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2015年2月 9日 (月)

ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント

■ 書籍情報

ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント   【ここまでできる 実践 公共ファシリティマネジメント】(#2354)

  小島 卓弥
  価格: ¥3,024 (税込)
  学陽書房(2014/11/5)

 本書は、平成24年10月に出版された『公共施設が劇的に変わる ファシリティマネジメント』の続編として、「前作の後に着実に進んでいるファシリティマネジメントや公共施設快核に観する新たな取組について、事例を中心に構成している」ものです。
 著者は、「公共施設改革は政府・自治体における数多の行財政改革のなかでも最難関の一つである。実際に公共施設マネジメント白書の作成自治体数は着実に増加しているにもかかわらず、具体的な公共施設改革、特に統廃合などに寄る公共施設数の圧縮にはなかなか結びついていないことがそれを如実に示している」としながらも、「本書で紹介した多くの公共施設改革・ファシリティマネジメントの先進事例は、前作で紹介した事例とともに、まだまだ様々な可能性が秘められていることを示している」と述べています。
 序章「なぜ公共施設改革・ファシリティマネジメントが必要か」では、「住民の安全を確保するために、公共施設の安全性を高める取り組みを加速しなければならない」ことと、「大人口減少時代の到来を見込み、公共施設数の適正化を図らなければならない」ことという、「二律背反的な要素を公共施設改革に組み込むことが強く求められている」と述べています。
 第1章「公共施設白書の現状と課題」では、「いわゆるPDCAサイクルを回すことがFMの考え方の基本にある。FMとは、目標に則った管理を行うための、根拠に基づく科学的な手法である」とした上で、「FMを進める自治体にとってまず公共施設の現状を正確に知ることが、その出発点となる」として、「保有施設の現状を把握し、課題を明らかにし、市民に公開すること」を目的とする「公共施設白書」の作成が必要となると述べています。
 そして、「白書作成は目標ではなく、FMを進めるための家庭である。そこで止まってしまい、対策を行わなければ意味を成さないのである」と強調しています。
 第2章「公共施設マネジメント白書の概要と活用」では、「この『当然』の作業である『現況と将来の見通し』の作成には、膨大なエネルギーを割くことになる」として、「条例で管理運営の部署が決められ、縦割りの組織ごとに整備・維持管理されてきている」公共施設について、「全体像を把握することからはじめなければならない」と述べています。
 そして、白書が作成され、多くの関係者が、「この白書をもとに、地域住民や議会、町内各部局が、公共施設マネジメント、特に、施設数の削減と機能の強化について具体的な議論を始めることができる」と考えても、「なかなかその動きは始まらなかった」要因として、
(1)一つひとつの公共施設は、行政財産として「設置条例」による設置形態をとり、縦割り組織ごとの「財産」という位置づけが「法令」として確定してしまうこと。さらに、国の省庁ごとの補助金によって、その用途や施設形態までも決められてしまうこと。
(2)それぞれの施設には特定の利用者が存在し、その利便性を主張すること。
(3)機能統合に関する具体的なアイデアが共有されていないこと。
の3点を挙げ、それ以上に大きな要因として、「公共施設マネジメントは、財政問題であるという明確な認識が共有できていない点」を挙げています。
 第3章「白書作成・計画策定からまちづくりの本質へ」(習志野市)では、行政改革的視点を中心に進められてきた公共施設再生の取り組みにとって、「大きな気づきとなった市民の声」として、「対策として考えられている内容は理論としてはわかるが、実際に市民生活にどのような影響があるのか。将来のまちの姿、まちづくりの方向性と合わせて提示してほしい」という声を挙げています。
 そして、「公共施設再生の取り組みは、それぞれの自治体が取り組んできた、まちづくりの努力が花開く機会であり、先送りにしてきた課題が噴出する契機でもある」と述べています。
 第4章「兵庫県豊岡市の新庁舎建設」では、「ファシリティマネジメントを実施するには、まず現状を把握し、正しく評価することが重要である。その対象が建築であれ、オフィス環境であれ、現状把握によって最終的な目標を明確にし、そこに向けた最適解を探ることによって、施設はよりよいものとなるだろう」と述べています。
 第5章「オガールプロジェクトと新庁舎建設(岩手県紫波町)」では、「オガールプロジェクトは、手法や仕組みとしての公民連携が耳目を集めてきたが、このプロジェクトが目指しているのは、エリア全体を魅力的にしてその土地の価値を高めることである」と述べています。
 第6章「複合型庁舎・施設による建設コスト圧縮の可能性」では、複合型庁舎建設のメリットとして、
(1)土地の有効利用
(2)共有スペース/設備の共同利用による建設コストの圧縮
(3)地域の利便性や賑わいの創出
の3点を挙げています。
 第11章「『直営vs民間』の不毛な対立を超えて」では、「図書館の運営主体として『直営が望ましい』との主張が多いのは、いささか課題の検証が不足した観念的判断といえる」として、「公立図書館の使命は『知る自由の保障』(日本図書館協会による『図書館の自由に関する宣言』の主旨)としつつも、『無料貸本屋』とも揶揄されるような現在の運営実態をふまえて、時代の変化に対応した公立図書館の使命を、現実に即して徹底的に議論することが必要である。そして、その使命を実現するための最適解を見出す過程において、行政と民間との役割分担を検討しなければならない」と述べ、「直営か民間かという議論よりも、どのような質のサービスを効率的・効果的に提供するかという最適な組み合わせを考えればよい」としています。
 そして、武雄市立図書館について、「従来型の図書館運営を進めてきた『専門家、図書館職員、市民団体など』からは、この武雄市立図書館に対して、これまでの図書館のよさを壊した、図書館ではなく書店だ、などの様々な指摘がある。その一方で、これまで公立図書館をそれほど利用してこなかった市民や、『公共空間』の演出に注目した関係者からは、カフェを併設した快適な空間だ、図書館の概念を変えた、というような『賞賛』も相次いでいる」と述べています。
 そして、「本来、活発な議論は『溝を埋めるための作業』として有効であるが、武雄市図書館をめぐる議論は、溝を認識することに価値があると考えられる。なぜならば、我が国における公共図書館の一般的イメージは、半世紀もの間、ほとんど変わらずに『あり方』に関しての幅広い議論がなされなかったからである」と述べています。
 第12章「駐車場空き空間の『再生』」では、「市営住宅の空き駐車場は、そのままではいかなる価値も生み出さないどころか、不正駐車などの温床になり、管理者に大きな負担を強いる。しかし、この遊休地を民間事業者に貸し付け、コインパーキングやカーシェアリングを導入することにより、自治体にとっては収入増となり、入居者や住宅来訪者などにとっては利便性が向上し、事業者にとっては新たなビジネスチャンスとなる」と述べています。
 本書は、公共施設とは相性の悪そうな印象のある「ファシリティマネジメント」という手法が、公共施設改革の突破口になりうる可能性を示した一冊です。


■ 個人的な視点から

 民間・行政を問わず、改革ツールだけで改革が進むわけもなく、実行力を伴う必要があるわけですが、成果が目に見える形になってしまう分、動きを止めようという力も大きく働き、ファシリティマネジメントの実現には待ち構える難関が多そうです。


■ どんな人にオススメ?

・高度成長期に広げた風呂敷のたたみ方を模索している人。


2011年4月 2日 (土)

「事業仕分け」の力

■ 書籍情報

「事業仕分け」の力   【「事業仕分け」の力】(#1990)

  枝野 幸男
  価格: ¥735 (税込)
  集英社(2010/4/16)

 本書は、事業仕分けを統括した立場から、事業仕分けを解説し、実態について具体的に報告したものです。
 著者は、事業仕分けが注目を集め支持された理由として、「これまで国民が一切眼にすることができなかった『予算編成』という国家統治の中核を、仕分けを行う過程で細部にわたって可視化したこと。そして、衆人環視の中、私たち仕分け人(正式には評価者)が発した意見や質問、あるいは出した判定の多くが、納税者たる国民の感覚、常識と合致したから」ではないかと述べています。
 第1章「『政治文化』の革命としての事業仕分け」では、仕分け人の議員メンバーの人選に当たっては、
(1)論理的な思考ができるか
(2)外からの圧力に屈しないか
の2点を基準にしたと述べています。
 そして、事業仕分けが、
(1)議会の役割は、予算を増やすことではなくて、減らすことだというところへ認識を転換させるきっかけとなった点。
(2)事業の目的と手段というものは、区別して議論するのが当たり前なのだというところに立ち返らせる契機となった点。
(3)事業は必要だと主張する方に立証責任があるのであって、不要だという方に立証責任があるのではないと、認識を改めさせた点。
の3つの点で日本の政治文化を変えるきっかけとなったとしています。
 第2章「事業仕分けとは何か」では、事業仕分けが、「非営利独立の政策シンクタンク『構想日本』によって生み出された行政改革の手法」だとした上で、事業仕分けとは、国や自治体が行っている事業を、
(1)予算項目ごとに
(2)「そもそも」必要かどうか、必要ならばどこがやるか(官か民か、国か地方か)について
(3)外部の視点で
(4)公開の場において
(5)担当職員と議論して、最終的に「不要」「民間」「国」「都道府県」「市町村」などに仕分けていく作業
とされていると述べています。
 第3章「事業仕分け最前線」では、各省庁の国の事業のムダ、不合理な要求について、
(1)ピンハネ、中抜き(補助金等の交付が、不必要な団体を経由する形で行われること)
(2)事業の重複
(3)公益法人や独立行政法人の資産と基金
(4)モデル事業の効果の検証
(5)効果の薄い広報、イベント活動
(6)コスト高の傾向があるIT関連の調達
(7)スリム化の余地がある独立行政法人、公益法人向けの支出
(8)不要不急、効果の薄い特別会計の事業
(9)地方自治体に移管すべき事業
の9つのパターンに分類しています。
 第4章「事業仕分けに対する批判に答える」では、「事業仕分けを通じて常につきまとたこと」として、「手段と目的の区別が付いていない」ことを指摘しています。
 第5章「有権者の意識改革としての事業仕分け」では、「事業仕分けによる政治文化の変革」が大きく、「政治がこの10年くらいで大きく変わったんだ」と述べています。
 また、次の事業仕分けでは、「仕分け人を務める国会議員の位置づけだけは整理した方がいい」と指摘しています。
 本書は、当事者が事業仕分けを語った一冊です。


■ 個人的な視点から

 最近、事業仕分けという言葉を全然聞かなくなってしまいました。予算編成過程の肝の部分が公開されるということが大事だったのですから、仕分けの結果が実際の予算編成にどの程度反映されるのか、という問題を含めて、数年間の長いスパンで継続していくことが必要だと思います。


■ どんな人にオススメ?

・事業仕分けの嵐が過ぎるのをじっと待っている人。

2011年2月 2日 (水)

自治体の外部評価―事業を見直すための行政評価の活用策

■ 書籍情報

自治体の外部評価―事業を見直すための行政評価の活用策   【自治体の外部評価―事業を見直すための行政評価の活用策】(#1973)

  小島 卓弥
  価格: ¥2,730 (税込)
  学陽書房(2010/09)

 本書は、「自治体における外部評価をテーマに、それが必要な背景、行政評価との連携の意義、実際に実施している自治体の実践例、そして外部評価を実施するための検討自己について網羅的に整理」したものです。
 第1章「なぜ外部評価が必要か<概論整理編>」では、外部評価が導入される背景の一つとして、「この厳しい財政状況において、行政評価が業務改善や予算(コスト)削減に十分な役割を担うことができなかった」点を挙げた上で、「多くの自治体職員にとって事業を廃止する、もしくは見直すというインセンティブは乏しい」要因として、「事業(そのもの)を維持すること、予算を削られないこと、定数を守ること、が自治体組織内における所管課の課長の暗黙の『査定値』、という因習が現在でも継続されているから」だと述べるとともに、行政評価が、「『職員の意識改革』『成果意識、コスト意識など民間的な意識・経営マインドの啓発』などのために検討された手法であり、それ自体に『業務改善機能』を持たせようとしたところに無理があった」と指摘しています。
 そして、自治体における行財政改革の最大の抵抗勢力として市民自身を挙げ、「多くの首長や議員は市民の顔色をうかがいながら発言をしている。議員が改革に抵抗するということは、すなわちその議員を選びだした市民が改革に抵抗する考えを持っている、と考えるのが間接民主主義制度における一般的な考え方である」と述べています。
 また、外部評価のメリットとして、
(1)しがらみのなさ
(2)外部評価者の経験・視点
(3)「前例踏襲主義」「思いこみ」の排除
(4)事業見直しの過程を公開する
の4点を挙げた上で、「外部評価委員による評価は、改善箇所を発見できる可能性を高め、自治体内部で議論するだけでは生み出されないような着眼点や改善策が出てくることがある」と述べています。
 第2章「外部評価導入自治体の事例<事例編>」では、福岡市の「事業の仕分け」について、平成16年度より行政評価(事務事業評価)を取り入れてきたが、「評価が所管局部課の自己評価のみにとどまっている」「事務事業評価の対象が重点事業のみ」「評価結果を具体的効果に反映させる仕組みが弱い」という問題意識を有していたことから、事務事業評価に第三者評価を導入する「事業の仕分け」を平成20年度から2年間試行実施したと述べ、その特徴として、
(1)既存の行政評価スキームの活用
(2)評価の過程から評価結果までの情報公開の徹底
(3)予算額が500万円以上の事業等を5年間でローリングすること
の3点を挙げています。
 大野城市の「フルコスト計算書による事業の診断」については、平成16年度から外部評価をスタートさせ、予算を枠配分方式に切り替えることにともない、「事業の見直しや廃止を検討するための仕組みの一つとして、外部評価の手法である『フルコスト計算書による事業の診断』を導入している」と述べ、外部評価委員として、
(1)市役所の「財政」「行革」「総合計画(企画)」部門
(2)公募を含む市民委員
(3)委託コンサルタント
の3者で三位一体の評価を実施していることや、評価結果である「診断書」にかかれている「改善提案」に相当する金額を「改善時期」に予算枠から減額するというユニークな対応方法を採っていることなどの特徴を紹介しています。
 この他、流山市、札幌市、愛媛県、佐賀県の事例を紹介した上で、外部委員の構成や、コンサルタントの活用などについて比較しています。
 第3章「外部評価をどのように実施するべきか<実践編>」では、外部評価を実施する前に、もっとも大切なこととして、「何のために」「どのような位置づけ」で実施するかを決めることを挙げたうえで、外部評価を実施する目的として、「改革力の強化」と「職員の意識改革」の2つに重きを置いて実施し、「結果として事業の見直し過程の透明化によるアカウンタビリティ機能の強化や職員の能力開発にも効果が期待できる」と述べています。
 また、外部評価委員の人選の重要性として、
(1)学識経験者
(2)民間企業経営者、出身者
(3)他自治体職員
(4)市民
などそれぞれについて解説しています。
 そして、市民委員の声の活かしかたとして、
(1)市民委員はあくまでも意見、感想を言う役割に限定
(2)外部評価委員全体に占める市民委員の比率を50%以下にする
の2つの方法を挙げています。
 さらに、外部評価におけるコンサルタントの役割として、
(1)外部評価のフレームワークの構築
(2)外部評価委員や評価委員会のコーディネーター
(3)中間的な評価の担い手
の3点を挙げています。
 本書は、自治体における外部評価の意義とその運用上の課題を網羅した一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者の小島さんにはいつもお世話になってます。一般的な認識では役所で役に立たなくなった、もとい、ポストがなくなった人を外に押し付けるのが「天下り」と言われていますが、その流れに逆流して民間から役所に求められてしまうというのは、いかに必要とされているのかがわかります。


■ どんな人にオススメ?

・役所には外の目が必要だと思う人。

2011年1月24日 (月)

天下り"ゾンビ" 法人 「事業仕分け」でも生き残る利権のからくり

■ 書籍情報

天下り   【天下り"ゾンビ" 法人 「事業仕分け」でも生き残る利権のからくり】(#1964)

  野口 陽
  価格: ¥1,470 (税込)
  朝日新聞出版(2010/6/18)

 本書は、「官僚たちの天下り先であり、公費が注ぎ込まれる」、「天下り法人」について、「各省庁やOBたちが維持してきた利権そのもの。ここを見れば、公金を扱う人々が隠し通してきた思惑が鮮明に見えてくる」として、「筆者が実際に見てきた、天下り法人の本音、思惑」を明らかにするとともに、「天下り法人がどうやって甘い汁を吸うのか」の手口を明らかにするものです。
 第1章「『日本一ひどい』天下り法人」では、国道のずさんな空洞探査調査を行った「道路保全技術センター」について、
(1)建設省が保全センターを設立した目的は、新たな業務を請け負わせるため=新規業務にあわせた設立
(2)建設省が、調査業務を「一括して」保全センターに発注した点=一括発注
の経緯を挙げ、「他の天下り法人と共通する点がある」と指摘しています。
 そして、国交省の契約見直しによって「簡易公募型プロポーザル方式」が導入された結果、それまで全面的に業務を丸投げしていたジオ・サーチ社が「競合相手」「ライバル」になったため、国交省と組織ぐるみで「地域性」「受注実績」という基準により業務を受注できたものの、ジオ社以外に満足な調査をできる下請け会社がなかったために道路の空洞を発見できなかったと指摘しています。
 第2章「天下り法人の全体像」では、「国家公務員の天下り先は、大半が独法と政府系公益法人だ。すなわち、天下りと税金の無駄遣いは、この2つを抜きには語れない」としたうえで、「収入は国頼りなのに、民間だから政府は経営や人事に口出しできない」という矛盾を指摘しています。
 そして、「独法は役員報酬や職員給与も独自に定めることができる」ため、「国並み、もしくは国以上の給与体系を作り上げてしまった」として、「外部化で期待されたのは、民間並みのコスト削減だったが、それもかなわなかった」と述べています。
 第3章「URファミリーのネットワーク」では、独立行政法人・都市再生機構(UR)の本社で2007年12月に開かれた会議について、「URファミリーのも住管協会も、互いに随意契約をやめたくない」ため、「表向きは国の方針に従いながら、どのようにして随意契約を残すかを研究する会議だ」と指摘しています。
 第4章「『彼らの手口』」では、「独法や公益法人が独自に収入を上げるのならば、口を挟むいわれはない」が、「彼らのビジネスは、お国の威力をバックにした、『ならでは』のものだ」として、「天下り法人の間には、国から補助金などとして直接受け取った金でなければ、それは公金ではない」という理論がまかり通っていると指摘しています。
 第5章「斬っても死なないゾンビ法人」では、雇用・能力開発機構が既に2度も「廃止」になっていることを挙げ、「天下り法人にかぎっては、『廃止』とは、『看板の付け替え』でしかない」と述べています。
 本書は、ヒトとカネの流れに着目して、官僚が生涯の間にどのようにして公金の分け前に預っているかを解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 天下りと随意契約の問題は別々に議論しても全体像が見えません。さらには法令による規制にも退職後のOBにお金を回す仕組みが巧妙に隠されているので別々に仕分けるよりも、一人の官僚が退職後にどのように公金を巻き上げているかをトータルで追っていったほうが実態がつかめるかも。


■ どんな人にオススメ?

・天下りは悪だと思う人。

2011年1月 7日 (金)

天下りの真実

■ 書籍情報

天下りの真実   【天下りの真実】(#1947)

  市村 浩一郎
  価格: ¥1890 (税込)
  PHP研究所(2010/4/16)

 本書は、「公務員という入口と、公益法人をはじめとする外郭団体という出口を結ぶものは、天下りという人の流れであり、随意契約(あらかじめ相手を特定する契約)や補助金という名目のおびただしいお金の流れだ」として、こうした状況を止めるために、「まずはその実態を把握し、こうした官僚組織と民法が作り出してきた"官製土壌"とでもいうべき荒れた大事を耕し、力強い、健全な非営利組織(NPO)が生まれ、育ち、息づくようにしなければならない」という思いから著されたものです。
 第1章「天下りの真実」では、民党の衆議院議員の福島伸享氏が通産省入省1年目の時に、担当する社団法人に対して調査研究を委託させていながら、「その社団法人は、実はノンキャリア組の天下り先」であったため、「独自の調査・研究はど、できるはずも」なく、「入省1年目のキャリアが担当となり、自分たちが業務委託費を出している先の仕事を逆に年度末に、いわば『ボランティア』で請け負」っていた事実を指摘し、「1年生が、役所のOBを養っているという構図がそこにある。その受け皿として、公益法人などが利用されているわけだ」と述べています。
 また、天下りの弊害として、
(1)税金の無駄遣いを生む
(2)官民の癒着や利権の温床かを促進する
(3)天下り先のプロパー社員のやる気を阻害し、組織のモラルを低下させる
(4)政策が歪む
の4点を挙げています。
 そして、「課長から指定職である審議官へとステージを上がる段階で、1回目の振り分け」が行われ、「その時先に漏れた人間たちが、まず天下る」としたうえで、その際に、「秘書、個室、車という3点セットと1400万円以上の年収が必要になる」理由として、「肩たたきをスムーズに行うため」だと述べています。
 第2章「公務員制度改革の真実」では、民主党衆議院議員の後藤祐一氏の指摘として、「公務員が現場で携わるべき仕事が専門化している」点を挙げ、「現場で必要なのはいわゆるキャリアや事務官ではなく、むしろ金融のプロや、弁護士など法律のプロといった、さまざまなプロフェッショナルなのだ」と述べています。
 また、同じく民主党衆議院議員の玉木雄一郎氏の指摘として、「官僚主導から政治主導へ、さらに中央集権から地域主権へという転換を図るために、官僚大移動を行えばいい」と述べ、「地方の行政組織や国会(立法府)の事務方への登用」だとしています。
 阻止t,絵「日本に公務員は多い」が、「ほんとうのプロはあまりに少ない」として、「公務員とは、身分なのか、それとも職務内容なのか」を改めて当必要があると述べています。
 第3章「公益法人と官製土壌の真実」では、「外郭団体とは、現状は言わば官公庁の植民地のような物」であり、「天下りの最大の温床」だとして、「それを根絶するためには、官庁が許可をして設立された公益法人や役所の子会社と言える特殊法人などを大胆に整理していくことが重要だ」と述べています。
 本書は、天下りという現象を切り口として、日本の官庁に切り込んだ一冊です。


■ 個人的な視点から

 たまたまではあるのですが、本書に登場した元官僚の一期目の議員さん達が知っている人ばかりだったのは問題意識の持ち方が皆さん共通しているからかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・天下りは氷山の上の水面から顔を出している部分でしかないことを知りたい人。

2010年4月12日 (月)

ネーミングライツの実務

■ 書籍情報

ネーミングライツの実務   【ネーミングライツの実務】(#1908)

  市川 裕子
  価格: ¥2,940 (税込)
  商事法務(2009/11)

 本書は「一般的に、スタジアム、アリーナ、文化施設などの公共施設などに、『名称』を付与する権利をいう」とされている「ネーミングライツとは何かを論じているものです。
 著者は、「ネーミングライツとは何か?」という当初の問題に遡りつつ、
(1)ネーミングライツ定着に向けた関係者の取り組み方法
(2)スポンサー企業の募集方法
(3)スポンサー企業のコンプライアンス違反などを想定した契約条項の策定方法
を大きな枠組みとしながら紹介し、論じていくとしています。
 第1章「ネーミングライツとは何か」では、「ネーミングライツ」を、「施設、設備等対象物に対し名称を付与することに一定の経済的価値を見出し、この名称を付与する権利」と定義しています。
 そして、日本国内の継続的ネーミングライツの類型として、
(1)プロ・スポーツ施設
(2)プロ・スポーツ施設を除く一般公開施設
(3)施設以外のもの
の3点を挙げています。
 第2章「ネーミングライツ導入による効果」では、スポンサー側の効果について、ネーミングライツの市場価値は、
(1)広告媒体としての価値
(2)企業の社会貢献性を示す企業イメージの向上
の2点に集約できるとしています。
 第3章「日本国内におけるネーミングライツ案件の分析」では、
・神戸総合運動公園野球場(現:スカイマークスタジアム)
・宮城球場(現:クリネックススタジアム宮城)
・渋谷公会堂(現:C.C.lemonホール)
・西武ドーム
などの事例を紹介しています。
 そして、神戸市が検討した問題点として、
(1)補助金等に係る予算の執行の適性化に関する法律
(2)屋外広告物条例
の2点を挙げ、この事例の特色として、「スポンサーであるソフトバンクBBとヤフーは、施設所有者である神戸市と直接契約していない点」を指摘しています。
 また、渋谷公会堂の協定所の特色として、ネーミングライツの内容を、
(1)ネーミングライツ
(2)本施設名などの掲示請求権
(3)本施設名の使用権
に分類し、詳細に義務として記載している点を挙げ、「本件は、エンタテイメント文化の集積地にある渋谷に存し、知名度の高い『渋谷公会堂』であるからこそ、使用できた手法である」と指摘しています。
 第4章「スポンサーの決定方法と手続きの概観」では、「近年、ネーミングライツ導入を検討する施設所有者が、スポンサーを見つけ最終的に契約締結に至ることは、難しくなってきている」とした上で、施設所有者が抱える課題として、
(1)スポンサー獲得の困難さ
(2)料金設定および契約期間の妥当性
の2点を挙げています。
 そして、導入手続きとして、
(1)公募による方法
(2)広告代理店を介する方法
の2つを挙げ、「現実には、募集後数ヶ月、あるいは1年程度にわたっても応募企業がなく店晒し状況となるケースも散見される」として、「このような場合には、かえって施設の価値ならびにネーミングライツの価値を下げる要因になりかねないことに留意すべきである」と指摘しています。
 第5章「ネーミングライツ契約書をつくる」では、「契約書自体は、シンプルなものが多い」が、「ネーミングライツを『権利』と捉える以上、施設所有者とスポンサーの権利と義務を定め、できる限り契約締結時に内容を明確にしておくことが将来の紛争防止に資することは間違いない」と述べています。
 第8章「ネーミングライツの今後」では、今後、日本のネーミングライツは、
(1)著名施設:契約金は高額となり、大企業をスポンサーとして、契約更新を続けて名称を定着させる。
(2)地方施設:契約料金を一定程度低額化した上で、長期の契約期間を提示して施設の維持管理費の捻出に努める。
のように二分化していくと思われるとしています。
 本書は、日本ではまだ案件の少ないネーミングライツの手続きを解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 日本ではまだネーミングライツの事例の蓄積は少ないにもかかわらず、行政改革の成功例として紹介されることが多いので、安易にネーミングライツを導入したがる傾向がありますが、実際には、手続きやコンプライアンス問題なので見えないコストが相当かかるものであり、費用対効果で疑問があるところも少なくないのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・ネーミングライツを検討することになってしまった担当者さん。

2009年12月 2日 (水)

自治体の予算要求 考え方・つくり方

■ 書籍情報

自治体の予算要求 考え方・つくり方   【自治体の予算要求 考え方・つくり方】(#1777)

  吉田 博, 小島 卓弥
  価格: ¥2,625 (税込)
  学陽書房(2009/11)

 本書は、自治体の予算編成過程とその意義を解説したものです。
 第3章「地方自治体の予算」では、「予算要求→予算査定という一連の手続き」が継続している理由として、「組織内で、対立的なセクションをつくって、互いに牽制、議論を尽くして、最適な財源配分を実現するため十巻が得られる」と述べた上で、「各事業の経費を集めたものが予算となるが、その機能は、資源配分であったり、所得再配分であったりするので、個別の事業だけの評価は、一定の留保条件付きにならざるを得ない」と述べています。
 そして、「予算の枠組み及び内容をも規定していくような重要な予算編成の手続きが、議会の審議を別段受けなくても、いわば内部管理事務として当局の大幅な裁量のもと、決定されている」背景として、「予算は長のみに提出権があり、議会はこれを侵すことができない、ということが徹底されていること」を挙げています。
 また、埼玉県志木市が、市役所の予算案と別に無償ボランティアで構成される「市民委員会」による予算案を作成した試みについて、当時の志木市長の穂坂邦夫氏が、「自治体は元々村落共同体なのだから、住民に直接、行政に参加してほしかった。住民自治のなんたるかを実現したかった。『さすがに市民に予算編成は無理だろう』といわれた。でも、できた。道路補修の優先順位も地区代表らが全会一致で決めた。1億円以上の公共事業の是非を住民主導で判断する委員会も条例で設けた。住民は事業の存廃も含めて客観的に評価でき、とても信頼できた」と語っていることを紹介しています。
 第4章「予算要求制度」第1節「予算と予算要求の本質」では、「予算編成は一種の政治システムと言える。予算を取り巻く環境から、一局面だけを単独で取り出し、制度論のみで議論をしても、本質は見えない。予算は、各般の利害調整であり、財源の配分を決めることである。限られた財源を活用した全体最適と思われる姿を数値化したものだ。最大公約数の実現である。よって、予算から、一つの事業を取り出しても、全体を見ることができないだけではなく、その事業の全体に占める位置や評価がわからない」と述べています。
 第2節「予算要求システム」では、「職員定数と事業予算はリンクしないと意味がない。公務員は人件費をゼロと思って、ないしは意識しないで政策立案をしているが、人的集約的な組織である役所業務は、人件費を精査しなければコストの実態を把握できない」とした上で、「自治体にはアウトソーシング(もしくは非常勤職員に代替する、などでもよいのだが)を実施することにより、コストを大幅に引き下げられる定型的な業務が多く埋もれており、人件費を意識した業務実施体制の見直しが非常に重要だと言える」と述べています。
 第3節「財政状況によって予算編成は変わるか」では、不交付団体の例として愛知県春日井市を、交付団体の例として佐賀県の例を紹介しています。
 春日井市の例では、「独自財源が十分にあるように見えても、普通会計以外の負担が圧迫要因となっており、加えて財政調整基金が少ないことから、常に単年度の財政運営にゆとりがない状況になるなど、まさに車間距離が短いままで高速道路を走っているような、厳しい状況ともいえる」と述べています。
 佐賀県の例では、「都道府県税が法人二税などの景気変動の大きい財源になっていることは、都道府県の予算を見積もることを難しくさせているが、交付税依存度の高い本県のような団体は、平成16年度の交付税ショックがもろにこたえた」と述べています。
 第4節「予算編成の流れと公開」では、自治体の予算編成の段階を、
(1)準備段階
(2)査定段階
(3)審議段階
の大きく三段階で進むと述べています。
 第5節「予算要求の実務」では、予算編成業務の日程について、
10月下旬 予算編成方針の通知
11月中旬 予算見積書提出締切
11月下旬 ヒアリング
12月中旬 財政課長調整
1月上旬 総務部長調整
1月下旬 首長査定
2月上旬 記者発表
3月上旬 議会
の流れを解説しています。
 そして、「行政の予算は政治的機能を多く含む、極めて『人間的なシステム』の側面を持つ」にもかかわらず、「これまで、予算を巡る議論は、あまりにも、この部分に目をつぶり、『システム至上主義』『完全合理主義』に陥っていたのではないか」と指摘しています。
 また、予算がなく、「事業費ゼロで職員がオーバーワークで対応する」ことを公務員は「予算0(ゼロ)事業」と喧伝するが、「これは人件費の概念がないための陥穽である」と述べています。
 第7節「予算要求の改革の方向」では、各地の自治体の予算編成のタイプを、
(1)集権型
(2)分権型
(3)折衷型
の3タイプに分けた上で、事業評価の問題点の一つとして、「事業に関わる一次情報が、何でも提供されており、住民にとっては、情報の洪水の様相を呈し、逆に評価がしづらくなっていること」を挙げています。
 終章「今後の方向性」では、「予算は結局、今の市民及び将来の市民のための政策にきちんとした配分がなされたかにつきる」と述べています。
 本書は、自治体の予算要求システムを現場から正面からとらえた一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者の吉田さんはご本人も相当に面白い人なのですが、それ以上に周りを感化する人というかグル体質なのか、周りの人達をどんどん開花させてしまう印象を持っていました。ついに真打ち登場か?


■ どんな人にオススメ?

・自治体の予算制度の実態を知りたい人。

2009年11月24日 (火)

PPPの知識

■ 書籍情報

PPPの知識   【PPPの知識】(#1769)

  町田 裕彦
  価格: ¥1,050 (税込)
  日本経済新聞出版社(2009/11/14)

 本書は、「PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の限界にも触れた上で、事例に即した多様なPPPのスキームの整備に向かう英国の状況を解説」し、「日本にとって今後の大切な行政課題でもある、公共施設等の老朽化に伴う改築更新等について、PPPを使った柔軟なアプローチを提案するとともに、その際に留意すべきプリンシプルについて整理」したものです。
 第1章「なぜ今、PPP(公民連携)が求められるのか」では、「日本以外では、公民が連携して公共サービスの提供などを行うスキームをPPP(Public Private Partnership:公民連携)と呼んでいるのが一般的」だとしたうえで、「PPPを公民が連携して公共サービスの提供などを行うスキームと捉えるとすると、この中にPFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営(DBO)方式、さらには下水道の維持管理等において導入されている包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシング等も含まれる」と述べています。
 そして、「PFIの前提となる考え方として、両当事者の対等な契約主義、リスクの明確化と分担」があるとして、「公民は対等な両当事者として透明性が確保された契約関係にあること」を挙げ、「可能な限り、想定されるリスクを洗い出し、明確化した上で、両当事者の間の分担を客観的に決めていくべき」だと述べています。
 また、わが国において、「公共と民間の連携(PPP)」が注目される背景として、
(1)厳しい財政状況
(2)財政健全化法の施行
(3)少子化などによる人口減少とその影響
(4)老朽化した施設への対応
(5)民間の新たな動き
(6)スリム化する公共
の6点を挙げています。
 第2章「英国におけるPFIの進化とその限界」では、英国において、PFIが「着実に進化」し、「PFI手法が民による公共サービスの提供の手法として汎世界的に伝播している」理由として、「PFI手法が状況に応じて柔軟に変容(進化)していること」を挙げています。
 また、2003年頃、PFIに大きな批判があったとして、
(1)公共サービスの提供に関連して民間セクターが利潤の追求を行って良いのか。
(2)民間から資金調達する方が公共で資金調達するよりも金利水準が高いことから、コスト増になるのではないか。
の2点を挙げ、この問題意識から、「公共が資金を供給するPFIのスキーム」である「クレジット・ギャランティ・ファイナンス」(CGF)が提案されたと述べています。
 著者は、英国でPFIが飛躍的に発展した要因の一つとして、「PFIのに特有な契約書などを作成するためのコストや手続きに費やされる時間等の案件組成にかかるコストの縮減策」を挙げ、、なかでも、「契約書や、その他の文書、手続きなどの標準化」が最も効果的であったと述べ、「PFIにおける標準化はPFIの画一化、コモディティ化を結果として進めることとなった」としています。
 第3章「PPPの具体的な手法」では、指定管理者制度について指摘されている問題点として、
・公募でないケースがあること
・5年程度という短期間のものが多いこと
・徴収できる利用料金に上限があることから、民間事業者の創意工夫を生かすのは実質的に難しいこと
・業務が適切に執行されているかのモニタリングが必要なこと
などを挙げています。
 また、市場化テストについて、「公共サービスを不断に見直すことにより公共サービスの質の維持向上と価格の低下について適切に競争がなされるよう、十分な配慮のもと制度設計が行われている」と述べています。
 さらに、横浜市のビジネスマッチングの取り組みについて、「異なるノウハウや資産を有する民と民について、公共がこれらを束ね、相乗効果により1+1=3以上の効果を得て行こうという考え方」だとして、例として、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校とサイモールインターナショナルスクールの教育交流を挙げています。
 第4章「PPPを成功に導くために」では、PPPを行う究極の目的として、「納税者、公共サービスの受益者に対するサービスの価値を最大化すること」を挙げた上で、「VFMを最大化するためにPFIによりもたらされた革新的な考え方(ブレークスルー)」として、
(1)性能発注に基づくライフサイクルの一括管理
(2)リスクの最適配分
(3)業績連動支払い
の3点を挙げています。
 第6章「今後のキーコンセプトとしてのPPP」では、PPPが「単にインフラ整備にのみ適用されているものではなく、広く行政一般にすでに適用されはじめて」いるとして、ここで行われるPPPは、「公共と民間がそれぞれ異なるリソースと行動原理を有していることを前提にした上で、協働して課題に対する解決策を構築していくことが、考え方のコアとなって」いると述べています。
 そして、「PPPは、一定の前提、制約のある政策課題についえもっとも適切なスキームを構築していくプロセスであり、その意味で新しいフロンティアを開いていくプロセス」だと述べています。
 本書は、行政と民間の新しい関係を示してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 PFIや市場化テストの手法自体は次々に新しい手法が紹介され、バズワードも次々に紹介されていますが、数々の手法に通底する思想の部分を理解していると見え方も違ってくるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・手法の底に流れる思想を知りたい人。

2009年8月31日 (月)

闘う経済学―未来をつくる「公共政策論」入門

■ 書籍情報

闘う経済学―未来をつくる「公共政策論」入門   【闘う経済学―未来をつくる「公共政策論」入門】(#1684)

  竹中 平蔵
  価格: ¥1575 (税込)
  集英社インターナショナル(2008/05)

 本書は、「経済学の基本を理解しつつ経済学と政策の隙間を埋めたい」という動機で書かれたもので、「経済学の基本的な考え方を十分理解するとともに、それが実際の経済現象や経済政策にどのように関わっているのか、また経済学以外のどのような知識や考え方が実際の政策問題には重要なのか」について理解できることを目指したものです。
 序章「経済学と現実政治との隙間で」では、著者が経済財政政策担当大臣に就任以来、「経済学は政策にどの程度役に立つのか」を常に問いかけたと述べ、埋めなければならない「経済学と実際の政策問題との間の隙間」として、
(1)経済学の教科書で教えられている内容に比べて、現実の経済は遙かに複雑である。
(2)経済政策を含め全ての政策は、民主主義の政策プロセスを経なければ決定できない。
の2点を挙げています。
 第1章「ケインズ的常識と闘う」では、失業問題に関して、「失業をなくすためには景気を良くしてGDPを大きくし、労働に対する需要を大きくすることが重要な政策になる」と述べた上で、「政府の財政支出によって総需要管理を行って景気を(少なくとも短期的に)ある程度コントロールできる」ということには「一応のコンセンサスがある」として、この政策を「ケインズ政策」と呼ぶと述べています。
 そして、ケインズ政策に対する反論として、「エリートが全てを解決できる」という前提である「ハーベイロード・プリザンプション(ハーベイロードの前提)」そのものが間違っているという指摘があると述べています。
 第2章「『増税論』と闘う」では、財政赤字は悪いことだとする一つの答えとして、「財政赤字が大きくなると長期金利が上昇する、あるいはインフレになる」というものを挙げています。
 また、「骨太方針」を作るようになって以降、「予算編成のプロセスは非常にすっきりした」として、予算の閣議決定が12月24日には行われているため、「財務省主計局の役人も家族でクリスマスイブを迎えられるようになった」と述べています。
 第3章「金融危機と闘う」では、かつて12倍程度だった信用乗数が1990年代に低下し続け、2000年以降はハイパワードマネー残高が増えているにも関わらず「6倍程度に急落した」が、2005年以降から反転し、2006年には約8倍に戻していることについて、「不良債権の処理によって金融の異常な事態がようやく解消されてきたことを示す一つの重要な証拠」だとしています。
 また、「世界で普通に採用された政策」である金融債性プログラムに対して、すさまじいバッシングが起こったことについて、その要因として、
(1)日本の場合、政策が常に政局づくりに利用されるという強い傾向があること。
(2)世の経済専門家といわれる人々も含め、政策の詳細については十分な知識と関心を持っていない点。
(3)ジャーナリズムの多くが、依然として官僚をニュースソースにしていること。
の3点を挙げています。
 第4章「失業と闘う」では、「高い賃金を実現するためには、技術進歩率を高めること、ないしは技術進歩率が高い産業に特化する」ことだと述べた上で、産業を発展させるための要素として、
(1)金利をできるだけ低く保つ
(2)投資税額控除を大きくする
(3)税率を低く抑える
(4)所得弾性値の高い産業に特化する
の4点を挙げています。
 第5章「役人と闘う」では、地方財政の分野では、「制度が非常に複雑なため現実の姿がなかなか理解されにくい」として、 「地方財政に関していろいろ発言している人はたくさんいるが、地方財政制度について熟知した上で発言している人はきわめて少ない」ことを指摘しています。
 そして、地方財政を考える場合の最大のポイントとして、「受益と負担の関係を明確にすること」を挙げ、「国の仕事と地方の仕事が明確に分担されていないことが、日本の地方分権の最大の問題になっている」ことを指摘しています。
 そして、地方財政制度の問題点として、
(1)地方の自由度がないこと。
(2)権限がないことの裏返しとして、地方の責任が不十分だということ。
(3)財政的に国への依存が高くなっている問題。
(4)複雑でわかりにくい。
の4点を挙げ、「民主主義社会にあって複雑な制度は悪い制度」だとしています。
 第6章「"既得権"と闘う」では、郵政民営化決定のプロセスに関して、
(1)郵政民営化という改革は、その内容においてきわめて高度な政策論が求められた。
(2)政治的に多くの国会議員が本音では優勢民営化に賛成ではなかった。
の2点について議論したうえで、「既得権益者との利害調整を行いつつ行政を進める官僚に、制度の抜本的改革を期待するのはできない」と指摘しています。
 第7章「抵抗勢力と闘う」では、経済財政諮問会議だからこそ実現できたこととして、
(1)政策論議の独占を打ち破ったこと、具体的には、それまで税制調査会が独占していた税金の議論を行ったこと。
(2)通常の省庁の権限を飛び越えて、総理主導で議論を行ったこと。
(3)消灯横断的な議論。
の3点を挙げています。
 第8章「千変万化の政治と闘う」では、大臣には、
・縦割り大臣
・横割り大臣
の2種類があり、「この2種類の大臣は、ずいぶんと仕事の性格が違う」と述べています。
 そして、日本では大臣の在職期間が非常に短いことを挙げ、「2年周期の政策を実現することはきわめて難しくなる」として、「日本の閣僚が大きな政治的な力を持ち得ない一つの理由」だとしています。
 終章「権力と闘う」では、「いくら理想的な青写真を描いたとしても、それを実現するためのプロセスまで含めて戦略的に考えなければ政策論にはならない」と指摘した上で、「改革を実現するためのヒントとなりうる」重要な戦術として、
(1)逆転の発想を持つこと
(2)重要なことについてはトップ直轄方式をとること
(3)会議を「決める場」にすること
(4)いつでも辞める覚悟を持つこと
(5)批判のパターンを知ること(常に逆のことをいう「コントラリアン的批判」、「永遠の真理」をいう批判、「ラベル」を貼って決めつける批判)
の5点を挙げています。
 また、小泉元総理の仕事ぶりから学んだリーダーであるための条件として、
(1)王道を行く
(2)瞬時の判断力
(3)直接対話の力
(4)愛嬌の力
の4点を挙げています。
 本書は、実際に闘った経済学者だからこその発言の重みを持った一冊です。


■ 個人的な視点から

 今回の選挙では自民党が負けたわけですが、その敗因は、小泉・竹中改革に対する国民の不満が高かったせいなのか、小泉・竹中改革を骨抜きにして元に戻そうとしてきたその後の内閣に対する批判なのか、どちらなのでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・経済学や実際の政策には役に立たないと思う人。


■ 関連しそうな本

 竹中 平蔵 『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』 2007年11月05日
 佐藤 雅彦, 竹中 平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 2005年06月26日
 大竹 文雄 『経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには』 2006年09月04日
 土居 丈朗(編著) 『地方分権改革の経済学―「三位一体」の改革から「四位一体」の改革へ』
 土居 丈朗 『三位一体改革ここが問題だ』


■ 百夜百マンガ

パソ犬モニ太【パソ犬モニ太 】

 パソコンはロボットなど人間に似せた擬人化をされることが多いようですが、まさか犬に「擬犬化」されるとは。パソコンの位置づけが変わったということでしょうか。

2009年8月26日 (水)

指定管理者制度で何が変わるのか

■ 書籍情報

指定管理者制度で何が変わるのか   【指定管理者制度で何が変わるのか】(#1679)

  文化政策提言ネットワーク (著, 編集)
  価格: ¥1,680 (税込)
  水曜社(2004/10/25)

 本書は、2003年6月の地方自治法の改正で新設された指定管理者制度について、「これまでの公の施設のあり方を大幅に変える可能性」があるとして、「公の施設の中でも効率文化施設に的を絞り、今回の改正が与える影響について、メリット、デメリット両面から検証」しているものです。著者は、指定管理者制度の導入を、「公の施設の効率的な運営を目指したものではあるが、それはわが国の行政のあり方そのものを問い直す大きな流れの中に位置づけられる」としています。
 第1部「公立文化施設を巡る問題状況」では、「公立文化施設の民営化と公共性の確保」において、「指定管理者制度導入に関する危惧として、民間の営利企業が公立文化施設の運営を受託した場合、利潤追求を目的とするあまり、公共性が犠牲になるのではないか」との指摘を挙げ、「『サービス購入者』としての政府・自治体が適切に行動すれば、こうしたことは当てはまらない。むしろ、利潤追求を目的とするからこそ、公共性をより効率的に実現できるようになるのだといっても過言ではない」と述べ、効率性実現における民間企業のメリットとして、
(1)機動的な行動
(2)規模の経済性
(3)範囲の経済性
の3点を挙げ、政府・自治体が公立文化施設の民間委託を考える上でのチェックポイントとしては、
(1)政策目的の明確化=公共性の明確化
(2)納税者の合意=目的の正当性
(3)仕様書作成と評価能力=発注側の必要条件
(4)競争環境条件=受注側の必要条件
の4点を挙げています。
 第2部「公立文化施設の運営」では、「公共ホールの使命と指定管理者制度の課題」において、指定管理者制度の問題点として、
(1)「指定管理者制度」はハード運営のための制度で「文化政策」とは無関係
(2)「指定管理者制度」と「文化芸術進行」は分離して考えなければならない
(3)公共事業である文化芸術振興機能の民間委任は可能か
(4)民間企業による公共ホール運営
(5)解決への手がかり
の5点を挙げています。
 また、「公立美術館の事業評価と指定管理者制度」においては、「構造改革」について、その「本旨は、地方分権の確立によって、中央―地方の対立を解消し、公平な富の再分配と文化的平準化を目指すものらしい」が、「地方公共団体立の諸施設へ独立行政法人化が可能であるとした提言と合わせて考えてみると、『博物館法』の一層の骨抜き、国立美術館・博物館の独立行政法人化の流れが、このたびの、『指定管理者制度』の導入と深くかかわっているに違いない」と指摘しています。
 そして、「公立文化施設における創造・市民文化形成と運営の効率性」において、「ハコモノ文化施設は、指定管理者制度の導入により、特段マイナスの影響は受けず、むしろ逆に民間企業のノウハウによって運営の高度化・効率化が図られ、企業の利潤動機が働かない低利用の貸し館型施設は、NPOや住民団体が指定管理者がなることで、事業の充実や地域文化創造の場が形成されるチャンスとなると考えられるのに対し、芸術創造や市民文化形成の拠点の役割を果たしてきた文化施設は、新規参入を図る企業との競争にさらされ、せっかくの文化的、芸術的実績がついえてしまう心配がある」と指摘しています。
 第3部「アートNPOの活動」では、「指定管理者制度をどう受け止めるのか」において、NPO法人「DANCE BOX」が抱える大きな問題点として、「経済基盤が不安定なこと」と「ほとんどの助成金が事業助成で、運営管理に対する助成項目がないこと」を挙げています。
 また、「市民・行政の新たなる関係構築を」では、公立の施設の使いにくさとして、
(1)吊りこみのバトンがない、袖が狭い、壁が白いなど、ハードの使いにくさ。
(2)退館時間が早い、利用者の抽選、使用料金が高いなど、制度的な使いにくさ。
(3)舞台について理解のない職員が多いなど、人的・習慣的な使いにくさ。
の3点を挙げたうえで、「指定管理者制度で実現する芸術団体による文化施設の運用には、今までにないさまざまな改善が見込まれる」としています。
 「公立施設における舞台技術者の立場より」では、「舞台というのは非常に特殊で、多くの危険を孕み、熟練した技術があって出来上がる空間」だとして、「劇場」とは「激」場であり、「劇」の字の下に「薬」を置けば「劇薬」であり、飲めば生死にかかわるくらいに危険な場所であるということを忘れるな、と新人研修で言い続けていると述べています。
 第4部「『新しい公共』の可能性」では、「指定管理者制度と『新しい公共』のかたち」において、「市民参加は『新しい公共』の一つの様相」だとして、文化施設における市民参加の様相を、
(1)接遇、あるいは舞台技術といった領域でのボランティア参加
(2)市民参加ミュージカルなどの参加型事業への参加
(3)文化施設の運営母体への参加
(4)文化施設の運営に対する市民側による監督という視点
の4つに大別しています。
 また、「指定管理者制度のビジネスモデル」において、指定管理者制度の前提条件が、「企業やNPOには必ずしも十分に知られているとはいえない」として、
(1)指定管理者制度の背景には厳しい財政状況がある
(2)民間経営でも公立文化ホールが準公共財であることに変わりはない
(3)指定管理者制度の本質は競争条件の整備
(4)指定管理者制度では計画と執行が分離される
の4点を挙げた上で、指定管理者のビジネスモデルとして、
(1)収入増モデル
(2)経費削減モデル
の2つのモデルを提示しています。
 本書は、指定管理者制度のさまざまな可能性と問題点を模索した一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は、さまざまなバックグラウンドを持った著者たちによって執筆されていますが、指定管理者制度に対するスタンスも見事なほどにバラバラで、見方によっては、「多様な角度から照射した」と言えなくもないですが、それについてまとめているわけでもなく、消化しにくいゴッタ煮状態なので、うかつに読むと混乱するかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・さまざまな角度から指定管理者制度を検証したい人。


■ 関連しそうな本

 上山 信一, 桧森 隆一 『行政の解体と再生』 2009年1月28日
 南 学, 小島 卓弥 編著 『地方自治体の2007年問題-大量退職時代のアウトソーシング・市場化テスト-』 2005年08月22日
 八代 尚宏 (編集) 『「官製市場」改革』 2006年01月27日
 市場化テスト研究会 (著), 本間 正明(監修・著) 『概説市場化テスト―官民競争時代の到来』 2005年10月07日
 野田 由美子 『民営化の戦略と手法―PFIからPPPへ』 2006年01月30日


■ 百夜百マンガ

惑星をつぐ者【惑星をつぐ者 】

 少年ジャンプのすごいところは、必ずしもジャンプの読者には受けなさそうな作品でも無謀にも掲載してしまうところでしょうか。すぐ打ち切っちゃいますが。

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