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2015年6月 1日 (月)

オーガニゼーションズ 第2版---現代組織論の原典

■ 書籍情報

オーガニゼーションズ 第2版---現代組織論の原典   【オーガニゼーションズ 第2版---現代組織論の原典】(#2416)

  ジェームズ・G・マーチ ハーバート・A・サイモン (著), 高橋 伸夫 (翻訳)
  価格: ¥3,456 (税込)
  ダイヤモンド社; 第2版(2014/8/22)

 本書は、「統計的決定理論、ゲーム理論、経済学、心理学、政治学、行政学、社会学、そして経営学というそれまでバラバラだったタテ糸が、一瞬絡み合って『組織論』という結び目を作り、そしてまたほどけていく。その結び目」に相当するものであり、「その存在自体が文字通り『画期的』であり、今や経営組織論なら誰もが引用する金字塔的『古典』と位置づけられている」」ものです。
 第1章「組織的行動」では、「他の多くの社会的影響過程との対比で、組織内影響過程特有の特性を一つに要約しようとすれば、拡散性に対して特定性である」とした上で、「本書では、組織研究者・組織著述家による組織記述の重要なものを体系的に概観する」と述べ、「組織に関する命題は、その中の人間行動についての記述である。組織内人間行動を説明するために、こうした命題はすべて、明示的であれ暗黙にであれ、人間の何かの特性を仮定して埋め込んでいる」として、
(1)組織メンバーとりわけ従業員は主として受動的機械であり、仕事遂行と指示受諾はできるが、行為創始や影響力行使はあまりできないと仮定している命題。
(2)メンバーは、(1)態度、価値、目的を組織に持ち込み、(2)組織行動システムへの参加には動機づけ、誘引付が必要で、(3)個人目的と組織目的の対応は不完全で、(4)現実あるいは潜在的な目的の葛藤・対立のために、組織的行動な権力現象、態度、勤労意欲を中心に説明されると仮定している命題。
(3)組織メンバーは、意思決定者・問題解決者であり、組織内行動は知覚・思考過程を中心に説明されると仮定している命題。
の3つの命題を挙げています。
 第2章「『古典的』組織論」では、「伝統的な組織論は、発展経路で大きく2つに分けられる」として、
(1)20世紀初頭のテイラーの研究を起源としたもので、生産の基礎である肉体的活動に焦点を当てている。
(2)ギューリック=アーウィン編の論文集が良い例で、第一のものと比べると大きな組織問題、部門間分業・調整問題に関わっている。
の2点を挙げ、「この2つの理論領域の主要な特徴と問題点について述べる」としています。
 そして、生理学的組織論と管理論の「重要な限界と広く実証面・定式化面で必要なものを指摘する」として、
(1)理論の根底にある動機づけの過程が不完全で、結果、不正確である。
(2)組織的行動の限界を定める組織的利害対立の役割をほとんど認めていない。
(3)複雑な情報処理システムとしての限界からくる人間の制約条件をほとんど考慮していない。
(4)決定だけでなく、課業の同定・分類における認知の役割にほとんど注意を払っていない。
(5)プログラム作成の現象を軽視している。
の5つの基本的限界に言及しています。
 第3章「動機的制約:組織内決定」では、「古典的組織論が、生物としての人間を単純機械とみなしていた」ことについて、「まるでそんな機械で構成されているかのように組織を扱うと生じる予期しない結果について考察する」としています。
 そして、「個人行動『機械』モデルは、参加者が同時に果たす広範な役割を無視しがちであり、役割調整の問題を事実上扱わない。特に、素朴な『機械』モデルに基づく監督行為が、組織が回避を望む行動に終わることは明らかである」と述べています。
 第4章「動機的制約:参加の決定」では、「労働者による組織参加の決定」を探求するとして、「まず組織均衡の一般理論を考え、組織の主要参加者とその参加の決定に影響する要因を特定する」と述べています。
 第5章「組織における葛藤・対立」では、「個人・集団が決定問題を経験するときは、葛藤・対立が発生している」とした上で、
(1)どんな条件下で葛藤・対立は発生するのか? 組織内葛藤・対立や個人的葛藤が発生する時と場所を予測できるようになりたい。
(2)個人・組織は葛藤・対立にどんな反応をするのか? 一般には、葛藤・対立解消を試みて反応すると期待されるが、その形態を特定したい。
(3)対立の結果はどうなるのか? 特に交渉状況で、誰が何を得るのか興味がある。
の3つの問いに答えるとしています。
 そして、「組織内葛藤・対立への拡張に関連するいくつかの主要命題」として、知覚された葛藤は、代替案の主観的比較不能性、代替案の主観的需要不能性の関数であると述べています。
 そして、「組織は次の主要4過程で葛藤・対立に反応する」として、
(1)問題解決
(2)説得
(3)交渉
(4)「政略」
の4点を挙げています。
 著者は、本章において、「2つのまったく別種の組織内葛藤・対立を論じてきた」として、
(1)本質的に個人内葛藤で、組織メンバー自身での選択が難しい。
(2)個人間対立で、組織メンバーは互いに矛盾する選択をする。
の2点を挙げています。
 第6章「合理性の認知限界」では、組織メンバーの「合理的人間としての特性に焦点を当てる」ことで、本書の主要課題である、
(1)従業員を機械として扱う古典的記述の不自然さを1つずつ取り除く。
(2)これを、組織メンバーが欲求、動機、動因をもち、知識や学習・問題解決能力に限界が有ることを認める新しい概念と置き換える。
の2点が完了するとしています。
 そして、「たいていの人間の意思決定は、個人的であれ組織的であれ、満足な代替案の発見と選択に関係しており、例外的な場合にのみ、最適な代替案の発見と選択に関係する」と述べ、「干し草の山の中から、最も鋭い針を探すのは、縫うのに充分な鋭さの針を探すのとはわけが違う」としています。
 また、「管理組織の内であれ外であれ、人間の行動は合理的だとしても、それは状況の『所与』の特性集合から見て相対的に合理的であるに過ぎない」として、「所与のもの」には、
(1)未来事象の知識・過程・確率分布
(2)利用可能な行為の代替案の知識
(3)代替案の結果の知識
(4)結果や代替案に選好順位をつけるルールや原理
が含まれると述べています。
 著者は、「個人・組織が直面する問題の複雑性と比べて、人間の知的能力には限界があるので、合理的行動には、問題の複雑性すべてではなく主要店のみをとらえた単純化モデルが必要となる」として、
(1)満足化が最適化に取って代わる――基準変数の満足水準を達成するという必要条件。
(2)行為の代替案と行為の結果は、探索過程を通じて逐次的に発見される。
(3)プログラムのレパートリーは組織と個人が開発し、これが再発状況では選択の代替案として役立つ。
(4)各プログラムは、限られた範囲の状況と限られた範囲の結果に対処する。
(5)各プログラムは、他とは半独立に実施されうる――プログラム同士は緩くつながっているだけである。
の5点を挙げています。
 第7章「組織における計画と革新」では、「創始・革新が存在するのは、変化が、新プログラム――組織のレパートリーになく、プログラム化された切替ルールの単純適用でも対応できない――の考案・評価を要するときである。組織内行動が創始・確信なしに変化できる程度は、戦略の複雑性とプログラム内蔵の切替ルールによってのみ制約される。特定の組織について、プログラム化された切替ルールも含めてプログラムを記述できれば、プログラム化された通常の行動変化と新プログラム創始を意味する変化とを区別できる」と述べています。
 そして、「本質的に、人間の計画能力の現実的限界を所与とすれば、集権化よりも分権化システムがよく働く」として、「競争は比較的単純な条件に適しているのではない。まさに分業の複雑性こそが、競争を唯一適切な調整方法たらしめる現代的条件なのである」と述べています。
 あとがきでは、「本書で渉猟した領域は、理論化の到達度、特に命題の実証度で非常にむらがあることを見てきた。命題用に収集できた証拠は、大部分が動機づけ・態度を扱う本書中盤の諸章関係だった。組織的行動の認知的側面は、ほとんど未開の地である」と述べています。
 第2版への序文では、「本書の関心は公式組織の理論である。選好、情報、利益、知識が異なる個人・集団、つまり葛藤・対立のある個人・集団の間で調整された行為のシステムが組織である。葛藤・対立から、協働、資源の動員、努力の調整――これらが組織とそのメンバーの共生を促進する――への成功な転換を記述するのが組織論である」とした上で、「本書の中心をなす統一の構成概念は、階層ではなく意思決定であり、意思決定過程に対して支持し、知らせ、支える組織内の情報の流れである」と述べ、「中心的な構成概念が意思決定であるにもかかわらず、本書で展開される理論の多くは、選択の理論というよりも注意の理論である」として、「本書に書いた組織的注意の理論は、2つの小さな着想の上に構築されたが、この2つの着想は、その後かなり強力で魅力的だと証明された」として、
(1)満足化:組織は目標に的を絞り、中間段階なしに成功(目標達成)と失敗(目標未達成)にはっきりと二分して区別する。
(2)組織は、現時点で目標達成の活動よりも、目標未達の活動に注意を向ける。
の2点を挙げています。
 本書は、現代の組織論の基礎を築いた記念すべき一冊です。


■ 個人的な視点から

 名著中の名著。初版の発行が1958年であるにもかかわらず、本質的には今読んでもまったく古さを感じさせないです。


■ どんな人にオススメ?

・組織について一から考えてみたい人。


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