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2015年4月27日 (月)

エボラvs人類 終わりなき戦い

■ 書籍情報

エボラvs人類 終わりなき戦い   【エボラvs人類 終わりなき戦い】(#2381)

  岡田 晴恵
  価格: ¥842 (税込)
  PHP研究所(2014/12/16)

 本書は、「これまでも中央アフリカ中心の風土病として数年おきに流行を起こしていた」エボラ出血熱が、2014年に、「その感染者数、犠牲者数ともにまさに桁違いであり、過去の例とは比較にならない規模」で流行したことについて、「これからを生きる若い人たちに、今後起こりうる感染症の流行を乗り切るすべを考え、身につけるきっかけとなってほしい」という思いで書かれたものです。
 第1章「2014年・世界が震えたアウトブレイク」では、「記録されている限りでは、今回のエボラ出血熱の最初の患者は、2013年12月6日に死亡した、ギニア南東部のゲケドゥという村に住む2歳の男児とミられている」とした上で、「年が明けた1月から3月にかけて、ギニア政府はエボラ出血熱が集団発生している事実を把握」したが、「ときすでに遅く、隣国のリベリア、シエラレオネにも感染者が広がり始めていた」と述べています。
 そして、「2014年10月時点で感染拡大がもっとも深刻な状況にあったリベリアでは、多数の医療従事者が感染してしまい、ほとんどの病院が閉鎖されるという危機的な自体に陥った。エボラ出血熱を発症しても治療を受けられず、隔離もされずに、流行の拡大が事実上の野放し状態となっていた」理由として、「1989年から2003年の14年間に渡った激しい内戦でGDP(国内総生産)の90%を失うなど、リベリアの交配した国内情勢が背景にあった」と述べています。
 また、「今後、懸念されるのは、中東やアジア諸国へのエボラウイルスの拡散である」として、「人口密度の高い混沌とした都市にこのウイルスが侵入すれば、その地で流行を起こすリスクが高まる。医療の整備状況によっては、その血での感染拡大も起こりかねない」と述べています。
 第2章「エボラ出血熱とはいかなる病気なのか」では、「エボラ出血熱とは、ラッサ熱、マールブルグ熱、クリミア・コンゴ出血熱とともに、ウイルス性出血熱と呼ばれる急性感染症の一種であり、エボラウルスの感染によって発症する」としたうえで、「体中から血を吹いて絶命するようなおどろおどろしいイメージをもつ人もいるようだが、実際に出血の症状が見られるのは全患者の70%で、重篤化した場合に限られる」と述べています。
 そして、「重篤化した患者の体液、血液には1mlあたり1億個以上ものエボラウイルスが含まれるので、かなり気をつけているつもりでも、ちょっと触れただけでウイルスを侵入させてしまう可能性がある。感染成立後のエボラウイルスの増殖力は非常に強く、数十個から数百個のウイルスが体内に侵入しただけでもエボラウイルスの増殖力は非常に強く、数十個から数百個のウイルスが体内に侵入しただけでも感染が成立するとされるため、1滴の体液は血液中に含まれる僅かなウイルス量でも感染成立のリスクが伴う」と述べています。
 第3章「人間界にエボラウイルスがやってきた日」では、「1975年6月、スーダン共和国南部のヌザーラという町で、初めてエボラ出血熱の患者が発生した」として、最初のエボラ出血熱の患者が発生したヌザーラの綿工場は、「トタン屋根の下には、夥しい数のコウモリが棲みついて、糞尿を垂れ流し、原綿は部屋中に微細な綿繊維を舞い上げていた」と述べています。
 そして、最初の死亡者から感染した3人のうちの1人である、酒場の経営者の男が、ヌザーラの近郊のマリディという町にある病院を受診し、「男性の体液や血液、排泄物や吐しゃ物に周囲の人間が接触するなどで、病院の関係者や他の入院患者にエボラウイルスの院内感染が起こった。この時、このとき、マリディを中心に病院関係者の3分の1が感染・発症し、うち41人が死亡した。エボラ出血熱は、重症である。最後には出血をともなって、患者の半分が死んでいく奇病の流行は、悪夢のようだった。まだ動ける患者や病院関係者らのほとんどは、病院から逃げ出した。後には、重症の患者だけが残り、もはや医療どころではなくなった。そして、この病院を起点として、エボラ出血熱が地域の村々に拡散してしまった」と述べています。
 また、「カメルーンで捕まえられたコウモリの血液中からは、エボラウイルスに対する抗体が見つかっている」上に、「カメルーンのジャングルに住むピグミー族の人々の15%は、エボラウイルスに対する抗体を持っていることも報告された」と述べています。
 さらに、「2014年のエボラ出血熱の流行においても、エボラ患者と接触した場合の例として、患者の看護、訪問、感染して死亡した者の埋葬などがあり、ハイリスク者として医療従事者、患者家族、友人、呪術医、葬儀業者が挙がっている。別れの儀式として、死者に触れることで葬儀参列者から感染が拡大する事例も多いとされている」と述べています。
 第4章「21世紀に感染症が大流行する理由」では、「森林や密林を人間が開拓することによって、野生動物が生息するエリアに立ち入る機会が増えた。このことにより、野生動物が持っているウイルスなどが人に感染するケースがたびたび発生している」と述べています。
 そして、「新興感染症は、微生物自身の進化や変異といった微生物側の原因によって出現したというより、人間の社会活動、経済活動等の“人の行為”の結果や影響によって発生し、それが、人類に脅威を与えている場合がほとんどである」と述べています。
 第5章「感染症の歴史が人類に教えてくれること」では、「一般的に、人口が急増している国々、特に途上国では、急速な発展とともに人間の居住地域や経済活動のために野生動物に棲むエリアの開発が進んでいる。また増える人口に必要な食を賄うために耕作地に開拓され、また家禽家畜の効率のよい集団飼育場が次々に造られて、それが人の居住地内であったり、もしくは隣接するようにもなった。このような環境は、動物由来のウイルスや細菌等の病原体が人に接触する機会を生みやすい」と述べています。
 また、「現在、日本でのエボラ出血熱対策は、国内に感染者が入国する可能性や検疫強化をどうするかといった問題、あるいは指定医療機関の整備等といった、国内向けの対応を中心に議論されがちである。もちろんその必要性や心情はよくわかるが、今同時に火急になすべきは国際支援である」と述べています。
 さらに、2014年9月17日に設置された「国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)」の具体的な活動として、
(1)迅速な対応:事務総長特別代表の指揮で、国際的な人材や専門家を総動員し、現地へ派遣する。
(2)パートナーシップ:感染国の政府や機関、アフリカ連合(AU)やECOWASなど地域機関、加盟国、民間部門、市民社会との調整。
(3)専門性の集結:WHOが保健全般に対する戦略立案や助言を行い、他の国連機関はUNMEERの指揮によりそれぞれの専門分野で力を発揮する。UNMEERは個別に支援活動をしている国やNGO(非政府組織)などの国際的なパートナー組織の専門性を活用して、被災エリアにおける支援のギャップを埋めるために、指導的役割を発揮する。
の3点を挙げています。
 第6章「シミュレーション エボラが日本に上陸したら」では、「フィクションタッチでいくつかのシミュレーションを想定し、もしそうした事態が起こったとき、私ならどのように考え、振る舞うだろうかという具体例」を示すとして、
(1)日本初の感染者発生
(2)検疫所への連絡を怠り、一般病院を受診したケース
(3)複数の場所での同時発生
(4)最悪のケースをあえて想定する
の4つのエピソードを挙げています。
 そして、「検疫所に連絡せず、自らの判断で一般病院を受診することは、院内感染を起こす可能性が高い。これは、非常に感染拡大のリスクが大きい。流行国から帰国して、発熱等の症状が出た方は、必ず検疫所へ連絡を入れなければならない。また万一、エボラ出血熱の感染であった場合でも、すぐに最善の治療が公費で受けられる。そして、周囲に感染を広めることなく、この一類感染症を収束させることが何より大切である」と述べています。
 本書は、エボラ出血熱との戦い方を教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 外から帰ったときに手袋の外側にふれずに安全に手袋を脱ぐ方法は役に立ちそうですが、役に立つ時が来てほしくないです。


■ どんな人にオススメ?

・自分はエボラなんて関係ないと思っている人。


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