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2016年7月10日 (日)

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

■ 書籍情報

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」   【たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」】(#2534)

  ダン ロスステイン (著), ルース サンタナ (著), 吉田 新一郎 (翻訳)
  価格: ¥2,592 (税込)
  新評論(2015/9/4)

 本書は、
(1)すべての生徒は、自分で質問がつくれるようになる方法を学ぶべきであること。
(2)すべての教師は、生徒の質問づくりを授業の一環として教えられるようにすること。
の2点を提示しているものです。
 「はじめに」では、「自らの質問をつくり出すという方法を学ぶことで、生徒たちは自律的で主体的な学び手/考え手になる機会が提供された」と述べた上で、質問づくりの段階として、
(1)「質問の焦点」は教師によって考えられ、生徒たちがつくり出す質問の出発点となる。
(2)単純な4つのルールが紹介される。
(3)生徒たちが質問をつくり出す。
(4)生徒たちが「閉じた質問」と「開いた質問」を書き換える。
(5)生徒たちが優先順位の高い質問を選択する。
(6)優先順位の高い質問を使って、教師と生徒が次にすることを計画する。
(7)ここまでしたことを生徒たちが振り返る――学んだことは何か? どのようにして学んだか? 学んだことをどのように応用できそうか? など。
の7点を挙げています。
 第1章「質問づくりの全体像」では、「生徒たちにとってとても貴重なスキル」として、
(1)発散思考:多様なアイディアを考え出し、幅広く創造的に考えられる能力。
(2)収束思考:答えや結論に向けて、情報やアイディアを分析したり、統合したりする能力。
(3)メタ認知思考:自分が考えたことや学んだことについて振り返る能力。
の3点を挙げ、生徒たちが質問づくりの各段階を踏むことでこれらの思考力を練習することになると述べています。
 そして、質問の第2段階において、「生徒たちが自分たちで質問をつくるための枠組みないし手順」として、
(1)できるだけたくさんの質問を出す。
(2)(それらの質問について)話し合ったり、評価したり、答えを行ったりはしない。
(3)発言のとおりに質問を書き出す。
(4)肯定文として出されたものは疑問形に転換する。
の4点を挙げています。
 第2章「教師が『質問の焦点』を決める」では、「これまでのように、教師は『発問』をするのではなく、『質問の焦点』を示す」ことになるとして、「生徒たちが質問をつくり出すための引き金。生徒たちがそれをきっかけに考えて質問をつくり出せるものであれば、短い文章、あるいは写真や短い動画や表・図などの視聴覚教材など何でもかまわない。質問の焦点は、生徒たちの思考を喚起するために、従来使っていた教師からの発問の反対側に位置づけられるものである」と定義しています。
 そして、「効果的な質問の焦点を考える際の指針」として、
(1)明確な焦点をもっている
(2)質問ではない
(3)刺激によって新しい思考を誘発する
(4)教師の好みや偏見は表さない
の4点を挙げています。
 第5章「質問を書き換える」では、教師の役割として、「閉じた質問と開いた質問の定義を紹介し、それらについての話し合いを進め、一つの質問を別の質問に書き換えるときにサポートをすること」だとして、
(1)閉じた質問と開いた質問の定義を紹介します。
(2)自分たちがつくり出した質問のリストを見て、閉じた質問には△を、開いた質問には◯を、2~3分でつけるように指示します。
(3)閉じた質問と開いた質問の長所と短所についての話し合いを進行します。
(4)一つの質問を他の質問に書き換えるように指示します。
の4つの手順を示しています。
 そして、「生徒たちに習得して欲しいもっとも重要なポイント」として、「質問のつくり方と言い回し(表現法・言葉遣い)が、受け取りたいと思う情報の質を決定づける」ことだと述べています。
 第6章「質問に優先順位をつける」では、「優先順位をつける力で特徴づけられる意思決定に寄与する脳の部分は、青年期になっても発達していないことがわかって」いるとして、「生涯にわたって使い続けるスキルとして、生徒たちに脳のこの部分を発達させるチャンスをもっと提供するべき」だと述べています。
 そして、優先順位を決定するプロセスとして、
(1)優先順位をつけるための指示を与える
(2)優先順位の高い質問を選ぶ
(3)選んだ質問の理由を述べられるようにする
(4)グループ活動の成果を全体に報告する
の4つの段階を示しています。
 第7章「質問を使って何をするか考える」では、「すでに生徒たちに質問づくりをさせることに自信のある」教師の事例として、
(1)数学者のように考える
(2)生徒たちの質問が探求学習を推し進める
(3)生徒自らの質問が「スイッチを入れる」
の3つの例を挙げています。
 第8章「学んだことについて振り返る」では、「生徒たちが行ったことや学んだことを考えるため」には、
(1)自分たちが新しく知ったこと(知識)
(2)感じたこと(感情)
(3)できるようになったこと(行動)
について、「自らの言葉で語れるチャンスが必要」とした上で、具体的に使える質問として、
(1)知識レベルの変化を問う質問
 ・あなたは何を学びましたか?
 ・自分で質問できるように学ぶことはなぜ大切なのですか?
 ・学んでいる内容について何を学びましたか?
 ・どのように学んだのですか?
(2)感情レベルの影響について問う質問
 ・質問をする際はどんな感じがしましたか?
 ・自分たちが行ったことのなかで、よかったことは何ですか?
(3)行動レベルの変化を問う質問
 ・質問できるようになったわけですが、それを今後どのように使いますか?
などの質問を挙げています。
 第10章「生徒もクラスも変化する」では、「質問づくりを使うことで起きた変化は極めて顕著なもの」だとして、
(1)内容に関するより良い理解などの知識面。
(2)自信、主体性、より熱心な取り組みなどの態度面。
(3)生涯にわたって使える思考力を身につけたことなどの技能面。
の3つに分類しています。
 「おわりに」では、本書の結論として、
(1)どの学校のどのクラスでも、すべての生徒に質問ができるように教えることで、教育を改善することは今日からでもできる。
(2)生徒たちに質問ができるように教える教師は、より高い満足とより良い結果が得られる。
(3)自ら質問することをすべての生徒に教えることで、広い見識を持った市民と、市民中心で、力強く、より活気のある民主的な社会をつくり出すことができる。
の3点を挙げた上で、「私たちの民主的な社会においてさえ、市民が主体的に考え、自らの質問をする力を発達させているとはとても思えません」として、「オープンであるにもかかわらず綿密に構成されている質問づくりは、生徒たちに常に民主主義の習慣を練習させ、スキルを磨く機会を提供して」いると述べています。
 本書は、教育の場にかぎらず、民主主義社会における重要なスキルである「質問づくり」の重要性を述べた一冊です。


■ 個人的な視点から

 良い議論のスタートは良い質問にあり、良い企画のスタートも良い問題意識にあるわけで、質問こそがすべてなのかもしれません。
 そういえば自衛隊の作戦本部を見学したら「EEI」という言葉に出会ったのですが、「Essential Element of Information」という意味だそうで、意思決定する上で必要な「~とは」を決めることが良質な意思決定に必要だということのようです。


■ どんな人にオススメ?

・質問する力を身につけさせたい人。


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