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2016年1月30日 (土)

孤独病 寂しい日本人の正体

■ 書籍情報

孤独病 寂しい日本人の正体   【孤独病 寂しい日本人の正体】(#2523)

  片田 珠美
  価格: ¥756 (税込)
  集英社(2015/10/16)

 本書は、「社会構造の激変によって、人々を強くつなぎとめていたかつての血縁や地縁をベースにしたコミュニティが崩壊しつつあり」、「孤独というものが病理的な色彩を濃くしていけば、やがて紛れもない病になって」しまうとして、「孤独病」と名付けるこの病を「防いだり、癒やしたりする」方法を考えたものです。
 第1章「『孤独病』の時代」では、「目の前にいる肉体を持った人とのコミュニケーションよりも、ネットを通してヴァーチャルな存在とコミュニケーションし、その世界に浸るほう」を選んでしまう「その根底に潜んでいるのは、新しい時代の新しい形の孤独なのかもしれない」と述べています。
 そして、「人が個人という単位で完結し自由を謳歌する生き方は、血縁や地縁に束縛される不自由さを嫌い、そこから抜け出すことで得たもの」だた「現代人の孤独度は、もう目盛りがほぼいっぱいに振り切っているような状態なのではないか。孤独は時代の病であり、社会の病になってしまった」として「孤独病」と名づけています。
 また、「ゴミ屋敷の住人」について、「セルフネグレクトをすることで家族や社会に無意識に復讐しているのではないか」と述べています。
 さらに、「中世ヨーロッパでは、メメント・モリをテーマにした死神や骸骨が登場するキリスト教的な芸術作品が数多くつくられた。戦争、飢餓、そしてペストの大流行によって、中世は人々が日常的に死を意識して暮らさざるをえない時代だったのだ」と述べています。
 第2章「『孤独病』の構造」では、孤独の構造について、「自己愛」「自己承認欲求」「万能感」というキーワードから見ていくとした上で、「孤独病に掛かる人は概して自己愛のベクトルが強い」として、「自撮りをフェイスブックやツイッターに載せる人たちの心理」には、「他人から注目されたいとか、認められたいといった、自己顕示欲や承認欲求がしばしば潜んでいる」と述べています。
 そして、「孤独をひたすら深くさせるほどの強い自己愛を持ったタイプの人が増えている」理由として、
(1)家庭の問題:核家族化と少子化の進展
(2)万能感:能力はみな平等にあって頑張りさえすれば必ず夢や目標が実現するという悪しき平等主義
(3)グローバルに広がる過剰な消費社会が振りまく幻想
(4)過度の衛生思想を浸透させた社会環境
の4点を挙げ、もっとも重要なものとして、「万能感が膨らみすぎた社会は、原発事故に象徴されるように、失敗のリスクを深く考えない社会になる危険性をはらんでいる」と指摘しています。
 第3章「人を『孤独病』に追い込む思考習慣」では、「離婚件数がなかなか減らないのは、人は理解し合えるものであり、そうあるべきだという期待が強いことの裏返しのように思われる」として、「人は努力すれば理解し得るという期待が強いほど、必然的に失望することになる。失望して一層孤独や寂しさを感じる羽目になる」と述べています。
 そして、「一般的に『いい人』願望が強くなるほどメンタルをやられやすい」として、「『いい人』は周りの人間とつるんでいるときはいいが、自分がないから、いざとなると孤独にひどく弱い」と述べています。
 また、「孤独病にかかっている人はよく『誰も自分を愛してくれない』などと訴える」が、「そういう人に限って誰のことも愛していないものだ」として、「愛を貰えないと孤独に喘いでいる人は、自分が他人のために何かをしてあげることが損だと思っている」と指摘しています。
 さらに、「孤独な状況に陥ったとき、それを辛く思う人と、あまり悲観しない人」の二つを分けるものとして、「自己肯定感の差」を挙げ、「自己肯定感が強い人ほど孤独に対しては強く、反対に自己肯定感の弱い人ほど孤独に弱い」と述べています。
 第4章「『孤独病』、その暴走の果て」では、「妄想と孤独には密接な関係がある。妄想は得てして強い孤独感の中から生まれてくる」として、「妄想は自己愛を満たすことで、現実における不遇な境涯を慰めたり、孤独感を癒やしたりする“自己治癒的な試み”ともいえる」と述べています。
 そして、妄想の精神医学的な定義として、
(1)不合理な内容であること
(2)不合理な内容であるにもかかわらず、本人がそれを確信していること。
(3)周囲が訂正を試みても、本人は強く信じ込んでいて訂正不能であること。
の3点を挙げています。
 また、小保方晴子氏について、「妄想を抱いているわけではないが、空想虚言症であると私は思っている」として、「架空の事柄を細部にわたるまで本当のことらしく物語」り、「小保方さんにはまったく罪悪感がないように見えるが、これは自分の願望を投影した空想と現実を混同するせいであり、空想虚言症の特徴だ」と述べています。
 第5章「『孤独病』を癒やす処方箋」では、「引きこもりに陥る人は、総じてプライドが高く完全主義の傾向が強い。完全主義の人は100を目指してそれがかなわなければゼロでいい、というような極端な振れ方をする」と述べています。
 そして、「マイルドヤンキーと呼ばれる人たちは背伸びをせず、他人と比べない等身大の生き方をする。仲間や家族を大切にする。彼らの幸福度はきわめて高いといわれているが、それもむべなるかなである。彼らのような生き方は、おそらく老後に至るまで孤独とは無縁である可能性が高い」と述べています。
 本書は、現代人をむしばむ「孤独病」の原因と処方箋を考えた一冊です。


■ 個人的な視点から

 作者は精神科医ということで、それらしい言葉などもいくらかは出てくるのですが、基本的には社会評論というかエッセイという感じです。
 そういえば昔から精神科医の本はこんなもんだったのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・孤独じゃない人。


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