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2015年7月 4日 (土)

なぜ再処理するのか?―原子燃料サイクルの意義と技術の全貌

■ 書籍情報

なぜ再処理するのか?―原子燃料サイクルの意義と技術の全貌   【なぜ再処理するのか?―原子燃料サイクルの意義と技術の全貌】(#2449)

  大和 愛司
  価格: ¥972 (税込)
  エネルギーフォーラム(2014/07)

 本書は、「日本はなぜ原子燃料サイクルを一生懸命やろうとしているのか、その意義はなにか、どういう恩恵を国民にもたらすのか」を改めて検証するとして、「原子燃料サイクルに関連することを、核分裂発見以来の歴史から紐解いて、現在の技術と世界の動向など、簡潔にわかりやすくまとめ」たものです。
 第1章「核分裂の発見から平和利用までの国際的な動き」では、「原子燃料のリサイクル事業が原子力の平和利用に限定して国家としてのエネルギー源を確保しようという狙いから進められている」ことから、「国家のエネルギー源であるからには膨大な量を安定的に供給できることが必要」だと述べています。
 そして、1953年にアメリカのアイゼンハワー大統領が国連総会で行った「Atoms for Pease」演説について、「核兵器による反撃も辞さないとする一方で、核兵器ではなく、むしろ平和利用の方向に利用していくことができる」ことを提案したと述べています。
 第2章「日本はいかにして再処理技術を獲得できたのか?」では、「原子力については、サンフランシスココクワ条約の中には原子力の研究を禁止する旨の条文」がないことについて、「GHQは原子力の研究の禁止令を出していたわけですから、講和条約の中にその禁止条文がないことは、つまり原子力に関する研究はこの講和条約を持って解禁されたと解釈され」ると述べ、この3年後の1955年に日米間で原子力研究協力協定が結ばれ、後の日米原子力協定の基になったとしています。
 また、科学技術庁の設置を始めとした日本の研究開発体制の整備に関するエピソードとして、「Atoms for Pease演説を、当時、若き代議士であった中曽康弘さんが聴きにいった」ことで、「演説に感銘を受けた中曽根さんは、日本もこの研究を直ちにはじめなければならないと考え、帰国後、ウラン235日なんで2億3500万円の予算を議員提案し、科学技術庁、日本原子力研究所、原子燃料公社を作ってウラン資源を収集するということを国会で決議し、今日の日本の原子力平和利用の基礎が作られた」と述べています。
 第3章「六ヶ所再処理工場の建設」では、1969年の新全国総合開発計画(新全総)の閣議決定により、「六ケ所村に、石油備蓄基地、石油の精製基地、火力発電所などを建設する、雇用は大体10万人から12万人の規模」という大計画が打ち上げられたことで、「六ケ所村では土地の買い占め業者により一年間で1260人の村民から870ヘクタールもの土地の買い占めが起きた」が、2度のオイルショックによって、計画は「あれよあれよの間にどんどん縮小」され、結局実現したのは、「国家石油備蓄基地の51基のタンクだけ」となったと述べています。
 そして、「20年以上にわたり、東海再処理工場の運転を通して数多く経験してきた事柄が、今、六ヶ所再処理工場のいたる所に活かされている」と述べています。
 また、「六ヶ所再処理工場では核兵器へ転用しにくいように、工程の中で生成されたプルトニウム溶液に同じ量のウラン溶液を混合して、純粋なプルトニウム溶液を系外へ出さないようになって」いると述べています。
 第4章「再処理事業の意義」では、再処理を行うことの意義として、
(1)ウラン資源の節約
(2)高レベル廃棄物の減容と安定化ができること
(3)原子燃料サイクルは地球環境の保全に寄与すること
の3点を挙げています。
 そして、「ガラス固化体の放射能毒性は、主にセシウムやストロンチウムなどの核分裂生成物(FP)の影響が大きく、ウランやプルトニウムがそのまま含まれる使用済み燃料の場合に比べるとずっと早く毒性が減衰して」いくと述べています。
 第5章「ガラス固化体は安全に地層処分できる」では、「放射性廃棄物は最終的には浅地中処分、余裕深度処分、地層処分の3つの分類で再処分される」とした上で、「天然原子炉が自然に停止したあとに残る元素の詳細な分析から、アクチノイド(プロトニウムなど)や希土類元素は20億年間でも地層の中を数センチしか移動していないことがわかって」いるとして、「天然のバリアはこれらの核種を極めて長期間閉じ込める機能があるということを実証して」いると述べています。
 そして、「政府はつい最近、立地公募制による処分地の選定法では、地元住民への説明や説得など自治体側の負担が大きく、最終処分に向けた文献調査にまで進んだ例がないことを踏まえ、従来の自治体による応募方式から、政府が地質の安定性など処分に適した候補地を科学的に選定して、全国的に幅広く示す方式に方針を転換するといった検討が行われて」いると述べています。
 また、「地層処分で考慮すべき天然現象と地質環境条件」として、
(1)活断層
(2)火成活動
(3)隆起侵食
(4)地下水
の4点を挙げ、「専門家による客観的な判断」を求めて、平成4年から平成12年にかけて、動燃事業団・サイクル機構(原・日本原子力研究開発機構)において、「純粋に地科学的観点から、長期安定性に関する地質学者間のコンセンサスを形成すること」を目的として、「地層科学研究検討会議」を組織し、「百数十人の全国の地質学の先生方が約8年かけてつくられた共通認識、ある意味の合意をもとに動燃、その後のサイクル機構は、2000年に『日本で地層処分は可能である』という技術レポートをまとめ上げ」たと述べ、その後、[厳しい予算状況の中で長期安定性に関する研究予算も縮小され、このような広範な分野の研究者・専門家を結集する場を維持できる団体はなくなって」しまったことから、「日本学術会議が誤認したように、地層の長期安定性に関するコンセンサスが、合意・形成が十分でないという観念が広がってしまっている」と述べています。
 さらに、、「直接処分なら100万年以上の過去までの安定性が求められるが、再処理したガラス固化体の処分場は10万年以上の安定性が求められる」ことから、「証拠立てて長期安定性を調べていくのは大変根気のいる高度な技術で、100万年オーダーで安定なエリアを選定するのは、対象地域が狭く絞られてしまいますが、10万年程度なら、国内に広く分布すると述べた通り候補地は国内に広範に分布するということが専門家の間では分かって」いると述べています。
 著者は、2013年に日本学術会議が原子力委員会の指紋に回答したレポートについて、主な矛盾点として、
(1)電力消費地と処分立地地域の不公平性:具体的な支援として、交付金の支払いを法律に定め、NUMOは地域活性化を図るために地域と強制するという姿勢を明らかにしている。
(2)暫定保管の後はどうするのか
(3)総量規制の不足分の代替策はあるか
(4)数万年の長期安定性に専門家の合意が不十分か?
の4点を指摘しています。
 第6章「原子燃料サイクルを支える技術分野」では、「再処理という事業は、工場内の工程管理、働く人の安全管理から、周辺環境の管理まで組み合わさっているので、使う技術の範囲も非常に広くなり、広い学問分野の裾野を必要とする」と述べています。
 第7章「再処理技術開発の歴史と英仏の再処理工場」では、1960年代以降、「プロトニウムのエネルギー利用を目的とした軽水炉燃料に移行してきたのに伴い、再処理の高度化が進み、いろいろな設備の技術開発が行われた」とした上で、日本原燃の再処理工場は、フランスの再処理技術である「UP3」の改良型とも言える工場だと述べています。
 本書は、日本の核燃料の再処理技術とその必要性を解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 原子力発電の是非については賛否両論あってそれぞれに言い分があるものだとは思いますが、いずれにせよ現にそこに核燃料がある以上、その性質や処理方法についての理解を深めることはどちらの立場にとっても必要なのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・原子力について意見を言いたい人。


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