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2015年7月 1日 (水)

社会への出かた―就職・学び・自分さがし

■ 書籍情報

社会への出かた―就職・学び・自分さがし   【社会への出かた―就職・学び・自分さがし】(#2446)

  白井 利明
  価格: ¥1,836 (税込)
  新日本出版社(2014/12/9)

 本書は、「非正規雇用が自由な働き方ではなく、使い捨てにされる働き方であること」が指摘される中で、「青年はどのように働いたらよいのだろうか。親は何ができるのだろうか」について、青年心理学の視点から考えたものです。
 序章「現代青年の生きづらさ」では、「今は逆に自分で選べること、選ばないといけないことが負担となっているのではないか」として、「先行世代の親からすると、自由であることにはよい面とわるい面の2つの面がある。昔は自由がなかったから、今は自由があるということはよい面である。しかし、自由であることが個人の選択に重くのしかかっているという面もあると考えられる」と述べた上で、「自分の人生を立ち上げていく時期」である青年期と、「自分の仕事や家庭を持つことで、自分の能力を発揮したり、生きがいのもとになったりするような自分の生活基盤を作っていく時期」である成人期前半に、現代社会は「そのような課題を達成できるような条件を十分には与えていない」と指摘しています。
 第1章「雇用されるとは何か」では、「企業は青年が育つ機会を十分には提供していない」一方で、「青年は、さまざまに働く体験が、青年の育つ機会を提供してくれると思っている」として、「企業は非正規雇用での成長は甘い考えかたとする一方で、そうした青年の向上心を利用して非正規雇用につかせているといえるのではないだろうか」と指摘しています。
 そして、「青年は、気の合う仲間と楽しく働きたいと思っている。結婚し、家庭をもち、夫婦で子どもを育てていける働き方がしたいと思っている。そして、何よりも、それなりの賃金が支払われ、安定した生活が送ることのできるような雇用を望んでいる。しかし、今、政府や企業が向かおうとしている方向は、そうした願いとは正反対である。その矛盾が様々な形で青年問題となって噴出しているのではないだろうか」と指摘しています。
 第2章「正規雇用へのつきかた」では、「好きなことや自分のやりたいことを自分の仕事と結びつけて考えること」である「やりたいこと志向」について、「やりたいこと志向の高い人は、なかなか正規雇用にはつかないと考えられる」とした上で、事例から、「彼らのやりたい志向とは、自分らしさを保とうとする傾向のことではないだろうか。過酷な状況に振り回されたくない、自分のペースを守りたい、といった願いを意味していた」と述べる一方で、「正社員は、非正規雇用についている人に比べてやりたいこと志向が低かったが、それは、やりたいことをあきらめているからではなかった。むしろ、自分の目標を達成することに関心があった」として、「目標を持ち、そのために力をさき、そしてさらに向上させようと努力している。現在を未来につなげることで、社会の要請に自己を合わせようとしている」と述べています。
 著者は、「やりたいこと志向」について、「周囲にふりまわされずに、自分のペースで働きたいということであることがわかる。しかも、やりたいこと志向があると正規雇用につけないということでもなかったし、正規雇用についたからといってやりたいこと志向がなくなるものでもなかった。むしろ、職場や仕事との距離感をもつことができれば、仕事をしていけることが明らかになった」と述べています。
 そして、「社会移行を促す重要な要因の一つとして、社会への信頼があげられる」とした上で、「社会的信頼が大学時代の社会関係資本経験によって促進される」、「社会的信頼が高いほど社会に出ていく活動を粘り強く行うことができる」として、「この知見は、社会的に不利な立場にあっても、社会関係資本が形成されるならば、社会的信頼を高め、社会移行を促すことができるという示唆を与える」と述べています。
 第3章「青年と社会が開く自立への道」では、「個々の職業に従事するのに必要な専門知識、技能、規範・行動様式の習得を目的とする教育」である職業教育のポイントとして、
(1)専門性を身につけることが、労働のリアリティに基いて行われることで、青年の意欲が引き出され、自信をもたらすこと。
(2)労働は集団的に行われるので、職業教育も集団のなかで行われること。
(3)民主的な社会の形成者として社会に参加し、持続可能な環境をつくり上げていくこと。
の3点を挙げています。
 そして、「わが国において現在の学校から社会への以降が個人化・不安定化した背景」の一つとして、地域の経済的基盤が弱体化し、地域で次の担い手を育成できなくなってきたこと」及び「労働力の養成と配置にかかわる、学校と企業以外の公共的なシステムが整備されないまま、労働市場が自由化されてきたこと」の2点を挙げています。
 第4章「青年と親はどうするか」では、「青年期は役割実験をして自分のありかたをみつけていく時期である」として、「役割実験とは試行錯誤のことであり、学生のアルバイトはそのひとつである」と述べた上で、アルバイトの経験は、職業選択にはほとんど役立っていないが、「自分の生活圏では出会ったことのない多様な人たちと出会い、こうでなければならないと決めつけていたような自分の考えかたを相対化し、視野を広げていっている」という意味で、「自分なりの進路や人生を選び取ることができるのだろう」と述べています。
 終章「社会への提言」では、「社会で働き方を人間的な働き方にしていくことが必要である」として、
(1)作業の人間化
(2)コミュニケーションの人間化
の2つ意味での「人間的な働き方」を挙げています。
 本書は、移行問題における現代的な要因を指摘した一冊です。


■ 個人的な視点から

 自分の人生を選ぼうとする際に「やりたいこと」という言葉は、放っておいても若者の心を捉えてしまうわけですから、大人が寄ってたかって「やりたいこと」とか「自分探し」に手を貸してやる必要なんてないのです。お止しなさい。


■ どんな人にオススメ?

・自分を探したい人。


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