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2015年7月24日 (金)

人類が変えた地球: 新時代アントロポセンに生きる

■ 書籍情報

人類が変えた地球: 新時代アントロポセンに生きる   【人類が変えた地球: 新時代アントロポセンに生きる】(#2469)

  ガイア ヴィンス (著), 小坂 恵理 (翻訳)
  価格: ¥3,888 (税込)
  化学同人(2015/7/17)

 本書は、「人間の活動が自然にどれだけの負荷をかけてしまったのか、自分の目で確かめるため、2年の歳月をかけて世界各地を訪ね歩」いた著者が、海、山、森、大気など10のカテゴリーについて、「それぞれの場所が抱える問題と、その解決に向けて最前線で地道な努力を続けている人たちの活動」を紹介しているものです。
 序章「人類の惑星」では、「かつては地球に衝突した小惑星や大噴火による火山灰が新たな時代の到来をもたらしたが、それに匹敵する地質学的な影響力を今日の人類は手に入れた」ことに注目した地質学者が、「新しい時代をアントロポセン(人新世)と呼んでいる」と述べたうえで、「私たちが地球全体に大きな影響力を及ぼすようになった現実を認識するためには、従来の発想を大きく転換させなければいけない」としています。
 第1章「大気」では、「情報、教育、コミュニケーション、市場などの分野でオンライン化と大衆化が進むアントロポセンでは、今よりも平等なグローバル社会が実現する可能性を期待できる」と述べています。
 そして、「アントロポセンの大気は、これまで地球に存在してきたいかなる大気とも異なる。そして人類の活動が大気の海に及ぼした影響は、これから何千年にもわたって世界に痕跡を残すだろう」としています。
 第2章「山」では、「人類が引き起こした地球温暖化によって失われた氷河を再び創造するのは、高山に暮らす村人が現実に直面する問題の解決策として実に独創的だ」と述べるとともに、「ペルーのアンデス山脈では、人々は文字通り山を白く塗るプロジェクトに取り組んでいる」としています。
 第3章「川」では、「私たち人類が川を干上がらせる結果として生じる水不足は、アントロポセンに破滅的な状況を引き起こしかねない」として、「近年、水に対する人類の欲望は膨れ上がり、ついには自然の限界を超えてしまった」と述べています。
 第4章「農地」では、「この100年間、農業の工業化と集約化は世界を席巻してきた」として、「食料生産は2050年までに倍増させなければならないが、不安定な水の供給、気候変動、土壌の劣化など問題は山積しており、おまけに土壌の豊かな土地はほぼすべて、すでに畑として利用されている」と述べています。
 そして、インドでは、「水不足の大半は、ずさんな管理に原因がある。貯水池など貯蔵施設は不足しており、使用済みの水のリサイクルはほとど行われていない」と指摘しています。
 また、「アントロポセンには、人口も食欲も増えていく一方だ。その圧力を受けて、ますます多くの原生地が農地に変換されている。こうなると、収穫量の低い国が国民の飢えを解消して生物多様性を守るためには、農業がある程度まで集約化されなければならない」と述べています。
 第5章「海」では、「海は根本的に変化してしまった。だから私たちは、変化を受け入れて生きていくための新しい方法を工夫しなければならない」と述べています。
 第7章「サバンナ」では、「何千年にもわたって生態系の一部として生活してきた人たちが、アントロポセンになると土地を開発する名目で、わずか数十年のうちに追い出される事例が続出している」と指摘しています。
 そして、「アントロポセンにおいて、私たちは頂点捕食者を維持するか、あるいは生態系における彼らの役割を人工的に管理しなければならない」と述べています。
 第8章「森」では、「森がなぜ大切なのかといえば、私たちが地球で生きていくために欠かせない光合成は、森の健康や『質』に左右される繊細なプロセスだからだ。草やツル植物よりも、大きな樹木の存在が欠かせない」と述べています。
 そして、「二酸化炭素のレベルを完新世のレベルに回復するためには、熱帯雨林や人口の樹木や海の藻類による光合成が現段階では唯一の方法である。アントロポセンがさらに進めば、二酸化炭素を発生源で取り除くことは技術的に簡単になり、費用も安くなるだろう」と述べています。
 第9章「岩」では、「今や人類ほど地球の景観を変化させている存在はいない。人類が動かす堆積物や岩石の量は、世界中の革や氷河や風雨が動かす量の3倍以上に達する」としたうえで、「現在のところ人類は、地球が補充できる量を年間に30パーセント上回るペースで、天然資源を使用している」と述べています。
 そして、「アントロポセンが何十億もの人たちにとって住みやすく快適で健康な環境であり続けるためには、最も豊富に使われる鉱物資源、すなわち化石燃料の利用を抑えなければならない」と述べています。
 第10章「都市」では、「アントロポセンに都市革命が実現すれば、今日の環境や社会が抱える問題の多くは解決され、地球上で多くの人々が最も持続可能な方法で暮らせるようになるかもしれない。あるいは逆に、人類の破滅を黙示する、SFで頻繁に描かれる暗黒のメガシティが生まれるかもしれない」と述べています。
 そして、「人類を最も持続可能な形で収容するために都市が最善の手段である点では、すでに評価が確立している」と述べています。
 本書は、現在の地球に「アントロポセン」という観点から光を当てた一冊です。


■ 個人的な視点から

 「気候変動」という言葉を聞くとゴアさんの「不都合な真実」を連想してしまい、大変だ! プリウス買わなきゃ! 原発建てなきゃ、とついつい焦ってしまいがちですが、人類が地球の気候を変えてしまったことは紛れもない事実で、今から急に息を止めたからといって元に戻るわけもなく、じゃあどうするかを考えることも必要なのだと思います。


■ どんな人にオススメ?

・温暖化の暗い未来に心が沈んでいる人。


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