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2015年8月19日 (水)

白亜紀の生物 下巻

■ 書籍情報

白亜紀の生物 下巻   【白亜紀の生物 下巻】(#2491)

  土屋 健 (著), 群馬県立自然史博物館 (監修)
  価格: ¥2,894 (税込)
  技術評論社(2015/8/18)

 本書は、「白亜紀」をテーマに、「とくに南北アメリカ大陸の生物たち」を多く取り上げたもので、著者は、「恐竜たちだけが白亜紀世界の“登場人物』”ではありません!」として、白亜紀の北アメリカに存在した広大な海について、「独特の姿を持つ絶滅魚類や、この海の脅威であった巨大ザメ、そして、ついに登場した最強の海棲爬虫類モササウルス」も取り上げています。
 第7章「翼竜大産地、『ブラジル』」では、「クラト層から化石が産出している翼開長3mほどのツパンダクティルス・インペラトール(Tupandactylus imperator)について、「ローマ帝国における『皇帝』を意味する種小名は伊達ではなく、本主の後頭部には高さ50cmにおよぶ大きなトサカがあった」と述べています。
 第8章「The Western Interior Sea!!」では、それまで、「海のオオトカゲ」のような姿で復元されていたモササウルスについて、「2010年にスウェーデン、ルンド大学のヨハン・リンドグレンとカナダ、ロイヤル・ティレル博物館の小西卓哉たちがプラテカルプスの全身骨格を報告したことで、その姿は大きく変更されることになった。モササウルス類には尾鰭があったのである」と述べています。
 また、プテラノドン(Pteranodon)について、「比較的大型の翼竜で、翼開長は6m超に達」し、「口には歯をもたず、後頭部に大きなトサカを発達させていることが特徴だ」と述べるとともに、ニクトサウルス(Nyctosaurus)について、「この翼竜の最大の特徴は、後頭部からY字にのびた、長い謎の突起である」と述べています。
 第9章「恐竜たちの楽園『ララミディア』」では、ウェスタン・インテリア・シーによって東西に分断されていた白アメリカの北アメリカのうち、西側の南北に細長い大陸を「ララミディア」、東側の大陸を「アパラチア」と呼ぶとした上で、「ティランノサウルスもトリケラトプスも、ララミディアを代表する恐竜だ」と述べています。
 また、翼の起源について、
(1)「飛行のために」翼を持ったとする説
(2)「獲物を捕獲するために翼が生まれた」とする説
(3)「走行時のバランス制御」とする説
(4)「求愛のため」とする説
の4つの仮説を紹介しています。
 そして、デイノニクス(Deinonychus)について、「今日の恐竜像の構築に一役買った恐竜」であるとして、かつては「鈍重な爬虫類」とされてきた恐竜だったが、「1960年代に、アメリカ、イェール大学のジョン・オストロムがデイノニクスを研究した時、この恐竜が足のつめを生かした狩りをするには、俊敏でなければならない、と考えた」と述べ、「デイノニクスに端を発する」パラダイム・シフトは「恐竜ルネサンス」と呼ばれるとしています。また、「デイノニクスは潮流の恐竜起源説帯刀のきっかけとなった恐竜であり、恐竜ルネサンスのきっかけとなった恐竜」だとして、「始まりの恐竜」と言うことができるとしています。
 第10章「ティランノサウルス」では、「大きくて重い。これだけでも相当な脅威である。しかし、ティランノサウルスを『最強』たらしめるスペックは他にもある。幅広で分厚い頭骨は、圧倒的なまでの噛む力を生み出していたことが知られている」として、現生のアリゲーターが4000N、アロサウルスが6000N弱とされる中で、「実に3万5000N」という噛む力を持つと推定されたと述べています。
 また、「タルボサウルスは、リトロナクスと同じように進化型のティランノサウルス類で、時代はリトロナクスよりも新しい」として、「ララミディアの南部で生まれた進化型のティランノサウルス類が、かつて祖先が通ったベーリング陸橋を通ってアジアへ“帰り”、タルボサウルスが誕生したのではないか」とする説を紹介しています。
 第11章「世界の恐竜たち」では、いわゆる「草」と呼ばれる「イネ科の植物が台頭・隆盛を始めるのは、新生代に入ってから」であることから、「草食恐竜」という言葉を使うのは新聞やテレビであり、「監修者がついた書籍では、子ども用の学習図鑑であっても『植物食恐竜』と書いてある」と述べています。
 第12章「第5の大量絶滅事件」では、「生命史に確認される大量絶滅事件、いわゆる『ビッグ・ファイブ』の最後の一つ」である大量絶滅について、「ドイツ語で白亜紀を意味する『Kreide』と、新生代最初の地質時代である古第三紀の英語『Paleogene』の頭文字を採って『K/Pg境界絶滅事件』とよばれている」と述べ、昔は「古第三紀と新第三紀をあわせて『第三紀』とよんでいた」ことから「K/T境界]と呼ばれていたとしています。
 そして、メキシコ湾からカリブ海にかけての海底にある直径最大225kmとされる「チチュルブ・クレーター」について、衝突場所が「厚さ3kmにもおよぶ炭酸塩/硫酸塩岩地帯」だったことから、「衝突の衝撃で、この岩の成分が解けて大気中に撒き散らされた」結果、「炭酸塩岩と硫酸塩岩は二酸化炭素と硫黄を含む」ことから、「硫黄は有害物質であり、さらに悪いことに、太陽光を遮断するエアロゾルに変化する」として、「白亜紀末に地球にやってきた小惑星は、“当たりどころ”も悪かったということになる」と述べています。
 また、「鳥類がK/Pg境界を乗り越えて現在に存在している以上、恐竜は滅びずに生き続けている、というのはけっして間違いではない(むしろ正しい)」と述べています。
 本書は、みんな大好き白亜紀の恐竜のスターに限らず魅力ある生き物たちを紹介した一冊です。


■ 個人的な視点から

 いつの間にか恐竜に羽毛が生えて鳥みたいになっていたのにも驚きましたが、子供の頃から大好きだった「ティラノサウルス」は「ティランノサウルス」と書かれていました。どうやら、監修の群馬県立自然史博物館の意向のようです。


■ どんな人にオススメ?

・大きくなった元恐竜少年たち。今でも恐竜が大好きな大人にも子供にも。


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