人事

2015年8月 7日 (金)

日本的雇用慣行を打ち破れ

■ 書籍情報

日本的雇用慣行を打ち破れ   【日本的雇用慣行を打ち破れ】(#2483)

  八代 尚宏
  価格: ¥2,160 (税込)
  日本経済新聞出版社(2015/4/23)

 本書は、「解雇のルール、女性や高齢者の活用を妨げている雇用慣行、労働時間規制などの論点や、外国人雇用の促進のための新たな仕組みについて」考えたものです。
 第1章「日本の労働市場の何が問題か」では、「日本の労働市場において女性や高齢者の活用を阻んでいる最大の要因として、大企業や官庁を中心に幅広く普及している日本的雇用慣行がある」とした上で、「どの大企業や官庁でも、内部の社員、職員から見れば歴然とした
・良いポスト:企業が重視している成長性の高い業務を抱える部局にあり、すぐれた上司や先輩がいる。
・悪いポスト:ルーティンの業務が多く、ロールモデルとなる上司や先輩も少なく、新たに学ぶ経験の少ない職務。
があると述べ、「社員の人事配置を集権的に決定する人事部が、個々の社員の運命を左右する強大な権限をもっていることが、日本の企業の大きな特徴のひとつである」としています。
 そして、「日本では、欧米のような労使間の階級対立が深刻でない反面、同じ労働者の間に、正社員と非正社員、大企業と中小企業、若年層と中高年層、男性と女性社員などの様々な『労・労対立』が存在している」と指摘しています。
 第2章「効率的な労働時間規制」では、「日本の慢性的に長い労働時間」の説明として、「個々の労働者間での賃金に大きな差がないにもかかわらず、企業内で少しでも良い仕事に就くために激しい競争が行われる」とつぃた「仕事競争(job competition)」モデルを紹介し、「日本の長時間労働は、過去の高い経済成長期に普及した『職務の限定なき働き方』と密接に結びついており、単に社員の意識改革などで改善される問題ではない」としています。
 第3章「女性の管理職比率30%をどう実現するか」では、女性の管理職が少ないことの主因として、
(1)長期継続雇用を前提とした年功的な内部昇進の雇用慣行
(2)専業主婦をもつ世帯主を暗黙の前提とした長時間労働や頻繁な転勤などの働き方
(3)専業主婦世帯を優遇する税制や社会保険制度と、子育てや介護を家族の基本的な責任としている社会制度の残存
の3点を挙げています。
 第4章「『年齢差別』からの解放」では、「企業が負担する社会保障費を抑制することが、雇用需要を増やすために効果的となる」として、「男女にかかわらず高齢者が働き続け、経済成長に貢献するとともに、勤労世代の一員として税や社会保障負担の担い手となることが必要とされる」と述べています。
 そして、「定年退職制を廃止し、貴重な高齢労働者の効率的な活用を図るためには、現行の雇用慣行を前提とした付け焼き刃の対策ではなく、年齢にかかわらず仕事能力に応じた働き方と賃金を受け取れる『年齢に中立的(Age-free)』な雇用システムへの改革が求められる」としています。
 第6章「不安定雇用を助長する労働者派遣法」では、「派遣労働についての最も大きな誤解は、『派遣の規制緩和で非正社員数が増えた』という論理」であり、「非正社員の傾向的な増加は、雇用保障のある正社員への需要を支えてきた過去の高い経済成長の減速の結果であり、むしろ正社員の問題である」と述べています。
 第7章「労働契約法の正しい活用を」では、「従来の正社員だけを『良い働き方』として保護し、それ以外の働き方を規制で抑制するのではなく、無期・有期の雇用契約と、有期契約でも直接雇用と間接雇用など、多様な働き方の選択肢を広げるためには、それらの間の均等待遇について、法律上、担保することが基本となる」と述べています。
 第9章「日本的雇用慣行の相互補完性:なぜ『岩盤規制』なのか」では、「欧米の大学では、修士号・博士号という『タテの学歴』が重視されるのに対して、日本では入学の難易度の高い大学の学士号がより高い評価を受ける『ヨコの学歴』が重視される」と述べています。
 本書は、日本における働き方を考える上で基本的な論点をコンパクトにまとめた一冊です。


■ 個人的な視点から

 タイトルこそ威勢のいいものではありますが、内容的には比較的オーソドックスな理論の解説がされており、労働経済学の世界への入門書として一つの入口になるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・日本の雇用慣行のどこがおかしいのかを考えたい人。


2015年4月18日 (土)

人事評価の「曖昧」と「納得」

■ 書籍情報

人事評価の「曖昧」と「納得」   【人事評価の「曖昧」と「納得」】(#2372)

  江夏 幾多郎
  価格: ¥799 (税込)
  NHK出版(2014/11/6)

 本書は、「人事評価が本質的に抱えている構造的な制約」である、「自分(従業員)の評価の背景が『曖昧』にしか伝わってこない」という「組織の事情」ともいうべき難点を重視した中で、「幅広い従業員に評価に納得してもらう」道筋を示そうとするものです。
 著者は、「現状に満足できないが、とりわけ強い不満があるわけでもないという、多くのビジネスパーソンが人事評価において経験しているであろう『宙ぶらりん』な状態をイメージ」し、「こうした人々が、人事評価のおかしさに目を向けつつも、人事評価以外の様々な経験からなる職業生活全般を射程に入れながら、『実は全体としては、そんなに悪い日々を過ごしているわけではないのかもしれない』と思えるようになって」もらうとともに、「こうした状況に直面している評価者や人事担当者が、『人事評価制度の運用を可能な限りよりよくすることは諦めないものの、より視野を広げて他の取り組みも交えることで従業員を支えよう』という思いを新たにし、従業員とのかかわりをさらに築くこと」を目的として挙げています。
 第1章「人事評価の成り立ち」では、「日本企業では、ある年齢グループ内で相対的に優秀でないと判断される人を昇進レースから『ふるい落とす』ための手段として、能力評価を重視して」きたとして、「組織のピラミッドに合った形で年功序列的な人員配置を実現するために、能力評価を併せて導入した可能性もある」と述べています。
 そして、「人事評価上の様々な取り組みは、評価及び処遇における従業員間の格差を適切な形で設けたい、という企業側の問題意識によるもの」であり、「企業経営を円滑に進めるためには、評価の高低にかかわらず、従業員一人ひとりに納得してもらう必要がある」と述べ、「納得」について、「今後の仕事に対する前向きな気持の減退をともなわない、評価や処遇への従業員の反応」と定義しています。
 第2章「曖昧化する人事評価」では、従業員が感じる人事評価の問題点として、
(1)評価の結果そのものへの不満
(2)評価の背景が評価制度の「タテマエ」と異なっていると判断した上で抱かれる不満
(3)評価の背景がよくわからないことへの不満や不安
の3つのタイプを挙げています。
 そして、「人事評価における曖昧さは、良い場合でも従業員を不安に、悪い場合には不満に陥れる傾向にある」として、「曖昧さの原因の多くが、複数の評価者の複数の価値判断を評価に反映させざるをえないという人事評価制度の運用のあり方、ないしは、『原資の総枠をあらかじめ定めてから』といた経営側の大前提に由来するもの」であるため、「こうした構造的要因に対し、個人としての被評価者ないしは評価者は、基本的には無力」だと述べています。
 第3章「曖昧さの中での納得」では、「曖昧にならざるを得ない評価に従業員が納得する道筋」として、
(1)人事評価に関する当初の方針が実現しているのかどうかわからないような、曖昧な事態になっていることについて、それにはそれなりの事情があることを、評価者が置かれた状況を踏まえつつ理解することで、従業員が状況を受け入れられるようになること。
(2)自分自身の状況を振り返って、曖昧な人事評価を受け入れる。
(3)従業員が評価や処遇への疑問や不満を持っている自らを戒め、自分以外の人々によって行われる評価をむしろ「バイアスから解放されているもの」と捉える、ないしはそういう可能性を想定する。
(4)目の前の仕事に没頭する中で、評価や処遇への関心を弱める、あるいはそれを強く持つことをよしとしない。
などの点を挙げ、「企業から与えられる『過程の公正』に頼らず、従業員自身の『ものの見方』の変化により、結果として現れた評価や処遇に納得する」ことは可能だと述べています。
 また、「評価者には、人事評価制度の運用の中で公正さを可能な限り追求することが求められる反面、それが実現される可能性は必ずしも高いものでは」ないことから、「そこには過剰に拘泥せず、管理者としての日常の業務管理の質をさらに高めることに力を注ぐ方が現実的な対応と言える」と述べています。
 第4章「職場や従業員に寄り添う人事評価」では、「『公正な人事評価』を目指すことは当然ですが、それでも発生する想定外の事態に企業組織全体で対応するため、別の役割や目的も織り込んでおくことも必要」だとして、「現場の側が柔軟な運用をしやすいような人事評価制度を提案するためには、まずはこうした『ウラ機能』がいかなるものであるかを確認しておく必要」があるとして、
(1)評価の結果のみならず、それを生むに至る種々のコミュニケーション機会を活かして、従業員を動機づける。
(2)評価制度の運用を通じた動機づけのみならず、評価制度の転用を通じて、職場の課題達成を行う。
の2点を挙げています。
 そして、「企業組織にとってのみならず、従業員個人にとっても、人事評価が必要である理由」として、「人事評価というものは、企業が『適材適所』を実現するためのみならず、人びとが自らの適職を知る、すなわち『これだけできる』『ここならできる』ということを知るための必要な手段」でもあると述べています。
 本書は、人事評価の「納得」を支える隠れた役割に光を当てた一冊です。


■ 個人的な視点から

 人間誰しも、他者から「評価」されるということには抵抗のあることではありますが、組織にとっても個人にとっても重要な事なので理解を深めたいものです。


■ どんな人にオススメ?

・評価に抵抗感のある人。


2015年4月16日 (木)

宇宙飛行士の採用基準 例えばリーダーシップは「測れる」のか

■ 書籍情報

宇宙飛行士の採用基準 例えばリーダーシップは「測れる」のか   【宇宙飛行士の採用基準 例えばリーダーシップは「測れる」のか】(#2370)

  山口 孝夫
  価格: ¥864 (税込)
  KADOKAWA/角川書店(2014/7/9)

 本書は、「JAXAの宇宙飛行士たちはどんな採用基準でその『ライト・スタッフ(正しい資質)』を見出され、『飛べる人材』として育てられ、宇宙へと飛び立っているのか」、そしてJAXAが「宇宙開発の最先端に、いかにして彼ら、飛べる人材を送り込んできたのか」を述べたものです。
 第1章「宇宙を『職場』にする生き方」では、「宇宙飛行士は人類の代表として宇宙へ行くという名誉と誇りのある職業であるとともに、常に危険と隣り合わせの、命がけの職業」だとした上で、「宇宙飛行士になるべく選抜試験に応募し、高い倍率の選考過程を進んでくる人はみな、飛び抜けて優秀な人材」であり、「幼い頃からの宇宙飛行士への憧れを携えてやってくる応募者の中には、将来の国益に大きな貢献をするであろう人、日本の産業を牽引するであろう人が、けっして少なくありません」と述べ、「日本の未来を担い、世界でトップクラスの仕事を成し遂げるような優秀な人材を採用することは、世界や日本の未来への影響と不可分であり、重大な責任が伴」うとしています。
 そして、「宇宙飛行士のプロフェッショナリズム」について、「出口は様々」としながらも、入り口は、「徹底的に技術を磨く」ことだと述べています。
 第2章「計算できない『心』をどう扱うか」では、「人間のパフォーマンスには、周囲の環境や健康状態といった物理的な要因、その時の気分や過去の経験などからくる心理学的な要因などが複合的に作用」しているため、「人間が使うものを設計するとき、人間のことを知らなくてはいいものはできない」と述べています。
 そして、「作業が忙しくなり、ストレスが増大すると、注意力が低下して仕事のエラーが起こり」、「予定通りに作業が完了しないばかりか、さらに重大な問題が起こることも想定」され、「最悪の場合、小さなエラーの積み重ねによって国際宇宙ステーションの緊急事態を招くこと」もあるとして、「宇宙飛行士のストレスをマネジメントすることは、宇宙飛行士の生命そのものに直結している」と述べています。
 また、「宇宙では、宇宙飛行士の恐怖や不安も『個人の問題』で済ますことはできません。国際宇宙ステーションで高い成果を上げ、彼らを地球に無事に還すために、それらをマネジメントする方法を絶えず考え続けるのも、私達の重要な仕事」だと述べています。
 さらに、2003年のスペースシャトル「コロンビア号」の事故に関して、「スケジュールや予算などスペースシャトル計画全体を束ねる管理部門が、専門家の集まりである技術部門を見下すような態度を取った」ことについて、「特に、管理部門の幹部に組織的な上下関係の意識が強く、『下位の者は自分たちの指示に従っていれば良い』といった言動が目立った」として、「NASA内の組織構造は、『権威勾配が異常に大きい』」ことを指摘し、「一般的にはこの勾配が急であるほど、その組織には柔軟性がなく、脆弱性が増える傾向があると言われて」いると述べています。
 また、「上司が注意するときに一番やってはならないこと」として、「あとで言おう」を挙げ、「タイミングを逃して注意してしまうと意味をなさないばかりか、いかに柔らかく言ったとしても、相手を傷つけたり、反感を買ってしまう」と述べています。
 第3章「宇宙飛行士の採用基準」では、「一般的なイメージでは、応募者の中からライト・スタッフ、つまり宇宙飛行士の資質を持つ適格者を私たちが見抜き、『ずばりあなた、採用です』と選び出していると思われているかも」しれないとして、「こうした、一定の評価基準を満たす適格者を集団から選ぶ方法を専門用語で『セレクト・イン(SELECT IN)』」と呼ぶとした上で、実際には、「不的確な人を母集団から排除していく方法である『セレクト・アウト(SELECT OUT)』を採用していると述べています。
 そして、「宇宙飛行士を見ていると、本当のフォロワーというのは本当のリーダー、本当のリーダーというのは本当のフォロワーだということに気づかされ」るとして、「自分が集団に対してできることを正しく把握でき、行動に移すことができる人にとっては、リーダーとフォロワーというものはただの役割の差でしかありません。フォロワーだけで終わる人、リーダーだけで終わる人というのは、実は集団行動における自己管理能力の段階で不十分」だと述べています。
 また、「宇宙飛行士の選抜基準をつくる上で大切なことは、宇宙飛行士の資質つまり『測るべき能力』と『測り方』がきちんと対応していること」だとした上で、「環境面、仕事面、心理・精神面から『測るべき能力』と『測り方』が適切に模索され、評価基準がつくられなければ『適切者』を選び出すことはできません」と述べ、「JAXAの選抜試験では常に、定性的なものを定量化して評価する仕組みを模索して」いるとしています。
 さらに、「私たちは自分たちの目が神様から程遠く不確実なことを知って」いるからこそ、「私たちは人の審美眼を時には正しく信じ、時には正しく疑うことが大切」だと述べています。
 第4章「『飛べる人材』の育て方」では、「心理学的な分析では、『怒られて伸びる』可能性はあまり高くない」として、「怒られるとその場では確かに被訓練者に学習が促されるのですが、長期的な視点で見ると、怒られて学んだことは忘れやすく、身につかないということが訓練の現場ではよく見られます。さらに、学習したことの応用力も低下するようです」と述べ、「心理学的には、信頼関係のある訓練者に、穏やかでストレスがかかっていない状況で教えられるほうが、被訓練者の頭にも入りやすく覚えやすい上に応用が効くとされて」いるとしています。
 そして、宇宙飛行士が訓練で使っている訓練教材や訓練設備の作り方について、入念なチェックを重ねて慎重に作成する理由として、「データが古い情報や間違った手順をトレーニングで身につけてしまうこと」を意味する「ネガティブトレーニング」を防止することを挙げ、「ネガティブトレーニングは、実際のミッションにおいて致命的なミスを誘発しかねないという点から見れば、訓練における最も重大な事故の一つといえるかもしれません」と述べています。
 また、「宇宙飛行士が仕事で失敗しないために身につけている能力の一つ」として、「状況認識(Situational Awareness: SA)」を挙げ、「情報探索・現状理解・将来予測」の3つが合わさったものがSAであり、「この3つのプロセスが相まって働いてこそ、事故が起こらない=失敗しない意思決定をすることができる」と述べています。
 さらに、宇宙飛行士の口癖として、「ビッグ・ピクチャーは何か?」というものを挙げ、「宇宙飛行士は常に、物事の詳細ではなく、まずは全体像を把握するための根幹を知りたいと考える」とした上で、「人が仕事でミスをするときは、不必要な情報が過剰に与えられ、膨大な情報の中で『間違い探し』を強いられていることが多い」と述べ、「『ムダな情報は捨てろ』と言っても怖くてなかなか捨てられない。しかし、捨てる勇気を持っている宇宙飛行士にはムダがありません。だから、コミュニケーションがうまいのです」と述べています。
 著者は、「JAXAの地上職員は、宇宙飛行士と一丸になって、訓練では失敗させ、実際のフライトでは失敗しないように共に命がけでミッションに挑んでいるのです。宇宙飛行士だけには失敗させません。私たちは成功だけでなく、失敗するときも、いつも一緒なのです」と述べています。
 本書は、宇宙飛行士がどうやって選ばれ、育てられているかの一端を窺い知ることができる一冊です。


■ 個人的な視点から

 『宇宙兄弟』の影響で、仕事としての宇宙飛行士についてのリアリティが高まったような気がします。


■ どんな人にオススメ?

・宇宙に就職したい人。


2014年1月 3日 (金)

女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座

a■ 書籍情報

女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座   【女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座】(#2243)

  白河 桃子, 常見 陽平
  価格: ¥987 (税込)
  中央公論新社(2012/10/9)

 本書は、「ある意味頭の中が『お花畑』状態の、女子たちの夢を消すこと」を目的としたものです。
 著者は、「女子が幸せになるための10ヶ条」として、
(1)いつか子供を持ちたい人なら出産
(2)仕事は細く、長く、常に傍らにあるもの
(3)とにかくやってみる、ダメだったら撤退する
(4)長期的な目線を持つこと
(5)自分で考える力、自分で選択する力
(6)英語をやろう
(7)労働リテラシー
(8)勉強熱心になりすぎるな
(9)職場に味方を作る
(10)専門性を身につけた方が絶対つぶしが利く
の10点を挙げています。
 1時間目「[概論]就・妊・婚――三大『活』はつながっている」では、自活女子の最高峰として漫画家の西原理恵子氏を挙げ、「『どうしたら夢が叶うか?』って考えると、ぜんぶを諦めてしまいそうになるけど、そうじゃなくて『どうしたらそれで稼げるか?』って考えてみてごらん」
という言葉を紹介しています。
 3時間目「女子学生の就活・常識のウソ」では、「女子学生が就活で悩むポイント」として、
(1)「産んでも働く」を実現する就職先選びとは?
(2)女子が活躍できる業界・企業はどこなのか?
(3)女子は就活に有利なのか、不利なのか?
の3点を挙げた上で、「女子学生に足りないと感じること」として、
・女子学生は会社や社会のことを知っているのか? (考えが甘いのではないか?)
と指摘しています。
 4時間目「女子学生のための“納得就活”のコツ」では、「就活がうまくいく女子学生の5つの法則」として、
(1)「本当はどうなのか?」と考えるクセがある
(2)男友達が多い
(3)自分に期待されていることに気づいている
(4)「現実の目標」を持っている
(5)「女子らしさ」と「女を捨てること」を両立させている
の5点を挙げる一方で、「就活がうまくいかない女子学生の5つの法則」として、
(1)真面目で勉強熱心(でも、自分の頭で考えない)
(2)憧れ、思い込みだけで業界・企業・職種を選ぶ
(3)自分の課題に気づかない、放置する
(4)自分だけで就活しようとする
(5)「かわいく」ない
の5点を挙げ、「真面目にやっても報われるわけではない」ことを理解して欲しいと述べています。
 そして、「就活の隠れた問題」として「親が就活にうるさいくらいに介入する」ことを指摘しています。
 5時間目「女子が働きやすいのはどんな職場?」では、「地方の女性公務員は独身も多い」理由として、「地方に優秀な女性がUターンして就職すると、どうしても公務員という選択が多くなる。しかし優秀な男性は県外にでてしまう。地方では優秀な女性たちは、結構、伴侶探しに苦労します」と指摘しています。
 また、ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏の、「いま、女性活用が行き詰まっているのは、子育てとの両立の問題を女性だけの問題として処理しようとしたからです。本当の問題は長時間労働と生産性の低さ」だという指摘を紹介した上で、「日本の長時間勤務や勤務年数の長さで評価されるシステムでは、仕事をする女性を幸福にするのは難しい」と述べています。
 7時間目「後悔しないための『結婚』とお仕事の基礎知識」では、「いま婚活市場で一番苦戦している」のは、
(1)「どうせキャリアは無理! 普通のお嫁さんでいいの」の「どうせ系」女子
(2)「憧れの仕事一直線」女子
(3)「短距離型バリキャリ志望」女子
の「稼ぎは男性に依存したい系女子」だと指摘しています。
 そして、「婚活しても結婚できない理由」のほとんどは、「養われたいと思っている女性に対して、養える、または養いたいと思う男性の数が圧倒的に足りない」からだと述べています。
 本書は、就職→結婚→出産の3つを合わせて考えることの大切さを説いた一冊です。


■ 個人的な視点から

 「就・妊・婚」のどれも完璧にこなそうと思うとどこかにしわ寄せが集まるような気がしてなりません。


■ どんな人にオススメ?

・トレードオフだと思って悩んでいる人。


2011年1月22日 (土)

人材の複雑方程式

■ 書籍情報

人材の複雑方程式   【人材の複雑方程式】(#1962)

  守島 基博
  価格: ¥893 (税込)
  日本経済新聞出版社(2010/5/11)

 本書は、2000年代前半に、「より深い部分で、導入された人事施策や、経営改革の影響により、人財の育成や活性化においていくつかの複雑な変化が起こった」として、「企業経営の中に置ける人という資源の重要性、人材育成機能や働きがい提供、働く人が経営に対して持つ信頼感、現場リーダーの役割など、本来、経営の中で大切にすべき、人にまつわる基本要素の既存や弱体化」をあ挙げ、「こうした深いレベルで起こっている変化について危機感を持ち、何らかの警鐘を鳴らしたい」という目的で著されたものです。
 第1章「問われる日本企業の職場とリーダーシップ」では、「正社員の雇用に関する規制緩和が企業経営にとって持つ意味」として、「それでもやはり競争力の源泉は人に宿る」が、「同時に今後、正社員の入れ替えや増加、削減の柔軟性は高くなる」と述べ、「人材の効率的活用と、長期的にしか便益の発生しない人材への投資をどうバランスさせるかが経営者にとって大きな課題となる」としています。
 また、職場の基本機能として、
(1)協働の場
(2)人材育成の場
(3)コミュニティとしての職場
(4)同質化の場
の4点を挙げています。
 また、「従業員を信頼しない(または信頼しないというメッセージを伝える)コンプライアンス経営」について、2種類の問題を引き起こす可能性があるとして、
(1)従業員を信頼しない企業には、経営を信頼しない従業員が育つ
(2)ルールに従うこと自体が目的になり、自律的にかんg萎えることをやめてしまう
の2点を挙げ、「コンプライアンス経営の土台は従業員に対する信頼」にあり、「人間行動の原理に従うと、今、多くの企業が行なっているルール重視のコンプライアンス活動はやや問題があるように思う。内部ルール遵守先行で、働く人の自律性を否定するようなケースが多いからだ」と述べています。
 第2章「なぜリーダーが育たないのか」では、「現場リーダーの現実感を増し、魅力を高めるための要点」として、
(1)現場で必要とされるリーダーシップは、極めて個別的である
(2)リーダーシップは発達的な現象である
(3)多くの現場リーダーは、戦略家であるよりも、翻訳家である
(4)リーダーとはトップマネジメントという言葉で想起されるようなリーダー一種類ではない
の4点を挙げています。
 そして、「過去日本企業は集めた人材情報を有効に活用して、丁寧な人材活用を行ってきた」が、「今、そうした情報が失われている。また劣化している」と述べ、その原因として、
(1)人事制度事態の変革によって、人財把握規準が、大きく成果や能力などの集中されてきたこと。
(2)企業の分断
(3)人材情報を集め、蓄積する部署としての人事部が弱体化した
(4)個人情報保護の観点から、人事部が収集した情報を現場で活用することが難しくなってきた
の4点を挙げています。
 さらに、フォロワーに求められる要件(フォロワーシップ)にちうて、
(1)リーダーが語っているビジョンの正しさと実現可能性を評価する能力
(2)選んだ対象へ意図的に努力を集中する能力
(3)常に批判的にリーダーを評価し続ける能力
の3種類の能力で成り立っていると述べています。
 第3章「人と組織の関係をどう考えるか」では、「企業には育成機会を資源として従業員に配分することで、企業の競争力を維持することが求められる」が、「データを見るかぎり、賃金面での衡平原則(つまり成果主義)に比べてその分配原則について、未だ多くの企業で衡平原則による配分を行うという視点には立っていないようだ」と述べ、「企業にとって必要なのは、長期的な競争力の観点から、平等、公平、どちらの分配原則が適合的なのかを見極め、それを一貫して実施していくこと」だとしています。
 第4章「働き方革命の始まり」では、「ワークライフバランスに関する3つの誤解と、それに基づく難しさのイメージをなくすことが、この考え方を企業に根付かせるのには必要」だとして、
(1)みんながワークとライフをバランスさせなければならない
(2)ワークライフバランスは働き方の変革を引き起こす
(3)ワークライフバランスは企業の競争力を向上させる
の3点を挙げています。
 そして、「多くの問題の根源に、正社員の働き方や、それを前提とした人材マネジメントのあり方がある」として、「そろそろ、正社員の働き方や人材マネジメントのあり方を変えよう。そして、正社員であり続けるために、雇用保障や高い賃金と引換に、極めて高い会社忠誠心と長時間労働を求められるのではない働き方が必要だ」と述べています。
 そして、「働き方は、組織設計のあり方や企業経営の方法と密接に連動しており、組織の中で仕事をしている私たち一人ひとりがどんなに努力しても、組織全体が変化しないと改革は進まない」として、
(1)日本企業の顧客志向
(2)日本企業における職務の設計
(3)日本人の労働倫理
の3種類の「敵」との対応を工夫することが必要だと述べています。
 第5章「働きやすさと働きがいを目指して」では、「働きやすさとは、職場や仕事の『働き勝手』の良さ」だとして、「こうした規準をどれだけ考慮して職場と仕事を設計するかが、働きやすさを決定する」と述べ、「働きがいと働きやすさは表裏一体のものなのである」としています。
 本書は、複雑な人材マネジメントを一つひとつ解きほぐしていく一冊です。


■ 個人的な視点から

 以前、人事関係の仕事をしていたときには集中的に人事の本を読んでましたが、最近は少し読まなくなっていたのでフォローしてみました。過去に読んだ蓄積のある分野は後追いで読むのが読みやすくて楽です。


■ どんな人にオススメ?

・2000年代の人事マネジメントを総括したい人。

2009年12月24日 (木)

新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか

■ 書籍情報

新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか   【新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか】(#1799)

  樋口弘和
  価格: ¥777 (税込)
  光文社(2009/1/16)

 本書は、「人材次第で、ビジネスそのものが変わる」として、「企業と学生の双方にとってミスマッチのない採用が実現、新入社員に『期待通り』のパフォーマンスを発揮してもらう」ことを目的としたものです。
 第1章「上司の成功体験が通用しない時代がやってきた」では、「最近の若者を受け入れた企業の現場で何が起きているか」について述べたうえで、「過去の成功体験から部下を指導する時代ではなくなった」として、「時代が大きく変わって、自分たちが教えてもらっていない管理方法をやれといわれているようなもの」だと述べています。
 第2章「こんなはずではなかった!?――採用ミスの『真相』」では、採用の現場から覗いた「採用の失敗学」として、「こういう人だけは採用してはいけない」というダメ人材の典型的なタイプとして、
(1)急増する草食獣
(2)受験勉強だけのスペシャリストに要注意
(3)語学力や資格に弱い日本人
(4)二浪、二流以上はリスキー・・・プライドが高く、決断力がない
(5)頑ななマイペース学生
(6)家庭教師、塾講師はアルバイトの王道だが……
(7)情報メタボな若者たち
(8)マニュアルを鵜呑みにする「ハウツー君」
(9)誰もが採用したくなるルックス
(10)幻想に過ぎないキャリアビジョン
の10のタイプを挙げています。
 第3章「一流の人材はどこにいるのか?」では、「一流人材は、簡単には人に相談しません。悩んで、自分で決める。最後は、自分を信じて直感を大切に」すると述べた上で、「一流の人材は、トップクラスの上司がいる部署に配属しなくては」ならないと述べています。
 第4章「間違いだらけの日本の採用」では、「将来の活躍人材はどうあるべきか」などと難しいことを考えずに、「いま、実際に活躍している若手人材のコピーを採ろう」とすると述べています。
 また、ここ数年の変化として、「面接がとても丁寧になっている」ことを挙げ、「企業側は、就職活動をする学生たちに、ネットで悪口をかかれないよう、丁寧に我慢強く接するようになってきた」として、「いわゆる『圧迫面接』がなくなってきて」いると述べています。
 また、自己PRが駄目な理由として、「会社に入ったら、評価は他人(ほとんどの場合は上司)がおこなうものであり、そこの自己PRが入り込む余地はない」ことを挙げています。
 第5章「優秀な人材を見抜く"雑談面接"」では、「最終面接とか実質的な重要な選好をする場面」では、「お互い素になって話をするような濃い面接にすべき」だと述べています。
 第6章「かまってあげる育成」では、「企業を将来にわたって支えるトップパフォーマー」については、「採用時の資質で将来伸びるかどうかの8~9割が決まる」として、「現在の採用と社内教育は一体化しつつあり、内定段階で後の教育コストを見積もるような判定をしておかないと、全体としての調達コストが見えづらくなる」と述べています。
 本書は、企業が求める人材と採用の現場を描いた一冊です。


■ 個人的な視点から

 資本も技術もいずれは真似されてしまうことを考えると、企業の競争力の源泉はまさに人にあるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・採用の大切さを自覚していない人。

2009年12月12日 (土)

部下を上手に伸ばすOJT 元気な公務組織の処方箋

■ 書籍情報

部下を上手に伸ばすOJT 元気な公務組織の処方箋   【部下を上手に伸ばすOJT 元気な公務組織の処方箋】(#1787)

  高嶋 直人, 渡邊 直一
  価格: ¥1,680 (税込)
  公務研修協議会(2008/12)

 本書は、「公務職場での人材育成に関する基礎と応用」をテーマとしたものです。
 第1章「組織DNAの継承と人作り」では、「組織DNA」とは「いわば組織文化」だとしたうえで、「組織文化は、組織内で共有される暗黙の前提になっている価値観や行動規範を形作るものであり、外部の研修や組織外の人からは学び取ることが」できないとして「人作り」に直結するものだと述べています。
 そして、組織DNAの継承に重要なこととして、「部下から見た理想の上司が身近にいるか」を揚げ、「上三年にして下を知り、部下三日にして上を知る」という言葉を紹介しています。
 また、部下育成がうまく機能しない理由として、
(1)上司が日常業務に忙殺されて、部下の育成に時間が取れなくなっている。
(2)成果の現れやすい当面の課題解決や達成に集中し、長期的な課題で成果の現れにくい部下の能力開発がおろそかになっている。
(3)働き方の多様化、職員意識の変化、さらには非正規職員の増加により、OJTを行うべき上司が部下の育成に情熱をもてなくなっている。
の3点を挙げています。
 第2章「OJTの基礎」では、「人材育成においては、相手の欲している、あるいは必要としているときに、その状況にあったアドバイスや助言をすることが効果的」だとして、
(1)業務の変化があって悩んでいる時
(2)努力しているのに成果が思うように上がらない時
(3)仕事が軌道に乗り自信過剰になっている時
の3つのタイミングを挙げています。
 また、OJTに関する誤解として、
(1)OJTは、同じ部署の上司が部下に行うものである。
(2)OJTは、部下の育成を図るのであって上司の成長には役立たない。
(3)OJTは、画一的な指導法がある。
の3点を挙げています。
 第3章「OJTの応用」では、「OJTを行ううえで効果的な手法や、従来型のOJTを発展させていくために有効な考え方」として、双方向のコミュニケーションを円滑に行うために不可欠な「コーチング」や、近年、効果的な手法として取り上げられている「メンタリング」などの手法について解説しています。
 また、「高業績者の行動特性」と言われている「コンピテンシー(competency)」について、その発端となったアメリカ国務省の調査について、高業績の外交官に共通する傾向として、
(1)異文化に対する感受性がすぐれ、環境対応力が高い
(2)どんな相手に対しても人間性を尊重する
(3)自ら人的ネットワークを構築するのがうまい
の3つの項目があったことを紹介しています。
 第4章「OJTの実践」では、部下の様子がおかしいと思ったときに、話しかける際に注意する点として、
(1)プライバシーを漏らすことはしない
(2)「頑張れ」などと闇雲に励ますことをしない
(3)わからないのに適当なアドバイスはしない
の3点を挙げ、「本人が嫌がっている場合は、無理に飲みに行くこと」を避けるべきだと述べています。
 第5章「管理職とリーダーシップ」では、「成果を挙げた部下に対しては、そのフィードバックとして『認めること』や『褒めること』が重要」だとした上で、その際のポイントとして、
(1)タイミング良く褒める
(2)具体的に褒める
(3)心から褒める
の3点を挙げています。
 また、管理職も、「最近ではプレーイングマネジャーとして自ら成果を挙げつつ部下の育成も求められて」いるとして、
(1)優先順位付けをした「やり過ごす力」
(2)部下の安心を構築する「サポート力」
(3)組織内の納得感を高める「ファシリテーション力」
(4)部下の行動や悩みを把握する「気配り力」
(5)明確に物事を伝える「コミュニケーション力」
などが、上司にとって新たに必要となったスキルであると述べています。
 第2部「進化するOJT」では、「人が育たなくなった」という声の背景には、「育てるべき立場の上司が部下を育てられない、育てない。」という意味合いが強くなったとして、
・管理職がプレーヤー化したこと
・仕事が恒常的に忙しくなったこと
・組織のフラット化で部下を持つ時期が遅くなり上司としての経験が少なくなったこと
などの原因を挙げています。
 また、タイムマネジメント意識を持つ意義として、一日や一週間の一定時間を「緊急ではないが重要なもの」に割くようにするなどの対策が必要であることを挙げています。
 本書は、管理職にとっての必須科目である「OJT」をわかりやすく解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は公務員の管理職研修をメインの対象としているものだと思いますが、管理職の心得としては一般的なものではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・管理職とは何かを知りたい人。

2009年11月17日 (火)

過労自殺

■ 書籍情報

過労自殺   【過労自殺】(#)

  川人 博
  価格: ¥735 (税込)
  岩波書店(1998/04)

 本書は、「今、日本の職場では、多くの労働者がみずからいのちを絶ち、残された遺族が悩み苦しんでいる」として、「闇に葬られている氏の実態を伝え、同じような悲しい死を繰り返さないための問題提起」を行っているものです。
 第1章「事例から」では、行方不明になって遺体が発見されるまでの間に、その父親を会社に呼び出し、「Aは、平成6年4月14日から会社を無断欠勤したまま今日にいたり、会社に対し種々ご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます」、「なお、この件に関しましては、貴社には一切ご迷惑をおかけしないことを誓約いたします」と書かれた「念書」を会社に提出するように求めたことが紹介されています。
 また、有名な大手広告代理店・電通のラジオ局に配属された2年目の社員が、死の直前には3日に1回は午前6時30分まで残業していたという「常軌を逸した長時間労働」に加え、酒を無理強いされるだけでなく、靴の中に注いだビールを飲まされたり、靴のかかとで叩かれたことで、「顔色が悪くなり、元気がなく、うつうつとした暗い感じになり、仕事に対して自信を喪失し、精神的に落ち込み、2時間程度しか眠れなくなった」と述べています。
 さらに、厚生省の事例について、「月50時間以上の残業をしている職員が62%にも及び、100時間以上が29%にも達している」として、「一部のキャリア組だけでなく、非管理職を含めたほとんどの職員が異常な残業時間を記録しているのが分かる」と述べています。
 著者は、これらの事例を通じて、「いずれの人も、生前、長時間労働や心労の重なる仕事に従事し、強いストレスを覚えて心身の不調をきたしている。医学的には、自殺をした当時、うつ病などの精神障害に陥っていたと推察されている」と述べています。
 第2章「特徴・原因・背景」では、「過労死110番」の活動から見える特徴として、
(1)脳・心臓疾患の過労死と同様に、幅広い範囲の労働者に広がっていること
(2)自殺に至る原因として、長時間労働・休日労働・深夜労働・劣悪な職場環境などの過重な労働による肉体的負荷、及び重い責任・過重なノルマ・達成困難な目標設定などによる精神的負荷
(3)自殺に至る過程において、自殺者の多くは、うつ病などの精神障害に陥っていたと推定される
(4)ほとんどの企業は、その原因を労働条件や労務管理との関係で捉えようとせず、従業員の死を職場改善の教訓に生かさず、遺族に対しても冷淡である
(5)過労自殺は、その実態がなかなか外部に伝わらない
の5点を挙げています。
 また、青年の自殺の特徴として、「入社1、2年で自殺した青年労働者は、就職前の予想をはるかに上回る仕事量、責任の重さに遭遇し、心身のバランスを崩してしまっている」ことを、「拘禁反応的自殺」と呼ぶことができるとしています。
 第3章「労災補償をめぐって」では、自殺事案での労災認定件数が極端に少ない理由として、
(1)そもそも労基署に遺族が労災を申請する件数がごくわずかなこと
(2)労働省が自殺の労災認定に大変消極的であり、認定のための基準として高いハードルを設定していること
の2点を挙げています。
 第3章「労災補償をめぐって」では、「労災と認められるのは自殺の中のごく一部に過ぎない」として、労働行政が長年にわたり、「業務に起因したと思われる多くの自殺を『業務外』と判断し、遺族の請求をしりぞけてきた。とくに過労・ストレスによる自殺=過労自殺に関しては、ほぼすべて『業務外』と判断してきた」と述べています。
 また、公務員の過労自殺に関して、千葉県流山市議会事務局の職員が、東葛飾市議会連絡協議会の海外視察に随行し、精神的なプレッシャーを受けたことから、自殺に至った事案を紹介しています。
 第4章「過労自殺をなくすために」では、過労自殺は、「過労死と自殺が重なる領域の事柄」だとして、その予防には、「『過労』を解消していく視点からのアプローチと、『自殺』を予防していく視点からのアプローチの両方が必要になってくる」と述べています。
 そして、「公務員の職場でも時間のゆとりが失われている」として、「大半の職員が手当て規定どおりの残業代を支払われておらず、50%以下しか支給を受けていない職員が6割近くに上る」と述べたうえで、「公務員自身に、社会的に意義ある仕事をしているのだから働きすぎても仕方がない、との意識があるとすれば、そのような美徳観念を考え直す必要がある。もともと、官民を問わず、社会的に意義のない仕事などは存在しない」と述べています。
 本書は、なかなか労災認定されなかった「過労自殺」の問題の難しさを指摘した一冊です。


■ 個人的な視点から

 仕事で電通の2年目の社員さんにお会いする機会があります。たまに眠そうにしていることもありますが、深夜にメールが入ることもあり、「やっぱり朝6時まで仕事をしているのだろうか」とか、「やっぱり靴でビールを飲まされているのだろうか」とか、「やっぱりラップで(ry」とかを考えると心配で指摘できません。


■ どんな人にオススメ?

・責任感の強い人。

2009年11月13日 (金)

天職の見つけ方―親子で読む職業読本

■ 書籍情報

天職の見つけ方―親子で読む職業読本   【天職の見つけ方―親子で読む職業読本】(#)

  キャリナビ編集部
  価格: ¥714 (税込)
  新潮社(2004/08)

 本書は、「キャリナビ」のウェブサイトのメインコーナーである「この人がカッコいい!(お仕事人辞典)」に掲載された学生記者が作成した記事を再編集したものです。著者は、ほとんどの人は、「自分がなれもしないプロ野球選手の就職過程については知っている」のに、「『世の中のいろんな仕事』の実態も分からないまま、なんとなく決めてしまっている」と述べています。
 第1章「10代で仕事を決めた」では、メイキャップ・アーティストの下積み生活として、「最初の3ヶ月は給料なし。荷物持ちや、先生の使った鏡を拭くといった道具拭きをしていた。意外なほど"徒弟制度"が残っていて、手取り足取りの指導、なんてものはまったくなかった」ことを紹介して、急に仕事が入るので、「働き出して3~4年は友達と会う約束ができ」なかったと述べています。
 また、ウィーン菓子店「シーゲル」店主の話として、「先輩たちを抜くにはどうしたらよいか」考え、ヨーロッパに留学する費用を捻出するため、昼間はホテルで働き、夜の8時から翌朝6時まで印刷所でアルバイトをして、「この時期の寝る時間は、ホテルか印刷所のどちらかが休みのときと、通勤時間だけ」だったことを紹介しています。
 第2章「大学で仕事を決めた」では、テレビ朝日の番組プロデューサーが、「日本人って、仕事選びに深刻になっちゃうでしょ。だから考えすぎて、"なぜ"深刻に考えていたかを忘れるんですよ。本当は、楽しく生きたいから、そのためにどういう仕事をしようかじっくり考えるんですよね」という言葉を紹介しています。
 また、経済産業省のキャリア官僚が、「給料が安定」している代わりに「とてつもない責任と重圧を背負うことになる」として、「『日本中でその問題を担当している人はその人しかいない』という、代わりのいない仕事だからこそ、若いときに任される仕事の権限は大きい」が、事前に「死ぬほど働くぞ」と言われていたが、「入ってみるとやっぱりすごく大変だった。みんな死ぬほど働いて死にそうなんだ。それくらい『当たり前に厳しい』世界だった」と語っていることを紹介しています。
 さらに、写真家の話として、「百点はプロでもアマチュアでも取るんだけれども、プロは常に85点を求められる」、「今は95点くらい取っていないと駄目かもしれない」と語っていることを紹介しています。
 第3章「大人になって仕事を決めた」では、逗子市長(当時)の長島一由氏が、フジテレビの勤務時代の経験として、「組織は怖いなと思うのが、ある日突然、人事の裁量で自分の希望外のところに異動させられるっていうこと。だから『いつ会社辞めてもいいや』と考えられるように、どこかに心の保険があったほうが、逆にその仕事で冒険できるのでいいのではないかな」として、自らが夜間開校の大学院で修士号を取った経験を語っていることを紹介しています。
 本書は、自分の仕事の決め方を考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書に登場する、経済産業省の「佐分利」さんは、珍しい名前なので印象に残っていたのですが、名刺を確認したらやっぱり去年お会いした人でした。


■ どんな人にオススメ?

・天職を探したい人。

2009年11月 4日 (水)

公務員入門―「不況の時はやっぱり公務員」のウソ・ホント

■ 書籍情報

公務員入門―「不況の時はやっぱり公務員」のウソ・ホント   【公務員入門―「不況の時はやっぱり公務員」のウソ・ホント】(#)

  山本 直治
  価格: ¥1500 (税込)
  ダイヤモンド社(2009/5/29)

 本書は、「不況時はやっぱり公務員だよね」という言葉に関して、「一見うらやましいことこの上ないように見える公務員の生活が、蓋を開けてみたら実はおぞましいものであった、ということもあるかもしれない」と言う問題意識から、「世にいう公務員の恵まれた環境や仕事の実態のほか、職業としての向き・不向きなどについて、公務員から民間企業への転職経験を持つ」著者が解説したものです。
 第1章「『公務員』とひとくくりでいっても……――最初に知っておくべきこと」では、「公務員と言うのは大きなカテゴリーの中に、スポーツや芸の世界と同じようにさまざまな『種目』があり、それぞれのなり方も、仕事内容も、待遇もかなり違う」ことを指摘しています。
 そして、「自分が望むキャリアパス」を選ぶ方法として、「公務員人生のスタート地点、いわば本籍地をどこにするかを決めること」を挙げ、「公務員という職業を選択し勤務を続けていくに当たり、自分のキャリア(職務経歴)の構築について主導権を発揮できる最大かつ唯一の機会が、本籍地の選択」だと述べています。
 第2章「公務員の待遇は恵まれているのか?――収入面を検証する」では、一般的に公務員をうらやむ場合、
(1)給与や福利厚生がいい
(2)仕事が楽
(3)安定している(クビにならない)
の3つが「ゴールデントライアングルを形成している」としたうえで、「一流~中堅大学を卒業して国家I種・II種に合格して霞ヶ関の本省に勤める人たちは、民間企業への就職活動をしていれば大手企業に就職できるチャンスがあった人たち」
だとして、「下手に公務員になるより一流企業に飛び込んでいれば、短期~中期的な所得は多くなる可能性がある」と述べています。
 また、公務員の出世の仕組みについて、自治体では昇任試験を設けているところがあるとしたうえで、「激戦区(大変な部署)に投入され続ける仕事能力の高い人ほど勉強時間がとれず、試験を受けられない(あるいは受からない)という皮肉な事態」が起き、「逆に、仕事ではキレがない人ほどしこしこと勉強して先に受かって出世してしまう(有能でない上司の出現)という矛盾」が生じるという指摘を紹介しています。
 また、「残業代を含めた総収入で生活設計してる」ために、周囲の仕事を手伝ったところ、「仕事が早く終わっては困る」と怒られてしまうという某県庁の例を紹介しています。
 第3章「公務員は楽で安定しているのか?――仕事と身分保障について」では、公務員の仕事のスタイルを拘束時間の点から、
(1)Aタイプ(時間依存型):一定の拘束時間の最中、あらかじめ決められた作業に従事することを求められるスタイルの仕事
(2)Bタイプ(目的指向型):調査・資料作成など、その場その場の必要に応じて特定の作業をするスタイルの仕事
の2点に大別したうえで、公務員の仕事が楽かどうかを決める要素として、「目の前の仕事をまじめにやるか、そうでないか」を挙げ、「役所の仕事は、仕事をする人・優秀な人に偏っていく傾向」があると述べています。
 第4章「公務員になってこんなはずではなかった?――知っておくべき公務員のリスク」では、公務員という職業を選ぶことにより生じるリスクについて、
(1)職業選択上のギャップに起因するもの
(2)前提条件・外部環境の変化に起因するもの
(3)現状の役所仕事に内在するもの
の3つに大別し、原因別にリスクを解説しています。
 第5章「心身の健康を脅かす"お役所仕事"のリスク――現状では避けがたい問題」では、前章の(3)のリスクについて、
・人事異動・配属をめぐる諸問題
・役所特有のムードがストレスになること
・人間関係の継続性(閉塞感)
等の点を挙げています。
 本書は、役所と民間の両方を経験した著者が、公務員の仕事の一面を紹介した一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の中で一番の山場といえるのは、役所の仕事自体に内在するリスクをきちんと峻別したことでしょうか。著者自身が役所を辞めた動機そのものなのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・公務員の仕事の実態を知りたい人。


より以前の記事一覧

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ