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2015年5月24日 (日)

恐竜 化石記録が示す事実と謎

■ 書籍情報

恐竜 化石記録が示す事実と謎   【恐竜 化石記録が示す事実と謎】(#2408)

  David Norman(著), 冨田 幸光 (監修, 翻訳), 大橋 智之 (翻訳)
  価格: ¥1,080 (税込)
  丸善出版(2014/6/25)

本書は、小さな本であるにもかかわらず、「地層のでき方、地層記録の不完全さ、それゆえにそこに含まれる化石の記録がいかに不完全か」から始まり、著者の専門である「イグアノドン」を縦糸に、「恐竜化石の発見死と研究史から1970年代以降の恐竜研究の復活、動物学的な多様な視点からの恐竜の復元、系統と古生物地理、中国の羽毛恐竜と鳥類の起源、CTなどの先進技術を使った最新の研究まで」の多様な事柄を緯糸として、「恐竜のすべてを概観することができる」一冊です。
 序章「恐竜:その事実とフィクション」では、「恐竜」が1842年に、英国の解剖学者であり、「絶滅した英国の化石爬虫類の本当の姿を解明すべく、全力を注いできた」リチャード・オーウェンの優れた直感力の結果として、公式に「誕生」したと述べた上で、「恐竜は、想像もつかないほど大昔の世界に生きた、絶滅した住人であり、世間一般の伝説や神話に現れる竜の化身のようにも見える」として、「存在そのものが好奇心を刺激する恐竜というテーマは、多くの人々に、科学的な発見の興奮や科学の応用・使い方をより広く伝える手段として最適である」と述べています
 第1章「恐竜の概説」では、恐竜の化石が、2億4500万年前から6500万年前の幅がある「中生代」の地層から見つかり、中生代は、
(1)三畳紀:2億4500万~2億年前
(2)ジュラ紀:2億~1億4400万年前
(3)白亜紀:1億4400万~6500万年前
の3つの紀からなると述べた上で、「地球表面の比較的不安定な表面の層(地学用語で地殻という)は、大きな地質学的な力によって、数千万~数億年にわたって引き裂かれたり、押し付けられたりしながら、大陸を離合集散させている」結果、「化石が含まれている地層は地質時代を通じて、つねに侵食過程によって削られたり、ときには完全に破壊されたりしている」上、「その後の再堆積のような過程によって、惑わされることもある」ため、「古生物学者に残されるものは、あきれるほどさまざまな要因で、穴だらけになり、凹んで、壊された、戦場さながらのきわめて複雑な地層である」と述べています。
 そして、「イグアノドンについて語ることは、過去200年にわたる、恐竜を始めとした古生物学分野の科学研究の進展を図らずも説明することになる」と述べた上で、1825年にギデオン・アルジャーノン・マンテルという化石の探索に熱心な医師が、「当時南米で発見された、植物食爬虫類のイグアナ」の歯とよく似た形状の化石の発見を公表し、この動物に「イグアナの歯」を意味する「イグアノドン」と名づけたとしています。
 さらに、オーウェンが、「恐竜は、今日の地球で熱帯地方に棲息する巨大な哺乳類に似た、頑丈で、しかし(爬虫類であるため)卵生かつウロコを持った生物だ」として分類群としての「恐竜」を創設したと述べています。
 また、「進化生物学者は、本質的に二次元の世界(現在の空間という意味)に生きる現生動物にその研究範囲が制限されており、したがって、彼らは種を研究することはできるが、新種の出現は目撃できない」のに対し、「古生物学者は時間という軸も加えて、三次元の研究ができる」と述べた上で、「地質記録の詳細な調査から、化石(とくに殻を持った海洋生物)の豊富な連続性が実証され始めた」として、中でも注目すべきものとして、エルドリッジとグールドが提唱した「断続平衡」説について、「現代的な生物学から見た進化論は、化石記録の種に繰り返し見られる変化パターンを包含できるように、拡張あるいは改変される必要がある」とし、「これらは、種が相対的に小規模な変化をする停滞期間(『平衡』期間)と、逆に、とても短い期間に急激に変化(『断続』)する期間からなっている」と述べています。
 第2章「恐竜ルネサンス」では、20世紀初頭、「多くの一般書や学術書の中では、恐竜は湿地で転びまわる、もしくはその大きな体をかろうじて支えているかのようにうずくまると表現されていた」と述べ、「確たる疑いもなく『愚か』で『みすぼらしい』恐竜像が確立された」としています。
 そして、ロバート・バッカーが、「内温性動物は外温性動物の平均10倍の獲物を消費すると推定」し、「ベルム紀の動物群では、捕食者とその獲物だったと考えられる動物の数が同程度であった」ことから、「恐竜――すくなくとも捕食者の恐竜は、哺乳類により近い代謝機能を持っていたに違いないと示唆した」と述べています。
 第3章「イグアノドンの新視点」では、それまで、「尾と後肢の三脚を地につけた、カンガルーのような姿勢だった」とされていたイグアノドンの尾の化石証拠が、「通常、尾をまっすぐにしていたか、あるいは少し下向きに曲げていたことを示している」ことや、イグアノドンの手首の骨が「互いに接合し、骨の塊を形成して」おり、「肩の骨は大きく、腕が足として機能する上で完璧なつくりをしている」ことなどから、「イグアノドンの姿勢を再検討すると、背骨は水平で、体重のバランスは腰の位置で保たれ、太く強い後肢がそれを支えているのが普通の姿勢であることが明らかなように見える」として、「イグアノドンは、少なくとも一時的には、四本足でゆっくり動くこともあっただろう」と述べています。
 第4章「恐竜の系譜を解明する」でが、「化石記録の一つの特徴は、(現在の系統学者の研究範囲である)人類の数世代の歴史だけではなく、地質年代を通した数千、あるいは数百万という世代交代の、生命の系譜を提示することである」と述べた上で、「恐竜類は、直立した姿勢と、支柱のような脚の上に乗る体を効率的に支えるために、特別に強化された関節を脊柱と腰の間にもち、伝統的に(オーウェンが想定したように)爬虫類として認識される」として、恐竜はその中で、腰の骨の構造の違いによって、
(1)竜盤類(トカゲのような骨盤)
(2)鳥盤類(鳥のような骨盤)
の2つの基本的に異なるタイプに分けられると述べ、竜盤類のうち、「獣脚類に含まれるグループの中で最も興味深いものは、ドロマエオサウルス類と呼ばれるグループである」として、「近年、中国の遼寧省で素晴らしい保存状態の化石が発見されたことにより、ドロマエオサウルス類が、ケラチン質の繊維状の構造物か、原生鳥類と非常によくにちゃ羽毛で体を覆われていたことが明らかになった」と述べています。
 そして、「大陸が離れていく過程で避けられない生物学的影響は、かつて地球上に広く分布する種だった恐竜が、徐々に孤立した個別の種になっていくことだった」と述べ、「恐竜の化石記録の不完全さに起因する避けられない『雑音』にもかかわらず、ジュラ紀中期、ジュラ紀後期、白亜紀前期の合間に出現する、統計的に優位な一致パターンが見いだせた」ことは、「地殻変動のイベントが、推測どおりに、いつどこで特定の恐竜グループが反映するかを決める役割を担っていることを示唆している」と述べています。
 第5章「恐竜と温血」では、「恐竜はその姿勢から高血圧の循環系を持っており、原生生物ではない温性動物にのみ確認される、高く持続的な活動レベルと対応していると評価できる」と述べています。
 また、「体が大きという利点に加え」、「俊敏さや、頭が胸より高い位置にある姿勢から見ても、多くの恐竜が完全に区画化された心臓をもつ可能性が高い。区画化された心臓があれば、体中に酸素や栄養素、熱を素早く循環させると同時に、有害な老廃物を取り除くことができるだろう」と述べています。
第6章「もし……鳥が恐竜だとしたら?」では、「遼寧省の発見は、通常の恐竜が持つウロコ状の皮膚がわずかに変化することによって、毛のような繊維状構造物から完全な羽毛まで、さまざまな種類の断熱性構造物が発達したことを示唆している。飛ぶための優れた羽毛は、当初から飛行を目的に進化したのではなく、発端は平凡なものだったのだ」として、「滑空や飛行は鳥類起源の『必須条件』ではなく、後に『追加』された利点といえる」と述べています。
 そして、「地球史において恐竜は、真の内温性のようなコストをあまりかけずに体温を維持できた、巨大で高い活動性を持った動物である」という見方は、「遼寧省からの『ダイノバード』」によって間違いであった可能性を示唆されたとして、「小さく断熱性に優れた獣脚類は内温性だったはずで、内温性動物である鳥類と獣脚類が近縁であることはその証拠の一つといえる」と述べています。
 第7章「恐竜の研究:観察と演繹」では、「米国・シカゴのフィールド博物館に展示されている、『スー』という名の巨大な(おそらくメスの)ティラノサウルスは、たくさんの病理学的特徴があることで研究者たちの関心を集めている」として、関節部分に痛風による「滑らかな丸い穴」があることや、「肋骨が折れて治癒した痕」、「脊椎と尾にはたくさんの外傷」が残っていることについて、「これらの観察結果の驚くべき点は、ティラノサウルスのような動物が、病気や怪我から生き延びていたということである」と述べ、「このような動物はとても丈夫で、それゆえ重症であっても影響が小さかったこと、もしくは、この種の恐竜が、怪我をした個体を保護するような、社会性をもった集団をつくっていたことが示唆される」としています。
 そして、「古生物学者が直面した、最も悩ましいジレンマの一つは、できるだけ新しい化石で多くの研究をしつつ、同時に標本への損害は最小限にしたいという欲求である」として、「化石の内部を見るのにCTスキャンを用いるという選択肢は急速に広まっていった」と述べ、ハドロサウルス類の頭頂部に見られる「大きなトサカ状の骨の内部構造」が、「トロンボーンと同じような構造を形成していた」例などを挙げ、「CTスキャンが古生物学の研究に、さまざまな助けをもたらしたことは明白である」と述べています。
 また、CTスキャン画像とコンピュータを用いた解析の例として、アロサウルスの頭骨のCTスキャンデータをもとに、頭骨全体の詳細な三次元データを作成し、頭骨モデルの堅牢性を解析した結果、「アロサウルスの頭骨は、工学的に見て『高性能過ぎる』」上に、「頭骨の強度に比べると、噛む力はきわめて弱かった」がわかったとして、「最も合理的な説明は、頭骨は主たる攻撃用武器として、ナタのように用いられたということだろうということだ」と述べています。
 第8章「過去についての研究の未来」では、K-T大絶滅について、「生き残った生物は、なぜ生き延びることができたのか」という疑問が重要だとして、「現生する鳥類と哺乳水、トカゲ、ヘビ、ワニ、カメなどの爬虫類、魚類と他の多くの海洋生物は生き残った。それはたんに運がよかっただけなのだろうか?」と述べています。
 また、K-T境界をつくりだしたと言われるチチュルブ・クレーターについて、「衝撃帯の詳細な解析のために、地上から1.5キロメートル下のクレーターに掘削孔が掘られた」結果、「コアのデータの解釈の一つは、衝突クレーターがK-T境界のおよそ30万年前に作られたかもしれないと示唆した」として、「この証拠は、白亜紀末の絶滅事変が、単一の巨大な小惑星の衝突によるものではなく、K-T境界に向かうにつれて起こった、数回の巨大な衝突によるものであるという説の根拠になっている」と述べています。
 著者は、「大絶滅は、地球上の生命史における魅惑的な中断点として魅惑的であるが、それらを引き起こした原因を確定するのは、当然ながらとても困難なことである」と述べています。
 本書は、子供たちにも大人気の「恐竜」をきっかけとして、科学的なものの考え方を学ぶことへのイントロダクションになっている一冊です。


■ 個人的な視点から

 大人世代が「恐竜」に夢中だった20世紀と比べて、恐竜に関しては幾つもの新事実が明らかになっています。何しろ恐竜は現代にも生き残っているし……。「今さら恐竜なんて」という大人も夢中になれるのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・恐竜に夢中になるのは子どもくらいだと思っている人。


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