の悪そうな印象のある「ファシリティマネジメント」という手法が、公共施設改革の突破口になりうる可能性を示した一冊です。


■ 個人的な視点から

 民間・行政を問わず、改革ツールだけで改革が進むわけもなく、実行力を伴う必要があるわけですが、成果が目に見える形になってしまう分、動きを止めようという力も大きく働き、ファシリティマネジメントの実現には待ち構える難関が多そうです。


■ どんな人にオススメ?

・高度成長期に広げた風呂敷のたたみ方を模索している人。


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