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2015年9月

2015年9月12日 (土)

格差社会の中の高校生: 家族・学校・進路選択

■ 書籍情報

格差社会の中の高校生: 家族・学校・進路選択   【格差社会の中の高校生: 家族・学校・進路選択】(#2493)

  中澤 渉, 藤原 翔
  価格: ¥3,456 (税込)
  勁草書房(2015/9/12)

 本書は、「2010年代を生きる高校生の進路選択を中心に、それを取り巻く学校生活や親子(特に母子)関係の実態を明らかにするもの」です。
 序章「高校生の進路選択へのアプローチ」では、トロウによる高等教育進学率の変化である、
(1)エリート段階(15%未満)
(2)マス段階(15~50%)
(3)ユニバーサル段階(50%以上)
の3つの発達段階のうち、「2000年代半ばから、日本の大学・短大進学はユニバーサル段階に移行した」と述べています。
 そして、本書の目的として、「現代の高校生はどのように学校生活を送り、将来の職業や生活を考え、そして卒業後の進路を選択するのだろうか。高学歴化した社会と格差社会の中を生きる高校生の進路選択の実態と、そこへの親の関わりを明らかにする」と述べています。
 第1章「進学率の上昇は進路希望の社会経済的格差を縮小させたのか」では、「進学率が上昇し、ますます多くの人々がより多くの教育を受けるようになってきたものの、社会経済的背景による教育達成の差は依然として残り続ける」と述べた上で、「2000年代初頭から2010年代初頭にかけて生じた進学率の上昇の中で、高校生の通う高校の選抜性や高校生の進路希望に対する成績と社会経済的背景の影響がどのように変化したのかを明らかにする」としています。
 そして、「高校偏差値に対する社会経済的背景や中学時の成績の影響」について、
(1)親学歴、世帯収入、中学時成績は高校偏差値に影響を与えること。
(2)その影響力は2002年と2012年の間に変化していないこと。
(3)社会経済的格差について、第1次効果よりも第2次効果の割合がやや大きいこと。
の3点を挙げています。
 また、進路希望に対する家族、成績、学校の影響について、
(1)親学歴、世帯収入、中学3年次成績、学校タイプは影響を与えること。
(2)その影響力は2002年と2012年の間でほとんど変化していないこと。
(3)一方で2002年には見られた高校2年時の成績の影響は2012年に見られなくなったこと。
(4)社会経済的背景の影響に関する第1次効果と第2次効果の割合は、総合的に見ればほぼ同程度であること。
の4点を挙げています。
 著者は、「2002年から2012年の間で進学率が上昇したが、それは進路希望の社会経済的格差の拡大や縮小を導くことはなく、格差の構造は維持されている」と述べています。
 第2章「『学校不適応』層の大学進学」では、「学校適応的な高校生ほど大学進学を希望するという一次元的なパターンを見直し、『学校不適応』な大学進学層の存在を確認したうえで、高校生と母親の主観的・客観的側面から、近年の進学同行の特徴を考える」としています。
 そして、「近年の動向」として、
(1)高校生と教師及び両者の関係が変化した可能性。教師の指導観においても、生徒の順応性を重視した親身な指導へと変化した。
(2)大学進学率の上昇。
の2点に注目しています。
 著者は、「学校不適応」な大学進学タイプである「曖昧な大学進学層」の登場の背景として、「高卒就職が困難な社会状況、学校での進路指導など、さまざまな面があると考えられるが、彼・彼女らこそが高等教育の拡大を担っているのかもしれない」と述べています。
 第3章「大学・短大の専門分野はどのように決まるのか」では、社会階層が進路希望におよぼす影響について、
(1)専門職の出身者には理工や保健を選ぶものが多いこと。
(2)社会と保健の選択率が世帯収入の高低と結びついていること。
(3)父親と同じ学科・専攻で専門教育を受けたいと思う高校生が少なくないこと。
の3点を挙げ、「高等教育の学科・専攻の決定は出身階層の影響を受けており、自由な選択の結果ではない」と結論づけています。
 第4章「誰が推薦入試を利用するか」では、「高校生の進学理由に注目し、大学への進学の際、どのような生徒が推薦入試を利用しているのかを検討」し、「一般入試を利用する生徒より、推薦入試を利用する生徒は、あまり『高い学歴の方が就職に有利』といった学歴による効用を進学理由としておらず、『将来の生活や進路を考える時間がほしい』というようなモラトリアム的な進学理由を持つ傾向にあった」と述べています。
 第8章「母子間の価値観の伝達」では、世代間の性別役割分業意識の関連が不平等に対して意味するものとして、
(1)母親の意識の伝統性は、男子の場合においてのみ子どもの規範の伝統性を強める。
(2)男女どちらにおいても母親の性別役割分業意識の伝統性が、子どもの意識の伝統性を強める。
(3)他の変数との有意な関連が殆ど見られなかった。
の3点を挙げています。
 第9章「母親の就業経歴と高校生のライフコース展望」では「就業を継続している母親を持つ高校生は、男子ならば将来の配偶者のライフコースについて、女子ならば自分自身のライフコースについて、母親と同じように就業継続を希望しやすい」ことが明らかになったとしています。
 本書は、親との関係から21世紀の高校生の進路と就業意識を追った一冊です。


■ 個人的な視点から

 その昔は、高校に進学できるか、大学に進学できるかこそが経済的格差の現れだったわけですが、高校全入、大学全入の時代になったからといって経済的格差が解決されるはずもなく、表面的なタテの学歴は同じ高卒、大卒でもヨコの学歴として依然大きな格差が残っているって当たり前の話のように聞こえます。返せるあてのない(安定的な収入への道が期待できない)高い学費を奨学金を借りてまかなっておいて、返す段の閻魔顔でゴネるのはいかがなものかと思います。

■ どんな人にオススメ?

・格差がある社会が許せない人。


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