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2015年8月 3日 (月)

新炭素革命

■ 書籍情報

新炭素革命   【新炭素革命】(#2479)

  竹村 真一
  価格: ¥1,836 (税込)
  PHP研究所(2015/5/26)

 本書は、「現代の“新炭素革命”を、資源制約や環境危機といった問題を解決する技術革新として『文明史』『人類史』的に評価するのみならず、もっと大きな『地球史』の文脈に位置づけて――すなわち光合成生物による有機物生産と環境改変という地球的価値創造の歴史の延長として捉え直してみよう」とするものです。
 第1章「この世界は『炭素の魔法』で出来ている」では、「炭素はすぐれた『ネットワーカー』だ」として、「同じ炭素同士で、あるいは他のいろいろな元素と、手をつないでつながり合える」と述べた上で、「有りふれた素材から、こうしたまれなる複雑な分子を合成するという、とてつもない『物質の高次元化』(アップグレード!)――この地球上ではあたりまえに思える現象は、この宇宙の中で極めて稀な(レアな)出来事なのだ」と述べています。
 そして、「身のまわりの植物たちが日々あたりまえのように行っている光合成という営み」が、
(1)有りふれた物質を「高次元化』して、他の生物に食料などの恵みを提供する。
(2)そうした炭素化合物の結合エネルギーとして太陽エネルギーを貯留。
(3)大気の成分を調整して「地球環境」を整える。
 の3つの仕事を行っていると述べています。
 第2章「炭素の惑星――地球の履歴書」では、「地球の大気の二酸化炭素や『温室効果』がネガティブなイメージでばかり語られるのはとても残念だ」とした上で、「中東地域の石油の埋蔵量が特に多い」理由として、「石油という資源が形成された『白亜紀』という年代と、その頃の地球の大陸分布による特異な環境条件が大きく関係」するとしています。
 第3章「『石油の世紀』と人類の飛躍」では、石炭や石油という化石燃料は、「『エネルギー革命』であると同時に『物質革命』でもあり、また『食料生産革命』にもつながった」として、「化石燃料という、何億年も前の植物が光合成で貯留した太陽ネルギーの濃縮パッケージを使って、あらゆる分野でこの惑星の風景を変えてゆく大革命」が始まったと述べています。
 第4章「想定外の罠」では、「私たち人類は、科学の力で『地球の体温と体調』の変化をモニターし、その体温上昇(温暖化)と体調変化(気象の極端化、氷河融解など)の主な原因が私たち自身の炭素排出にあるという『自己認識』をもちつつある」として、「これは人類の知的成熟の表れ」でもあると述べています。
 第5章「地球の未来を拓く『新炭素革命』」では、「炭素に起因する問題を解決する鍵は、やはり炭素にあり」として、
・有機太陽電池を用いた薄いシート状で曲面の壁にも貼り付けられ、窓の遮光も兼ねた「発電するロール・ブラインド」
・現在進行形でCO2を吸収・固定している植物を原料にプラスチックを作れば、現代の「資源制約」や「環境制約」への解決策に
・石油由来のものだけでなく、鉄やガラス、シリコンなど人類文明の確信を支えてきた無機物のマテリアルも、どんどん「炭素ベース」のものへ
・水素が世界共通の「エネルギーの通貨」になれば、クリーンエネルギーの地球大の「融通」が可能に
などを挙げ、「核廃棄物問題も含め、私たちは『死』と『循環』を人工物の文明にどう内部化してゆくかという課題を突きつけられて」いると述べています。
 本書は、温暖化だけでない炭素の可能性を追った一冊です。


■ 個人的な視点から

 近頃、「低炭素社会」や「脱炭素社会」という言葉を耳にすることが多くありますが、むしろ炭素の可能性を追求していこうという姿勢はわかりやすく面白かったです。


■ どんな人にオススメ?

・炭素を毛嫌いしている人。


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