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2015年8月 2日 (日)

形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ

■ 書籍情報

形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ   【形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ】(#2478)

  倉谷 滋
  価格: ¥1,080 (税込)
  丸善出版(2015/4/26)

 本書は、「脊椎動物の起源をめぐる問題を形態学の黎明から説き起こし、型の一致とボディプランの関係を考察し、現代の進化発生学的研究から、その問題の解答を模索した」ものです。
 著者は、「どうやら、生物の進化はなんでも可能というのではなく、そこには変りやすさと変わりに草、どうしても超えられない一線のようなものがあるらしい」として、「本書では、動物の形が進化するとはどういうことなのかという、この古くからの問題に取り組んだ学者たちの歴史を振り返りながら、それがどのように形を変えて現在行われている最先端の研究につながってきたのか、そして、分子遺伝学や細胞生物学がもたらした現代生物学の発見が、動物進化の理解とどのように関わっているのかを述べてゆく」としています。
 第1章「形態学のはじまり」では、「キュヴィエの名づけた『枝分かれ』という分類単位は、今でいう『動物門』にほぼ等しい」として、「動物はそれぞれ、それが属する動物門に独特の『体のつくり』、すなわち『ボディプラン』を共有しており、そのような互いに異なった形のタイプを現在約30ほど認めることができる」が、キュヴィエはそれを、
・脊椎動物
・関節動物
・軟体動物
・放射動物
の4つに分類したと述べています。
 そして、「動物門の不連続性と、動物種の不変性・不可侵性が、キュヴィエの自然観の根幹を成すもの」であったのに対し、ジョフロワは、「大局的な法則の発見に対する指向性が強く、また野心的な実験を行ったり、ダイナミックで奔放な概念化」を試みたと述べ、「構造と構造の間の相対的位置関係に形態的本質を見出そうというジョフロワのこの姿勢は、機能的制約を重視するキュヴィエのそれと再び鋭く対照をなす」としています。
 また、「最初に、発生と進化の関係を明瞭に形態学議論に持ち込んだ一人がハクスレーだった」として、「のちに研究対象を脊椎動物へ写したハクスレーは、オーウェンの現動物理論、とりわけその頭蓋骨の解釈を否定する上で、別の思考方法を採用した。つまり、動物の発生過程をさかのぼっていけば、それはその動物が獲得した特殊性の度合いを次第に下げてゆく、つまりその動物が進化してきた道を逆にたどっていくことになりはしまいか」と述べています。
 そして、「現代の発生学や進化系統額の常識からすれば、このような仮設や推論にはいくつかの短絡が見受けられる」が、重要な事は、「事実上この時初めて、形態学が科学的議論の俎上に載せられたということ」だと述べています。
 第2章「形態学と進化」では、「動物の形は点で好き勝手に変化するわけではなく、常に幾つかの(たかだか可算個の)『型』にはまり、しかも、異なった『型』と『型』の間にも、一部共通した要素があったりする」のであれば、「それは多かれ少なかれ共通した発生プロセスによってもたらされるのであろう」と述べています。
 そして、「反復する発生の例として最もよく引き合いに出される」ものとして、「脊椎動物咽頭胚に出現する『咽頭弓』」を挙げ、「これは魚類においてはエラの原基だが、陸上脊椎動物にも発生途上で現れる」と述べ、「咽頭弓は、祖先の構造であると同時に、エラを必要としなくなった動物の発生の第1段階にもなっている」として、「もう我々には、今後いかに進化しようと、頭の後ろに目を持ったり、足の裏に胸腺ができるような可能性はなくなってしまった」のであり、これが「構造的ネットワーク」と呼ばれる形態の論理だと述べています。
 第3章「遺伝子の教えるもの――進化発生学の胎動」では、「相同性とはただ単に異なった動物における器官の一致をいうのではなく、一群の動物が同じボディプランを共有しているがゆえに、形態構造のつながり方が一つの全体的な系、すなわちジョフロワのいう『型』として互いに重ねあわせることのできる同じパターンを示し、その中で特定の器官が他の動物の対応する器官と同じ相対的位置を占めていることをいうのであった」と述べています。
 また、「コ・オプション」について、「ある器官の形成に関わっている遺伝子群や、それに基づく細胞間相互作用などの発生機構が、そのまま胚の別の場所(そしてしばしば、別の時間)に『移植』され、それが、それまで祖先にまったく存在しなかった構造をもたらすような現象をいう」とした上で、コ・オプションは、「『深層的に相同』な発生プログラム、すなわち相同な遺伝子制御ネットワークをどこかに新しく付加することにより、形態的な新規形質をもたらすことがある」として、甲虫の角の他、「脊椎動物の鰭、並びに手足にそれを見ることができるのではないか」とする説を紹介しています。
 第4章「進化する胚」では、「動物の体をつくる発生機構は、時として予想以上の類似性を遺伝子発現パターンや分子実体のレベルで示すことがある。しかも、いわゆる動物の基本的ボディプランをつくる上で中心的役割を果たしているものは、ゲノムの中の一部に過ぎず、しばしばそれらは似たような発生文脈において繰り返し用いられている。あるいは、特定の器官形成において、動物門を超えて広く用いられている、最も保守的な遺伝子群もある」として、これらを俗に「ツールキット遺伝子群」と呼ぶと述べています。
 そして、「動物の形の形態進化には、このような、たかだか可算個のモジュールと、その基本的特異化に関わるマスターコントロール遺伝子の機能からなる、いわば『変異枠』のようなものが設定されており、その中で進化的多様化が進行する限り、観察者には特定の形態進化の傾向であるとか、分類群であるとか、それでもけっして変わらない根源的パターンのようなものを感知せずに入られない」と述べています。
 第5章「動物の起源を求めて」では、「いま争点は、脊椎動物に特異的なオタマジャクシ体制、脊索と背側の神経管、そして腹側の消化管と外側の筋節という基本パターンがどのように獲得されてきたかということに絞られている」と述べています。
 そして、「我々が目にする様々な動物を生みだした最初の祖先がどのような姿をしていたのか、そしてその動物の発生プログラムがどのように変化し、その背景にはどのようなゲノム、遺伝子の変化があり、それらの変化をどのような機構が突き動かしていたのか、いまでも定説はなく全貌はつかめていない」と述べています。
 本書は、動物の形をめぐる生物学の進化の痕跡を辿った一冊です。


■ 個人的な視点から

 生き物の体を見ていると、なんとなく共通点とかが自分でもわかるような気がするのですが、昔から多くの人に語られてきた分野だったようです。


■ どんな人にオススメ?

・生き物の形の不思議さに心を奪われる人。


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