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2016年1月 7日 (木)

野生動物は何を見ているのか―バイオロギング奮闘記

■ 書籍情報

野生動物は何を見ているのか―バイオロギング奮闘記   【野生動物は何を見ているのか―バイオロギング奮闘記】(#2500)

  佐藤 克文, 青木 かがり, 中村 乙水, 渡辺 伸一
  価格: ¥1,620 (税込)
  丸善プラネット(2015/12)

 本書は、「小型の記録計を動物に取り付けて、観察が難しい動物の行動や生態を調べるやり方」である「バイオロギング」の研究成果を取りまとめたものです。
 第1章「動物目線の理由」では、「バイオロギング」という言葉について、「日本発祥の造語が世界に広がっていった」ものだと述べた上で、「動物の生態を調べている同業者からの評判はなぜだか今ひとつよろしくない」理由として、「ハイテクに頼りすぎているという印象があるようだ」と述べています。
 そして、「これまでバイオロギングによって達成された発見は、狙っていた仮説が検証されたというよりも、皆が『きっとこうなっているはず』とか思い込んでいた常識をひっくり返してしまうような、まるでちゃぶ台返しするかのごとき、想定外のものが多い」と述べています。
 第2章「浦島太郎の目線で調べるウミガメの生態」では、「世間ではウミガメ類がプラスチックゴミを摂取して、それが消化管内に詰まってしまうために死ぬという話が広く信じられている」が、「多くのウミガメがプラスチックゴミを摂取しているのは事実」ではあるが、「ゴミが腸の途中で詰まっている個体は1頭もいなかった」として、「まだ世の中にレジ袋などのプラスチックゴミが存在していなかった時代から、ウミガメ類は海洋に浮かぶ餌を大雑把に捕り、可食部と非可食部を一緒に飲み込んでいたのだろう」と述べ、「ゴミを食べたウミガメが死ぬという思い込みが世の中に広がってしまうと、ウミガメ類を絶滅の危機に追い込んでいる真の要因が見えにくくなってしまう」と指摘しています。
 第3章「冷たい深海でクラゲを食べるマンボウ」では、マンボウが「深いところで何をしているかまではずっとわかっていなかった。研究者たちは餌を食べているという予想をしてきたが、もちろんそんな深いところでマンボウを目撃した人はいない」とした上で、著者が、「マンボウにカメラを取り付けることで、マンボウが深いところでクダクラゲ類という変わった形のクラゲを食べていることを世界ではじめて明らかにした」と述べています。
 また、マンボウに体温計を取り付けることで「マンボウの体温の挙動を測って」みた結果として、「マンボウの体温は深いところの水温と同じ温度まで下がることはなく、ある程度体温が下がるとマンボウは海面に戻り、下がった体温は海面で浮いている間に回復していた」と述べた上で、「温度差に対する体温の変化は、体温を回復するときのほうが大きい」として、「温まる時には冷える時よりも熱交換効率が3倍以上大きい」として、「表面積の大きい鰓がラジエーターのように働き、鰓を通る血液の流量を多くすることで周りの海水との熱の交換を活発にしているのではないか」との仮説を挙げています。
 第4章「樹に登らなくても飛べるオオミズナギドリ」では、「樹に登らないと飛べないから」と言われていたオオミズナギドリについて、「実際のオオミズナギドリは、やすやすと空中に飛び上がり、何度も着水と飛翔を繰り返していた」と述べています。
 第5章「マッコウクジラの頭を狙え」では、マッコウクジラの捕食行動を撮影するために解決しなければならない問題として、
(1)光源
(2)カメラをどこにどうやって付けるか
の2点を挙げた上で、マッコウクジラの口元を撮影するための曳航式のタグをマッコウクジラに取り付けたところ、「タグを取り付けたマッコウクジラは勢いよく体をひねって、ローリングし始め」、カメラ部分を切り離してしまったと述べています。
 第6章「ブッシュに潜むチーターの狩り」では、チーターにカメラ付きの首輪をつけたところ、「もともとは海鳥研究用に開発されたカメラだけに、強度より軽さが優先され、水中で抵抗を受けにくいよう細長い計上に設計されている」ため、「おそらく狩りで疾走した際に茂みに引っかかり、カメラがへし折れた」と述べています。
 また、「『ブッシュに潜むチーター』の狩りは、走る速度も食べ方も、『サバンナを走るチーター』とは随分と違っていた。こうした違いは、植生や餌動物、競争者の密度といった生息環境の違いにチーターが適応した結果なのだろう」と述べています。
 本書は、これまで見ることができなかった動物の世界を覗き込んだ一冊です。


■ 個人的な視点から

 バイオロギングは日本が世界をリードしている分野ということですが、今後センサーデバイスの進化によって、体温だけではなく脈拍や血中の化学変化などを含めた分析が進むとともに、人間の医療分野でも活用が進むかもしれません。

■ どんな人にオススメ?

・動物が何を見ているのかを知りたい人。


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