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2016年7月15日 (金)

銀河系惑星学の挑戦

■ 書籍情報

銀河系惑星学の挑戦   【銀河系惑星学の挑戦】(#2539)

  松井 孝典
  価格: ¥842 (税込)
  NHK出版(2015/12/9)

 本書は、「惑星研究の目的は、単に惑星そのものの成り立ちを探ることだけでは」なく、「惑星の研究を通じて、この宇宙の成り立ちを知る」意義や面白さを伝えようとするものです。
 第1章「SFに追いついた天文学」では、「21世紀になり、最もホットな話題は銀河系に惑星を探す、さらにいえばもうひとつの地球を探す試み」だとした上で、「生命を宿す可能性という観点では、生命が誕生するのに適した軌道領域『ハビタブルゾーン』(habitable zone 水が液体で存在できる領域。つまり生命が誕生するのに適した環境の領域)に、惑星が位置する必要」があると述べています。
 そして、「さまざまな系外惑星の存在がわかってきて」いるが、「まだ発見されてわずか20年で、全貌がわかったとはとてもいえない状況」と述べています。
 第2章「人と惑星」では、古代の人々が、「不規則な動き方をする惑星には、神の意志を表す特別な意味があると考えた」と述べた上で、「天動説から地動説への転換は、もちろんきわめて大きなもの」であったが、「ここで重要なのは『地球が動いている」ことだけ」ではなく、「人類の自然観に最強影響を与えたのは、『地球もほかの惑星と同じ』とした点」だと述べています。
 そして、アポロ計画による月面調査によって、「望遠鏡の時代にはできなかった研究が、できるように」なり、「地球を調べるのと同じように、月という天体を調べることができる。望遠鏡の時代には天文学の対象でしかなかった月が、物質科学の対象になった」と述べています。
 また、「月のクレーターの研究によって、地球の歴史をめぐる考え方も根本的なパラダイムの転換を迫られること」になり、「アポロ計画以降は、地球の歴史を斉一説ではなく、ある時天変地異が起きて、それまでの自然が劇的に変化するという『激変説』で語るのが当たり前」になったとして、アポロ計画は、「私たち科学者にとっては、地球科学や惑星額を大きく方向転換させる強いインパクト」があり、「アポロ計画の科学史における意義は、ガリレオの望遠鏡に匹敵するほど重い、といっても過言では」なく、「ここで初めて、惑星学は『科学』になった」と述べています。
 第3章「太陽系の誕生」では、「アポロ計画によって持ち帰られた月面資料の分析」が、「1990年代になって、格段に性能の向上した分析器を用いて、これらの資料の分析が」始まった結果、
(1)これまで岩石全体でしか分析できなかった化学組成や同位体組織、あるいは同位体年代(同位体比を使った年代測定)、鉱物相の同定(どんな鉱物が含まれているかの決定)などが、鉱物ごとに、あるいは鉱物結晶の特定の場所ごとに行えるようになった。
(2)分析精度の向上。
などを挙げ、「月のマントルに地球のマントルと同じくらいの水が含まれていること」や、「角礫岩に含まれる様々な鉱物の形成年代が、43.5億年前から38億万年前と、約5億年の期間に及ぶこと」などが明らかになったと述べています。
 また、「分析技術の発展にともなって大きな進歩を遂げたのが、隕石の科学」だとして、「できあがってから融けたことのない隕石には、太陽系の材料(星雲ガスや太陽系前駆物質)がそのままの状態で含まれている」ことから、「そういう隕石は、その形成年代が地球の岩石よりもはるかに古いため、太陽系が生まれた頃のことがわかる」と述べています。
 第4章「惑星系はこうして生まれる」では、太陽系にかぎらず、「惑星は太陽のような恒星の『残骸』をもとに形成」されるため、「惑星を知るためには、遠回りのように見えるかもしれませんが、まず恒星がどのように誕生し進化するのか、その問題から説明を」始めるとしています。
 そして、「誕生する天体も太陽のまわりを公転しているのでそれぞれ角運動量を持って」おり、「太陽系ではそのほとんどを惑星が持って」いることが、「太陽系の大きな特徴」であり、「原始星円盤から惑星系が誕生したと考えると、うまく説明が」つくと述べています。
 第5章「惑星の新しい定義とは」では、2006年に、国際天文学連合(IAU)が決議した太陽系の惑星の定義として、
(1)太陽を回る軌道上にある天体
(2)重力が物体の強度を上回るだけの質量を持ち、したがって静水圧平衡に近い形をしている天体
(3)その軌道の近くにはほかの大きな天体が存在しない
の3点を挙げ、「これらの定義にあてはまらず、衛星でないものは、『準惑星』あるいは『太陽系小天体』と区分される」と述べ、このうち(3)の条件を見たいしていないため、「冥王星が惑星ではなくなった」としています。
 そして、太陽系の惑星である、
(1)地球型惑星:水星から火星までの主に岩石でできた惑星
(2)巨大ガス惑星:主にガスでできた木星と土星
(3)巨大氷惑星:主に氷からできた天王星と海王星
の3つのタイプについて解説しています。
 また、「今から40億年くらい前」に、「隕石重爆撃期」とよばれる時代があったことが、「アポロ探査によって明らかに」されたとして、「水をもたらした以外にも、天体衝突は、初期の地球にさまざまな影響を与えたに違いありません」として、「アポロ計画をきっかけに『天体衝突の科学』が発展したことは、太陽系や地球の歴史を明らかにする上で、非常に大きな意義があった」と述べています。
 第6章「太陽系の惑星科学が主流だった時代が銀河系惑星額へと移ったターニングポイントは1995年」にあるとして、
(1)銀河系において、恒星はどこまでが恒星と呼べるのかを明らかにする褐色矮星の発見
(2)系外惑星の発見
の2点を挙げています。
 そして、系外惑星とは別に「小さくて暗い天体」が注目された理由として、
(1)20世紀半ば、海王星より外側の領域に、焦点大群があるのではないか、と考えられ始めたこと。
(2)赤外線検出装置が発達したことで、原始惑星円盤や、水素の核融合をせず、自らは明るく輝かない低音の天体の観測が、技術的にも可能になったこと。
(3)恒星と惑星の中間的な存在である「褐色矮星」と呼ばれる天体の存在を予言する理論が提唱されたこと。
の3点を挙げています。
 第6章「銀河系惑星学を拓いた二大発見」では、「太陽系は宇宙で特別な存在ではない」という前提で始まった系外惑星の探査によって、「太陽系のような、巨大ガス惑星が10年以上の公転周期を持つ惑星系は、まったく当たり前の存在ではなかった」ことが明らかになったとして、「銀河系の系外惑星では、中心星の近くを短期間で周回する、巨大ガス惑星のほうが『ありふれた存在』」だったと述べています。
 第7章「生命を宿す星はあるのか」では、アストロバイオロジーは、「生命が宇宙から運ばれてくるという考え方の総称」である「パンスペルミア説の検証」という大問題に取り組むべきだとした上で、「2001年にはインドで、2012年にはスリランカで、いわゆる『赤い雨』」が降ったとして、「インドの赤い雨については、その正体が細胞上の物質であることが判明」し、「その雨で降る前に大気中で大きな爆発音がしたことから、細胞状の物質を含んだ彗星が、上空で爆発したのではないかと推測されて」いると述べています。
 本書は、惑星を科学する面白さを伝える一冊です。


■ 個人的な視点から

 「惑星」といえば望遠鏡で外から眺めるものだと思っていたのですが、サンプルリターンと調査機器の投入によって、今や実際に分析することができる分野になっていました。
 こういう背景を知ると、『宇宙兄弟』読むのも楽しくなりますね。


■ どんな人にオススメ?

・星に手を届かせたい人。


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