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2015年4月21日 (火)

スケープゴーティング

■ 書籍情報

スケープゴーティング   【スケープゴーティング】(#2375)

  釘原 直樹 (編集)
  価格: ¥2,808 (税込)
  有斐閣(2014/12/17)

 本書は、「災害や事故で大きな被害が出たとき、あるいは不正行為や犯罪が明らかになったとき、マスメディアによる集中豪雨的な報道がなされることがある。そして往々にして、悪者探しが行われ、何が原因であるのかより、誰が悪いのかが追求される」ことについて、「人ば曖昧な状況やフラストレーションに長時間は耐え切れず、早急に責任者を選び罰することによって心の安寧を回復しようとする」行動である「スケープゴーティング」について、「発生条件や対象、心理メカニズム、ターゲットの変遷過程について明らかにする」ものです。
 序章「スケープゴーティングとは」では、スケープゴーティングの定義について、「何らかのネガティブな事象が発生、あるいは発生が予見されている」際に、
(1)事態発生や拡大・悪化に関する因果関係・責任主体が不明確な段階で、それをある対象(場合によっては因果関係の枠外にある対象)に帰属したり、その対象を非難したりする。
(2)責任帰属や非難が一定の集合的広がりをもって行われ、そのような認知や行為が共有化されるプロセスがある。
のような現象が生起する場合と定義しています。
 第1章「スケープゴーティングの心理」では、スケープゴーティングの動機に関する理論として、
(1)精神分析理論:自分の中にある邪悪な思考や感情を抑圧し、またそれを他者に投影することによって、解消しようとする無意識の試み。
(2)欲求不満攻撃理論:攻撃を内的衝動から引き起こされたものではなく、目標追求行動を妨害するような環境(外的条件)に対する反応として捉え、外的条件によって引き起こされた欲求不満はそれを引き起こした対象に攻撃を向けることによって解消される。
の2点を挙げた上で、「違いは欲求不満が内的な精神力動的葛藤から来るものか、あるいは目標追求行動が阻止されることに由来する外的原因から来るものかによる」が、両理論とも、
(1)欲求不満の原因に対する攻撃は禁止されている。
(2)攻撃は、報復の恐れがない他者に置き換えられる。
(3)スケープゴーティングのネガティブなステレオタイプは投影や合理化の結果生じる。
としています。
 また、「災害や事故が発生すると、メディアは一斉に悪者探しをする傾向がある」が、「探し当てた悪者が非難するに値しない場合、あるいはその悪者だけを非難しても欲求不満を解消できない場合、次のターゲットが必要になる。このようにして次々に非難対象が変遷することもある」と述べています。
 第2章「誰がスケープゴートになるのか」では、「出来事そのものより、その出来事を引き起こした人物の特性に関する情報が、その罪の評価に影響する」と述べています。
 第3章「スティグマ化と非難・責任追及」では、「風評被害は風評を前提とする点で、スティグマ化とは異なっているものと見えるが、人々の記憶に残りやすいということや経済的損害につながるという点に着目すると、風評被害はスティグマ化とほぼ同じ現象と理解できる」と述べています。
 第5章「事故報道のスケープゴーティング」では、「スケープゴーティング現象の拡大には、直接的な事故原因の報道だけではなく、このような間接的な原因や対象への非難が大きな役割を果たしていると考えられる。避難される対象数が拡大するのは、事故原因の追求とより広範囲の対象を攻撃することによるカタルシスという両方の機能を併せ持ったスケープゴーティング現象であると考えられる」と述べています。
 第6章「感染症報道でのスケープゴーティング」では、「事件や事故は、自然災害や天災よりも人為性の程度が高く、また事故や事件の報道では、事故・事件が生じた時点が報道のピークであるのに対して、自然災害や天災の場合には発生時点では情報が不明な点が多いために、報道のピークは時間的に後ろにずれると推測される」と述べています。
 第7章「東日本大震災報道でのスケープゴーティング」では、「不謹慎である」と避難されている行為として、
(1)情報発信に関するもの。「軽率な発言」も含まれる。
(2)非常時特有の行為。「被災地見学」や「買い占め」など。
(3)犯罪やそれに類する反社会的行為
(4)情報発信以外の日常的な行為
の4つを挙げています。
 第8章「帰属過程としてのスケープゴーティング」では、「仮想的有能感は、他者を軽視することで自己の有能感を感じるという、屈折した形での有能感である。自尊感情が低く、他者軽視を通した有能感を感じる程度も少ない人たちが、不適切行為者に対する非難、そして自己列車の運転士への原因、責任、非難の帰属が高いという結果であった」と述べています。
 そして、「有能感が低い、あるいは精神的健康が低い状態は、個人にとって心地よいものとはいえない。そうした、不快な状態にある人は、自己の周辺における不祥事に対する非難を強めたり、すでに死亡した事故の中心人物を責めたり、また、周辺的な不祥事を事故原因と結びつけたりすることで、自身の不快を解消しようとしているのかもしれない」と述べています。
 第9章「記憶バイアスとスケープゴーティング」では、「低頻度の出来事も特異性が高く、際立っていると認知されやすいために、利用可能性ヒューリスティックが使用される可能性が高い」として、「一般に、まれな出来事は頻繁に起きることよりも顕在化しやすく、想起が容易である」と述べています。
 本書は、スケープゴーティングが起こる仕組みを解きほぐした一冊です。


■ 個人的な視点から

 誰かを叩きたがる人っていうのはいるわけですが、有能感が低く鬱々としている人にとってネットというのは素晴らしいものであるに違いありません。


■ どんな人にオススメ?

・ネットで誰かを袋叩きにするのが好きな人。


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