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2015年4月25日 (土)

火薬のはなし

■ 書籍情報

火薬のはなし   【火薬のはなし】(#2379)

  松永 猛裕
  価格: ¥1,058 (税込)
  講談社(2014/8/21)

 本書は、「火薬という、普段ほとんど見ることのない化学物質をわかりやすく解説」する、「ミリタリー(軍事)技術にいっさい関わっていない人間が書いた、世界的にも珍しい火薬の本」です。
 第1章「火薬の原理」では、普通の化学物質と火薬の違いについて、「空気中の酸素を使わなくても燃えたり、爆発したりするのが火薬」であり、「酸素がなくても……」ということが火薬の一番の特徴だと述べています。
 そして、火薬の反応は基本的には、「空気中の酸素を使わない酸化反応」であり、特徴的な現象として、
(1)爆燃(deflagration)
(2)爆轟(爆ごう、detonation):火薬の燃焼の中で最も速い現象。
の2点を挙げています。
 また、「なぜ、車はニトログリセリンやTNTではなく、ガソリンで走るか?」と言う問いに対し、「空気中の酸素を使って燃やすのであれば、ガソリンやメタンガスはTNTよりも大きいエネルギーを出すことができ」、「燃焼が伝播する速度」が、TNTに比べてとても遅いことから、「安全に利用できる燃料」であると述べています。
 第2章「サイエンスの視点で見た火薬」では、「火薬」は英語では、「Energetic Materials」あるいは「High Energy Density Materials (HEDM)」というと述べています。
 そして、「火薬も単純に燃やすとか、爆発させるとかいう視点ではなく、『エネルギーを貯蔵する物質』と考えると、今後の注目度が増すに違いない」と述べています。
 また、「熱を発生させて高温を生み出すことを目的にしている火薬」である「テルミット(thermite)」について、「電力を使わずに簡単に熱を発生することができるのでいろいろな用途がある」として、鉄道レールを修復・接合する溶接技術を挙げ、「テルミット溶接の利点は、技術が簡単、電力が要らない、作業時間が短いなど」だとして、「まさにハンディな溶鉱炉だ」と述べています。
 さらに、「窒素が主成分のガスを発生させる火薬」である「ガス発生剤(gas generant)」に必要とされる性質として、
・少量の固体から多量の窒素を瞬時に発生できる。
・人体に悪い影響を与えない。
・やけどを避けるため、比較的低温のガスを発生させる。
・車内の温度が嵩くなることがAruga、変質しないこと。
・車の寿命(10年以上)程度では劣化しないこと。
などの点を挙げています。
 第3章「実用化されている火薬」では、黒色火薬の原料である硝酸カリウム(硝石)について、「日本では様々な流儀で、亜硝酸バクテリアを尿などの窒素分に作用させて硝酸カリウムを得ていた」と述べ、「世界遺産で知られる合掌造り集落は硝酸カリウム(当時は塩硝と呼ばれていた)を作る秘密工場だった」としています。
 また、「現在、発破現場で用いられている爆薬で最も多く用いられている」ものとして、「ANFO」について、「ammonium nirate(硝酸アンモニウムの英名) fuel(燃料) oil(油)の頭文字をとったネーミング」だと述べています。
 第4章「花火」では、花火の良さを評価するポイントとして、
(1)座り:できるだけ速度ゼロの最高点で開発(玉が割れること)しているか。
(2)盆:花火玉が開いた状態で、適正な大きさと均一に広がっていること。
(3)肩のはり:きれいに放射状に星が飛んでいるか。
(4)消え口:星の光が消える瞬間。一斉に消えることが良い。
の4点を挙げています。
 そして、花火の事故が現在でも多発している原因として、
(1)本質的に花火に使っている物質は、爆薬と比べても格段に爆発しやすい。
(2)花火製造業者は企業規模が小さいため、一般の科学会社ほどの安全管理はできていない。
(3)花火は一般の方が大勢集まるところで消費される。
の3点を挙げた上で、「花火は日本が世界に誇る文化であり、今後の発展を期するには、安全に取り扱うための技術革新とともに、伝統的な技術にとらわれることなく先端技術を積極的に導入することが必要である」と述べています。
 第5章「火薬のいろいろな使い方」では、「現在、自動車用の安全装置は、花火を除いてもっとも身近な火薬といえるだろう。エアバッグは火薬を使う、一番よく知られた安全装置である」と述べています。
 また、「2種類の金属を爆発力によって高速で衝突させ、金属同士を結合させる加工法」である「爆発圧接(explosive welding)」について、「物性(融点や熱膨張係数、硬度など)に大きな違いがある金属同士を、溶接などで接合するのは難しい」が、「爆発圧着を使えばそれが可能」になり、「材料同士が冷間(常温)で接着されるため、材料同士が熱で変化しないというメリットがある」と述べています。
 さらに、「痛みの王様(king of pain)」と呼ばれる尿路結石の痛みに関して、「結石破砕の技術は、体外から衝撃波を作用させて破砕する技術もあり、現在ではこちらが主流だ」が、「体内で発破する技術と考え方は原理的に変わらない。すなわち、結石は衝撃波で破壊される。また、衝撃波は水から臓器や筋肉に通りやすく、ほとんど体内に悪影響を与えない」と述べています。
 本書は、意外なところで身近に使われている火薬の性質を解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 火薬といえばヒラコーの『ドリフターズ』の中で信長が火薬大好きぶりを発揮していて楽しそうです。


■ どんな人にオススメ?

・火薬や爆発が好きな人(信長とか)。


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