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2015年4月17日 (金)

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか: 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来

■ 書籍情報

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか: 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来   【地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか: 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来】(#2371)

  宮原ひろ子
  価格: ¥1,728 (税込)
  化学同人(2014/8/21)

 本書は、「地球の複雑な気候変動や地球史上の未解決の大事件は、どこまで、地球の外=宇宙からの影響で解明できるの」かという問いに答えるため、「地球を取り巻く太陽圏環境やそれを支配する太陽の物理、そして太陽圏を取り巻く宇宙環境の変動の解明」に取り組んでいる「宇宙気候学」について解説しているものです。
 著者は、こうした「地球が宇宙とつながっていて宇宙からの影響を受けているという視点で地球の変動をとらえようとする試みが本格化したのは、ここ十数年のこと」だと述べています。
 第1章「変化する太陽」では、「太陽系の惑星や衛星に存在する物質がバラエティーに富んでいるのは、かつて重たい恒星が存在し、それが死んだときの大爆発で様々な元素がつくられ、そしてそれらが集まって太陽系ができたから」だとして、「宇宙における物質の成分の変化は、恒星の進化と密接に関係して」おり、「地球上に存在する生命ももちろん、恒星の進化によってつくり出された元素が材料となって」いると述べています。
 そして、「17世紀に黒点の観測が始まってすぐの頃、太陽物理学において現在でも解明されていない重大な出来事が起こっていた」として、「70年にわたって黒点が姿を消し」たという「マウンダー極小期」が起きたと述べています。
 また、「太陽フレアなどの太陽表面で起こる現象が宇宙空間を伝わってくることによって、地球周辺の宇宙環境のよし悪しが大きく変わる」ことを「宇宙天気」と呼ぶと述べ、「今後、宇宙利用がますます進んでいくと、社会活動や宇宙活動への宇宙天気の影響はどんどん大きなものへとなっていく」ことから、「あらかじめ被害を小さくできるような対策を立てられるよう、宇宙天気の予報を確立することが重要になって」くるとしています。
 第2章「太陽の真の姿を追う」では、「太陽系の惑星はどれも、太陽圏の磁場に浸かっている状態で、太陽フレアなどが起これば強い磁場の乱れの直撃を受けたりもしますが、一方で、その太陽圏の乱れが宇宙線を遮ってくれてもいて、太陽圏に守られている存在でもある」と述べています。
 そして、「太陽圏はどのようにして地球に飛んでくる宇宙線を遮るの」かについて、「宇宙線はほとんどが荷電粒子ですので磁力線にくるくると巻きつけながら太陽圏の中へ侵入してこようとしますが、太陽風は常に外側に向けて流れていますので、全体としては、入ってきた宇宙線をベルトコンベヤーのように外側へ押し戻すような力が働いて」おり、「エネルギーの高い宇宙線はさらに太陽圏の内側へと侵入して」くるが、その際に、
(1)ドリフト運動:隣り合う磁場に少しだけ強さの違いがあると、荷電粒子は知らず知らずのうちに横方向に移動していってしまう。
(2)メアンダリング運動:カレントシートの上下では、磁力線の向きが逆方向になっているので、荷電粒子は、カレントシートの上下のどちらにあっても、同じ方向に力を受けることになり、時計回りと反時計回りの半円を繰り返し描くような形で、一方向に移動していく。
の「ふたつの特徴的な運動が宇宙線に起こ」ると述べています。
 第3章「太陽活動と気候変動の関係性」では、「さまざまな要因によって生じる気候変動のうち、太陽の影響としてすでに一般的に受け入れられている説」として、「太陽と地球との距離は周期的に変化」しているという「天文学的な要因によって生じる気候の周期的変動」を指す「ミランコビッチ・サイクル」を挙げています。
 そして、「太陽と地球の距離が10万年周期でゆるやかに変わることによってもたらされているのが、氷期と間氷期のリズム」だとして、「9万年ほど氷期が続くと、1万年ほど間氷期が訪れる」という「氷期―間氷期サイクル」を挙げ、「興味深いことに、間氷期に比べて氷期の方が太陽活動の影響が気候変動によりはっきりと表れて」いると述べ、「このことは、太陽活動と気候変動との関係性について何らかの重要な示唆を与える可能性」があるとしています。
 第4章「宇宙はどのようにして地球に影響するのか」では、「現代においては、太陽磁場の反転の影響は、宇宙線の変動パターンが11年ごとにわずかに異なるという程度にしか影響しませんが、マウンダー極小期では宇宙線の22年変動(実際には太陽周期が伸びたために28年周期)の振幅が増幅していたことに」なるとして、「これは、黒点が消失し、太陽表面の磁場の乱れが極端に減ったことで、太陽圏の構造にも影響が出ていたことを意味します」外江bています。
 そして、「宇宙線がどうやら地球の気候に影響している可能性が高そうだということがわかってきて」いるが、「問題は、宇宙線はどうやって地球の気候に影響するのだろうか、という点」だと述べ、「これは未解明な非常に難しい問題ですが、少しずつ研究が進んでおり手がかりは得られつつ」あるとしています。
 第5章「変わるハビタブルゾーン」では、「宇宙気候学の進展によって、ひょっとしたら解けるかもしれない地球史上のパラドックス」として、「太陽の進化を考慮すると、若い太陽が放出していた光の量は、現在の7割程度にしか及ばない計算になってしまう」ため、「生命が誕生したとされる38億年前は、水が液体では存在できなかったという計算になってしまう矛盾して」しまうという「暗い太陽のパラドックス」を挙げ、このパラドックスを解く可能性として、
(1)温室効果ガスが現在よりも多くて、温室効果が強く効いていた。
(2)実は太陽は暗くなかったのかもしれない。
(3)地球の白さ(アルベド)が減少していたことで、より効率的に太陽光を地表で受け取っていた可能性。
の3点を挙げています。
 第6章「未来の太陽と地球」では、「もし太陽活動がこのまま低下を続けると、地球にはどのような影響が生じる」のか、という問題について、
(1)メリットとしては、太陽フレアによって生じる宇宙利用への障害や宇宙天気災害は少なくなるだろう。
(2)銀河宇宙線は長期的に線量が高い状態が続く。
などを挙げ、「今後太陽活動がさらに低下することがあれば、一時的ではありますがさまざまな影響が見られるだろうと考えられ」るが、「温室効果ガスの増加や都市化の影響など、人間活動との影響を切り分けるのは非常に難しい」と述べています。
 本書は、地球を取り巻く宇宙との関係から地球の気候変動を解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 ゴアさんの影響のせいか、気候変動という言葉に何か「起きてはならないこと」であるかのような反応を示す人がいますが、長い単位では地球の気候は変動しまくっているようです。


■ どんな人にオススメ?

・地球の変化を理解したい人。


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