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2015年5月31日 (日)

放射線~科学が開けたパンドラの箱~

■ 書籍情報

放射線~科学が開けたパンドラの箱~   【放射線~科学が開けたパンドラの箱~】(#2415)

  Claudio Tuniz(著), 酒井 一夫 (翻訳)
  価格: ¥1,080 (税込)
  丸善出版(2014/8/26)

 本書は、「国際的に活躍されている著者の幅広い活動の経歴に基づいて、放射線や放射能の発見から様々な利用について紹介」しているものです。
 「はじめに」では、「放射能にはさまざまな側面がある。光の部分もあれば、闇の部分もある」とした上で、「本ショアは、放射能や放射線の持つ、すばらしい、そしておそるべき力に関する短い物語である」と述べています。
 第1章「放射能というパンドラの箱を開く」では、「ストックホルムでノーベル賞を受賞した後、フェルミは米国に移り、原子炉の建設の仕事に着手した。これは、最初の原爆の製造を目指して1942年に開始されたマンハッタン計画の中でも重要な活動を位置づけられていた」として、「原子力というパンドラの箱は、このときに完全に開け放たれた。多様な放射性核種がつくり出され、環境中にもともと存在していた放射線源に追加されることとなった」と述べています
 第2章「無限のエネルギー?」では、「エネルギーの専門家は、原子力は世界的なエネルギーミックスの一部として、近い将来特筆されるべき役割を果たすと予測している。各国が温室効果ガスの排出目標の達成を目指す一方で、30億人が電気を使えない状況にあり、エネルギーの不均衡を是正することが決定的に重要である。アフリカに住む人々の4分の3が発展のために不可欠な電気を持たないことを考える必要がある」と述べています。
 そして、「第4世代の原子炉はまだ設計段階にあり、その大部分が実用化されるのは2030年以降になる」とした上で、「これに代わる、軽い原子核の融合による原子力エネルギーシステムも先の見通しが立っていない」として、「米国の科学者たちは、プラスのエネルギー収支が得られるような自己持続的核融合反応は2014年頃までに実現できると考えているが、役立つような形で電気を供給できるようになるには、おそらく30年はかかるだろう」と述べています。
 第4章「医学における放射能」では、「放射性核種は、医学生物学の分野で何十年にもわたって、特定の分子の中に取り込ませ、トレーサーとして利用されてきた」とした上で、「海馬において神経の新生がないこととアルツハイマー病の関係や、目のレンズにおける細胞のターンオーバーと白内障の関係、心臓における繊維上の物質の進展と心臓の機能の喪失など、病理的変化の起源も確認できるかもしれない」と述べています。
 第5章「放射線を利用した製品や装置」では、「X線撮影やCTなど、医療の現場で日常的に使われている技術が、産業の分野、特に非破壊検査の分野でますます用いられるようになっている」と述べています。
 そして、「20世紀の最初の10年間には放射能を利用した製品は広く普及したが、必ずしも有益な応用ばかりではなかった」として、「古きよき時代には、何も知らない大衆が放射能は無限のエネルギーを生み出すだけでなく、治療効果や美容に良い効果があると信じこまされており、さまざまな放射性製品が市場に登場した」と述べています。
 そして、「人類にとって重要な転機となる時期を正確に定めようという絶対年代測定の手法は、時間に依存した自然放射線の作用を利用している」とした上で、「放射性炭素による年代測定は、第四紀後半という時間スケールの中においても正確で直接的な測定結果を提供することによって、考古学に革命をもたらした」と述べています。
 第6章「放射能の脅威」では、「ピエール・キュリーは、すでにノーベル賞受賞講演で放射能の負の側面を言い当てていた」にもかかわらず、「その発見から1世紀あまりを経ても、放射能は脅威と疑念をもたらし続けている」と述べています。
 そして、「1960年代はじめから1990年代初頭までの間にIAEAが実施してきた国際的安全保障のしくみによって、あらかじめ宣言された用途以外に核物質が転用されないことが保障されるようになった。この伝統的な安全保障の手法は、核に関する数量管理に基礎を起き、封じ込めと監視技術がこれを補うかたちになっている」と述べています。
 第7章「地球の起源と進化を探る」では、「ガボン南東部で見つかった約21億年前の多細胞生物の画像」について、「多細胞生物の起源は、進化を理解する上で決定的に重要だ。ガボンの頁岩の中で、レントゲンとキュリーがダーウィンと出会うことになった」として、「150年の後に、X線と放射能が、ダーウィンの考えを裏づける重要な情報をもたらす基盤技術を提供することとなったのだ」と述べています。
 第8章「人類の起源を探る」では、「アウストラロピテクス類は400万年前から100万年前までの間に生息していた、非常に成功した種族である。当時は地質学的な、そして天文学的な力が地球の気候を大きく変化させており、彼らはアフリカで極端な環境の変化にさらされた」と述べています。
 また、「2010年にはネアンデルタール人のゲノム配列が明らかとなり、これに伴って極端な『アフリカ起源説』に大きな打撃が与えられた」として、「ネアンデルタール人のゲノムDNAは、アフリカの外の現生人類のゲノムの約4%まで寄与をしていることが最近になって明らかとなった」と述べています。
 著者は、「ヒトが展開していった様子の詳細を確認するには、いっそうの研究が必要である。すでに述べた放射性炭素、OSL、ウラン系列やESRなど放射能や放射線を利用して正確に時代を測定する技術を利用することで、これからも有用な情報が得られることであろう」と述べています。
 本書は、人類にとって光でもあり闇でもある放射能と放射線について、正しく理解することの大切さを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 私たちは、子供の頃からヒロシマ・ナガサキと核兵器の恐ろしさを学校で刷り込まれてきているので、放射線をとにかく怖いもの、と考えてしまいがちであったり、逆に楽観視しすぎたりと、どちらかにバイアスがかかりやすいのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・放射線をまっすぐ見れない人。


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