« 音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか | トップページ | 津波災害と近代日本 »

2015年6月11日 (木)

サバからマグロが産まれる!?

■ 書籍情報

サバからマグロが産まれる!?   【サバからマグロが産まれる!?】(#2426)

  吉崎 悟朗
  価格: ¥1,296 (税込)
  岩波書店(2014/10/30)

 本書は、「サバにマグロを産ませようという研究」を行っている研究者が、「どうやって失敗を乗り越えてきたか、すなわち、どんな壁にぶつかって、それをどうやって克服してきたか、その驚きと発見の連続の冒険譚を紹介」しているものです。
 第1章「サバにマグロを産ませる!?」では、クロマグロが、「およそ100キログラムに達した段階でほとんどの個体が成熟すると言われて」いることから、「この巨大な親マグロを人間の管理下で飼わないと放流用の種苗をつくることができない」として、体が大きいことと、成熟まで4~5年の時間がかかるという問題があり、「マグロの親を育てるには、非常に大きな施設に長い期間、さらにはこれを飼育し続けるためには、莫大な労力と餌代が必要になって」くると述べています。
 一方で、サバは、「陸上の小さな水槽」で飼うことでき、成熟誘導が非常に簡単になること、満1歳で成熟するので、成熟までの時間を短縮することができることなどのメリットが有ると述べています。
 そして、サバにマグロを産ませる方法として、「卵や精子を継続的につくりつづける、卵や精子のもとになる細胞、すなわち〈種〉をなんとかマグロから探し出してきて、これをサバに移植する」と述べています。
 第2章「どうやってサバにマグロを産ませるか」では、「重要なことは、この卵や精子の〈種〉になる細胞というのは、いったいいつどこにいるのか、どこを探せば手に入るのか」ということだとした上で、MITの研究グループが1997年に発表した論文に「vasaという遺伝子が始原生殖細胞で特異的にmRNA(メッセンジャーRNA)をつくっている」と書かれていたことから、「vasa遺伝子のつくるmRNAやタンパク質を目印にすれば、魚の中から生きた始原生殖細胞を探して採ってくることができると考えた」と述べています。
 第3章「ヤマメがニジマスを産んだ!」では、「始原生殖細胞は仔魚の卵巣・精巣、すなわち生殖隆起とは全く別のところで誕生」し、「それがこの空の生殖隆起から分泌される誘引物質に誘引されて、アメーバ運動により体の中を歩くことで生殖隆起に向かって移動していく」と述べた上で、当初は、「ニジマスの始原生殖細胞をヤマメの小さな空っぽの卵巣・精巣に移植しようとしていた」が、「もっと簡単に、ニジマスの細胞をヤマメの腹腔の中のどこでもいいので注射してしまえば、あとは移植された始原生殖細胞たちが、将来の住処である卵巣や精巣にまで勝手に歩いて行ってくれるのではないかと考えた」ことが、「研究戦略の中の最大のブレークするー」だったと述べています。
 第4章「精巣から卵? 卵巣から精子?」では、「マグロの始原生殖細胞を持っているような孵化直後の仔魚を探すのは、実はすごく大変」であることや、「クロマグロの孵化仔魚は始原生殖細胞をわずか5~6個しか持っていない」ため、「この実験をマグロの始原生殖細胞を使って行おうとすると、非常にたくさんの孵化仔魚を集めなければ」ならず、本末転倒になってしまうことから、「より大きなサイズにまで育った魚から、同じような細胞を回収できないか」と考えたと述べています。
 そして、「精子のもとである精原細胞をオスの精巣に移植したら精子をつくるのか」という話の次に、「オスの精巣の細胞をメスに移植したら何が起きるだろうか」という実験の結果、「魚類の精原細胞(おそらくこの中に含まれる生殖幹細胞)は実は卵になる能力も併せて保持しているということがわかった」と述べています。
 著者は、「材料にする魚が、仔魚でも、親でも、オスでも、メスでも、要するに卵巣か精巣を手に入れることができれば、その中に含まれる生殖細胞(とくに生殖幹細胞)を宿主個体へ移植することができ、これらの宿主個体は移植した生殖細胞に由来する卵や精子をつくりつづけられるということが、これら一連の研究でわかって」きたと述べています。
 第6章「20XX年、ついに●●がマグロを産んだ!」では、「私たちはこれらの移植を施した宿主たちを育てていけば、近い将来クロマグロが産まれると考えて、これらの魚たちを頑張って飼育しているところです」と述べています。
 そして、「私たちが考えている理想形は、移植用の幹細胞を試験管の中で無限に増やして、これらの培養細胞を宿主へと移植しようという作戦」だと述べています。
 本書は、人間の都合で激減した魚を再び増やそうとチャレンジした記録です。


■ 個人的な視点から

 近い将来マグロが食べられなくなるかも、と言われている中、マグロの養殖といえば近大マグロが有名ですが、様々な周辺技術のブレイクスルーがあってこそ養殖も可能になるのかもしれないです。


■ どんな人にオススメ?

・マグロは好きだけどサバはそれほどでもない人。


« 音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか | トップページ | 津波災害と近代日本 »

その他科学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/63047043

この記事へのトラックバック一覧です: サバからマグロが産まれる!?:

« 音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか | トップページ | 津波災害と近代日本 »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ