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2015年4月24日 (金)

世界はなぜ月をめざすのか

■ 書籍情報

世界はなぜ月をめざすのか   【世界はなぜ月をめざすのか】(#2378)

  佐伯 和人
  価格: ¥994 (税込)
  講談社(2014/8/21)

 本書は、「いまや世界は『月探査ブーム』を迎えて」おり、「月は宇宙の入口であり、私たちはいま『宇宙大航海時代』の渚」にいるとして、「その『最初の寄港地』である月をどう探査・開発していくのか、日本がいまから行う決断が、今後100年、200年にもわたって、日本の宇宙での立ち位置を決める」と主張しているものです。
 序章「月探査のブーム、ふたたび到来!」では、「アポロ計画が終了してから20年あまり、月が探査されることはまったくありませんでした」が、「旧式は1994年に終わりを告げ、いま世界が打ち上げる月ロケットの数はどんどん増えてきて」いると述べています。
 そして、「現在は、月に行くことによる国威発揚の効果は薄くなって」いるが、「アポロ計画から50年経ち、科学も技術も大きく進歩」した結果、「現代の月探査はアポロ時代よりも、はるかに低コストで大きな成果を上げられるようになってきて」いると述べています。
 第1章「人類の次のフロンティアは月である」では、「月こそ次のフロンティアである」と考える理由として、月にはフロンティアの価値を高める、
(1)大きい:月は惑星に匹敵するほどの大きさを持っている。
(2)近い:光が1秒ほどで到達する距離にあり、常に同じ片面を地球に向けているため、つねに電波による通信を確立した状態を保てる。
(3)分化している:一度ドロドロのマグマに溶けて、核、マントル、知覚など異なる化学組成や物理的性質を持つブロックに別れている。
の3つの特色が揃っていることを挙げています。
 第2章「今夜の月が違って見えるはなし」では、「月に差し込む光の方向と、観測する方向が近いとき、極端に明るくなる現象」である「衝効果(しょうこうか)」が生じる理由として、「月面が、岩石が砕けてできた非常に細かな灰色の粉に覆われていることが深く関係して」いることを挙げています。
 第4章「これだけは知っておきたい『月科学の基礎知識』」では、月の地殻のほとんどを占めている、
(1)カンラン石
(2)斜長石
(3)輝石
(4)チタン鉄鉱
の4つを挙げた上で、これだけは知っておきたい岩石種として、
(1)斜長岩;月の明るい部分
(2)玄武岩:月野くらい部分
の2点を挙げています。
 そして、斜長岩地殻の存在を説明する必要から生まれた「マグマオーシャン(マグマの海)仮説」について解説しています。
 また、「現在、ジャイアントインパクト説は最も多くの研究者の支持を集めて」いるが、「天体衝突のコンピュータシミュレーションによると、最終的に月となる破片は、もっぱら衝突物である地球外天体の構造物になる」ことから、「ジャイアントインパクト説にも、まだよくわかっていないことがある」と述べています。
 第5章「『かぐや』があげた画期的な成果」では、「表と裏が違う構造をもつという月の二分性」について、「巨大衝突によってつくられたのでしょうか、それとも、マグマの水平移動によってつくられたのでしょうか。もしかしたら、両方が関わっているのかもしれませんし、あるいは裏の火山活動まで、すべてをすっきり説明する真実に、私たちが気づいていないだけかもしれません」と述べています。
 第6章「月の『資源』をどう利用するか」では「場所も立派な資源」だとして、「月世界では太陽光が最も有効なエネルギー源」であることから、「日の当たる時間が長い領域」である「高日照率領域」について、日照期間が80%以上ある地域は、たった5箇所しかなく、「それぞれ数百メートル四方くらいの広さしかない」上に、「地球と電波で直接交信できる月の表側に位置する地点は、たった2箇所しか」ないことから、まさに月の「特等地」だと述べています。
 第7章「『月以前』『月以後』のフロンティア」では、「現在のところ、プレートテクトニクスは地球に特有の現象」と考えられ、その理由として、「ジャイアントインパクトによる地球の内部構造の不均質化や、月による潮汐力など――つまりは月の存在が、もしかしたら関わっているのかもしれない」と述べています。
 第8章「今後の月科学の大発見を予想する」では、「ますます深まる月の謎の数々」を大別すると、
(1)月と地球の関係:月がどのようにして誕生したか。
(2)月の分化課程:月の原材料が球体としてまとまったあと、どのように核、マントル、地殻といった層構造に分離していったか。
(3)月をとりまく太陽系の状況:月ができてすぐの頃、すなわち太陽系ができた直後の太陽系の状況が知りたい。
の3つに分類できるとしています。
 本書は、よく知られているはずの月が、まだまだわからないことでいっぱいであることを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 人類にとって有史以前から最も身近な天体であった月についてはまだわからないことだらけのようです。


■ どんな人にオススメ?

・月についてもっと知りたい人。


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