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2015年6月 3日 (水)

情報を生み出す触覚の知性:情報社会をいきるための感覚のリテラシー

■ 書籍情報

情報を生み出す触覚の知性:情報社会をいきるための感覚のリテラシー   【情報を生み出す触覚の知性:情報社会をいきるための感覚のリテラシー】(#2418)

  渡邊 淳司
  価格: ¥1,620 (税込)
  化学同人(2014/12/22)

 本書は、「情報に対する想像力は反射神経といったことを考える上で、特に身体と深く結びついた感覚である『触覚』を取り上げ、その『情報』との関係を考察」するものです。
 序章「触知性」では、「情報あふれる現代においては、『触覚』と『情報』の結びつきが重要である」として、(1)メディアの触覚性:言語的な意味理解やコミュニケーションを促す触覚の役割
(2)触覚のメディア性:触覚による意味伝達の可能性
の2つの視点から議論を行うとしています。
 第1章「触覚と情報」では、「視覚や聴覚が、直接的に身体に影響を与えることが少なく、非接触の対象の認知を目的とするという意味で『非身体的で遠隔の』感覚である一方、触覚は、直接的に身体の状態が変化し、接触によって対象を把握する『身体的で直接の』感覚」だと述べています。
 そして、「情報の理解には、その記号的な理解(メッセージの理解)だけでなく、情報に対する情動的な反応や応報のパターンが刻まれたメディアを通した身体的な理解(メディアメッセージの理解)が存在」するとして、前者を「記号的理解」、後者を「体験的理解」と名づけています。
 また、「私たちは、触覚においても、その粗さや硬さを知覚するだけではなく、それを別のものを指し示す記号として使用したり、その組み合わせの理論を構築して、絵を描くように触感を組み合わせ、言語的に使用することができる可能性」があると述べています。
 第2章「触れて情報を理解する」では、「『生命』を象徴する臓器である心臓に擬似的に触れることで、『生命』の意味を個人個人で記号設置していく場を持つことを狙いとして」いるワークショップ「心臓ピクニック」を紹介しています。
 そして、ワークショップの内容について、参加者は、「片手に聴診器、もう片手に心臓ボックスを持ち」、「聴診器の胸に当てる部分には小型マイクが仕込まれており、参加者が聴診器を自身の胸に当てると、そこから鼓動音(心音)が計測され、計測された鼓動音が心臓ボックスから振動として出力され」ることで、「参加者は自身の鼓動を手の上の振動として感じることが可能」になると述べ、「『心臓ピクニック』では、心臓に対して私たち人間の『生命』としての側面を感じ、そのかけがえのなさについて多くの人とともに考えるきっかけを提供」するとしています。
 著者は、「心臓ピクニックでは、自分の心臓を外在化することで、『生命(いのち)』を他者性をもって理解し、さらにそれを他者とやりとりする中で、それと同様のものが他者にも存在することを体験的に理解」すると述べています。
 第3章「触れて現れる情報、触れて残る情報」では、「読者の働きかけ(なぞり動作)に応じて、そこに表示される文字の濃淡を動的に変化させることで、文字表示に時間的特性を加えた文章表示方式」である「Yu bi Yomu」について、「文章表示に時間の表現を加え、これまでにないメディアメッセージのあり方を実現」し、「文字が表れ・消える時間パラメータやなぞり速度を変化させることで、同じ文章からもさまざまな印象が生じ」るとして、「Yu bi Yomuを利用すると、複数人で、さらにはその場にいない人とも、もしかしたら、異なる時間に読んだ人とさえ、読むという体験を擬似的に共有すること」ができると述べています。
 著者は、「現代では、物事を記号化することで、大量の情報を生み出し流通させる社会の流れ」があるが、「記号化は、その現象が起きている現場固有の感覚やその現象と自分との関係性を希薄にして」しまうとして、「心臓ピクニックやYu bi Yomuはどちらも、触れることを利用して、情報を自分のものとして身体的に理解し、他者へ伝達、共有することをめざして」いるものだと述べています。
 第4章「触覚の語彙、語彙としての触覚」では、「触覚とほかの感覚のイメージが結びつく」関係性である「触象徴(texture symbolism)」という造語を提示しています。
 第5章「触覚の文法」では、「すでに存在している音声や文字の言語獲得のあり方を参照しながら、触覚を分節化し、その組み合わせに対して新たなイメージや意味を付与するという、触覚を言語的に捉える試みについて」述べています。
 「情報社会をいきるための感覚のリテラシー」では、「私たちが生きていく上では、ときに体験的な理解、情報を判断する主体に立ち戻りながら、継続的に世界のルールを発見、更新していく能力を磨くことが重要となるでしょう」と述べています。
 本書は、情報と触覚の新しい関係の可能性を論じた一冊です。


■ 個人的な視点から

 情報についての研究は多数ありますが、触覚に特化してワークショップや展示を行う研究は楽しそうです。脳科学の分野と連携した研究成果をぜひ読んでみたいです。


■ どんな人にオススメ?

・「触覚」について改めて考えたい人。


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